現物資産への投資ができるとして注目が集まる金投資。株や債券といった金融商品への投資と併用すれば、資産運用リスクの軽減やインフレ対策などさまざまな効果が期待できるため、新たな資産への投資を考えているなら、金は有力な選択肢の1つとなるだろう。金への投資を始めるにあたっては、メリットと併せてデメリットや注意点も確認することが重要だ。ご自身の投資スタイルやリスク許容度に合った投資方法を選び、運用資産に効果的に金を組み入れよう。

目次

  1. 金投資とは? 概要を確認
  2. 金投資における4つのメリット
  3. 金投資で注意したい5つのデメリット
  4. 金投資をするならまず地金や金貨への投資を検討
  5. 投資信託・ETF、先物取引も金投資の有力な選択肢
  6. 金投資をするなら証券会社に口座を開設しよう
  7. まとめ:現物資産である金を資産に組み入れ、分散投資の効いた資産運用を目指そう

金投資とは? 概要を確認

金投資のメリット・デメリットは? 投資方法や投資の始め方と併せて確認
(画像=วอนจังมึง/stock.adobe.com)

金投資は、その名のとおり「金」を対象とする投資だ。購入時よりも高い価格で金を売却することで、売却差益の獲得を目指す。

そもそも金は、昔から価値のある資産として世界中で取引されてきた。現在ではお金(通貨)の代わりとして利用されることはないが、宝飾品をはじめ工業用品や美術品、医療用品、美容、食用など使い道は多く、依然としてその需要は高い。

金が投資対象となるのは、需要が高いにも関わらず資源量が限られているからだ。人類はこれまで、約18万トンの金を採掘してきたといわれる。そして、2022年時点で地球上に残っている金の総量は約5万トン。世界では毎年約3,000トンのペースで採掘されており、金は近い将来枯渇すると考えられている。

このように需要に対し供給量が限られる金は、希少価値が高く将来値上がりが期待できると考えられる。そのため現在も、投資資産の1つとして市場で取引されているのである。

金投資における4つのメリット

現物資産に投資を行う金投資は、株式や債券への投資とは異なる性質を持つ。ここではまず、金投資における4つのメリットを確認しよう。

金投資のメリット1:資産としての信頼性が高い

メリットの1つめは、資産としての信頼性が高い点だ。株や債券といった有価証券は、発行体である企業や国が倒産したり破綻したりすると、価値が大きく下がるケースがある。場合によっては、資産の価値がゼロになり投資資産を回収できなくなる可能性もあるのだ。

一方、現物資産の金は資産そのものに価値があるため資産価値がなくなることはない。そのため、世界恐慌や戦争、テロといった世界情勢が不安定な場面で資金が集まり、価格が上昇する傾向がある。資産としての信頼性が高い金は「有事の金」とも呼ばれ、分散投資の1つとして運用資産に組み入れる投資家も多い。

金投資のメリット2:国や地域によって価値が変わらない

メリットの2つめは、国や地域によって価値が変わらない点だ。世界中で取引が行われている金だが、その価格はある程度統一されている。それは、現物取引の価格はロンドン市場、先物取引の価格はニューヨーク市場の価格が指標となっているからだ。世界のどの市場で取引をしても価格に大きな差が出ず流動性が高いため、安心して投資ができる。

金投資のメリット3:インフレに強い

インフレに強いのも、金の大きな魅力の1つだ。インフレとは、継続的に物価が上昇する状態をいう。インフレ状況下で憂慮すべきなのは、お金の価値が減少することだ。たとえば1本100円のジュースが、1本200円に値上がりしたとしよう。この場合、ジュースの購入に2倍のお金が必要となり、お金の価値は半減したと考えられるのだ。

現物資産である金は、インフレ時の物価上昇に連動して価格が上がる。そのため、インフレ状況下でも資産の価値が下がることはない。長期で使い道がない余裕資金があるなら、インフレに対応できる資産として金への投資は有力な手段となる。

金投資のメリット4:分散投資効果がある

分散投資効果があるのも、金投資のメリットだ。先述のとおり、金は世界恐慌など株価が下がる局面で資金が集まり、価格が上昇する傾向がある。そのため、たとえば株式と金に投資をすれば、株価上昇時だけでなく、株価下落時においても利益の獲得を目指すことができるだろう。

どのような市場の状況にも対応できる資産運用を目指すなら、特性の異なる資産クラスに資産を分散投資するアセットアロケーションが有効だ。金も有力な資産クラスとして理解をしておきたい。

金投資で注意したい5つのデメリット

金投資を始めるなら、知っておくべき5つのデメリットも確認しよう。

金投資のデメリット1:管理・保管が難しい

金投資のデメリットの1つめは、管理・保管が難しい点だ。金に投資する方法はいくつかあるが、特に地金(ゴールドバー)や金貨に投資する場合、盗難などの恐れがあるため管理・保管には十分な注意が必要だ。投資家自身での管理・保管が難しいなら、地金や金貨以外の投資方法も検討しよう。

金投資のデメリット2:インカムゲインがない

金投資で知っておくべきデメリットには、インカムゲインがない点も挙げられる。インカムゲインとは、資産を保有していることで得られる利益をいう。銀行預金の利息や株式投資の配当金、不動産投資の賃貸収入がインカムゲインの一例として挙げられる。

インカムゲインの魅力は資産を保有している間中、定期的に受け取り続けられる点だ。特に長期での投資を行う場合に、コツコツと利益を積み上げていくことができる。運用中にある程度まとまったインカムゲインを獲得することで、仮に売却損が発生しても損失を相殺できるのもインカムゲインの魅力の1つだろう。

インカムゲインの受け取りがない金投資では、購入時よりも高い価格で売却したときに得られる売却益(キャピタルゲイン)を狙うことになる。金投資で利益を得るためには、値上がりが期待できる局面で購入を行うことに加え、焦らず売却のタイミングを狙える余裕資金を用いることが肝心だ。

金投資のデメリット3:投資方法によってはまとまった投資資金が必要

地金や金貨といった実物資産に投資をする場合にまとまった投資資金が必要なのも、金投資の注意点だ。金投資を検討するなら、投資方法ごとの最低投資額もあらかじめ確認しよう。

金投資のデメリット5:手数料が高い

金投資では、投資方法によって手数料が高くなることも知っておこう。金投資で必要となる主な手数料は、以下のとおりだ。

▽金投資で必要となる主な手数料
・購入時にかかる手数料
・保有中にかかる手数料
・売却時にかかる手数料
・引き出し時にかかる手数料

具体的な金額は、投資方法や取引窓口などにより異なる。コストを抑えた投資を目指すなら、あらかじめ手数料をしっかり確認することが重要だ。

金投資のデメリット6:為替リスクがある

金投資をするなら、為替リスクがあることも知っておこう。為替リスクとは、為替相場の変動によって外貨建て資産の円評価額が上下する可能性のことをいう。

先述のとおり、金の価格はロンドンやニューヨーク市場での取引価格が指標となる。仮に、ニューヨークでの金の取引価格が1,800ドルだったとしよう。1ドル110円なら、円換算額は19万8,000円(1,800ドル×110円)だ。1ドル120円まで円安になると、円換算額は21万6,000円になる。

このように日本円で金投資をする場合、為替によって価格が変動する可能性がある。金投資をするなら、金価格の推移と併せて為替の動きも把握することが肝心だ。

金投資をするならまず地金や金貨への投資を検討

ここからは、金への直接的な投資ができる2つの方法を見ていこう。まずは、地金・金貨および純金積立を確認する。

金に直接投資する方法1:地金・金貨

地金(ゴールドバー)および金貨への投資は、金そのものを購入し資産として保有する方法だ。概要を以下で確認しよう。

▽地金・金貨への投資の概要

購入窓口最低投資額(2022年8月17日時点の概算)手数料(税込/一例)税金
・貴金属店
・宝石店
・銀行
【地金】
5グラム:約3万7,000円
【金貨】
1/10オンス(約3グラム):約2万2,000円
【販売手数料】
地金5グラム1本:4,400円
【売却手数料】
20グラム未満:2,200円
総合課税
税率は所得金額に対し5~45%

地金や金貨に投資する1番のメリットは、実物の金を保有できる点だ。資産が手元にあるため、必要に応じていつでも現金化しやすい。

一方で、管理・保管が難しいのが地金および金貨のデメリットになる。盗難や紛失が心配なら、銀行の貸金庫や貴金属店の保管サービス(保護預かり)などを利用しよう。なお、貸金庫や保護預かりサービスは手数料がかかるため、利用前には必ず確認したい。

金に直接投資する方法2:純金積立

純金積立は、金を定期的に一定額ずつ買い増していく投資方法だ。純金積立の概要を以下で確認する。

▽純金積立の概要

購入窓口最低投資額手数料(税込/一例)税金
・貴金属店
・証券会社
・銀行
1,000円~積立額によって1.65%~総合課税
税率は所得金額に対し5~45%
田中貴金属SBI証券のサイトをもとに筆者作成。2022年9月21日現在

純金積立のメリットは、少額から金に積立投資できる点だ。毎月一定額ずつ買い増していくことで、買付価格が平準化され、高値掴みを防ぐ効果も期待できる。積立資産がある程度まとまったら、現物への転換も可能だ。

純金積立のデメリットは、手数料がかかる点だろう。取引する販売業者や積立金額によっては、表に記載した以上の積立手数料がかかる場合もある。コスト管理面でも資金効率がよい投資を目指すなら、事前にしっかりと確認し、手数料が低い販売業者を選ぶことが重要だ。

投資信託・ETF、先物取引も金投資の有力な選択肢

投資信託やETFでも、金投資はできる。また、より大きなリターンを狙った投資を希望するなら、先物取引も選択肢となるだろう。

投資信託・ETFで行う金投資とは?

投資信託は、多くの投資家から集めた資金をファンドマネージャーが運用し、利益を投資家に還元する金融商品だ。投資信託のうち金を投資対象とするファンドを選べば、実物の金に投資したのと同様の効果を得られる。

なお、投資信託の中でも市場に上場しており、株式のようにリアルタイムな価格での売買が可能なものをETF(上場投資信託)という。

投資信託およびETFの概要は以下のとおりだ。

▽投資信託およびETFの概要

購入窓口最低投資額手数料税金
証券会社100円~・販売手数料
・信託報酬
・信託財産留保額
源泉分離課税
税率は20.315%
※筆者作成

投資信託およびETFで金投資を行うメリットは、純金積立よりもさらに少額で投資をスタートできる点だ。特定口座(源泉徴収あり)で取引をすれば、原則として確定申告をすることなく納税ができるため、初心者でも投資を始めやすい。

投資信託およびETFのデメリットは、複数の手数料がかかる点だ。購入時に証券会社に支払う販売手数料のほか、ファンドマネージャーに運用の対価として支払う信託報酬や、売却時にファンドに支払う信託財産留保額が発生する場合がある。手数料の有無や金額はファンドによって異なるため、あらかじめ確認しよう。

・金の裏付けがあるファンドなら実物との交換も可能
ETFによっては、金を裏付けとするものもある。投資の裏付けとなる金をファンドが保管しているため、投資家は安心して投資を行うことができる。投資額がある程度まとまったら実物の金との転換も可能で、将来的に金の実物を手元に置きたいと考えている投資家にとって有力な選択肢となるだろう。

金先物取引

金投資は、先物取引でも可能だ。先物取引とは商品(原資産)を将来の決められた日に、取引の時点で決められた価格で売買することを約束する取引をいう。金先物取引の概要を、以下で確認しよう。

▽金先物取引の概要

購入窓口最低投資額(2022年8月時点)手数料税金
・証券会社
・先物取引業者
24万円売買手数料
(取引業者により、片道148.5円~)
申告分離課税
税率は20.315%
北辰物産日本証券クリアリング機構のサイトをもとに筆者作成。2022年9月21日現在。

先物投資の特徴は、レバレッジを効かせた投資ができる点だ。レバレッジ取引とは、証券会社に証拠金を預入することで、その数倍の売買ができる取引である。

たとえば、10万円の証拠金を預入しレバレッジ10倍の取引をすると、100万円(10万円×10倍)の売買が可能になる。このように先物取引は、手持ちの現金が少ない人でも、大きな取引ができる点が魅力の投資方法だといえるだろう。

また、先物取引は将来の売買を約束する取引のため、現物のやり取りがない差金決済が行われる。そのため、買いだけでなく売りからも取引をスタートできるのも特徴だ。売りから取引を始めれば、相場が下落しそうな局面でも利益の獲得を狙えるため、投資のチャンスを増やすことができるだろう。

先物取引の注意点は、ハイリスク・ハイリターンな点だ。レバレッジ取引ができる先物取引では、手持ちの資金では実現できない大きな利益を獲得できる可能性がある一方、相場状況によっては損失が大きくなり、証拠金の追加を求められるケースもある。

先物取引をするなら、まずは少額から少ないレバレッジ倍率で始めることが重要だ。また、証拠金の追加を求められても焦らなくて済むよう、使い道のない余裕資金内で投資を行うことが肝心となる。

金投資をするなら証券会社に口座を開設しよう

ここまで解説してきたとおり、金投資にはいくつかの方法があるが、証券会社なら幅広い投資方法に対応している。証券会社で口座を開設し、投資スタイルやリスク許容度などに合った方法で金投資をスタートしよう。

証券会社で金投資をするには、投資方法に関わらず証券総合口座の開設が必要だ。証券総合口座は、以下の手順で開設を行う。

▽証券総合口座の開設手順
1.証券会社ホームページから口座開設の申し込み
2.本人確認書類およびマイナンバー書類を提出
3.引落口座の登録などの初期設定を行う
4.口座開設完了の通知を受け取る

オンライン上で口座開設を行った場合、早ければ翌営業日には手続きが完了する。一方、郵送による手続きでは開設までに1週間~10日程度かかることは知っておこう。

純金積立を始めるための取引口座開設

純金積立をするなら証券総合口座に加え、金専用の取引口座が必要だ。顧客専用ページから、開設の申し込みをしよう。すでに証券総合口座を保有しているなら、最短即日で取引をスタートできる。

投資信託・ETFを始めるための取引口座解説

投資信託およびETFは、証券総合口座で取引ができる。証券総合口座の開設が完了したらすぐに売買をスタートできるため、誰でも始めやすい投資方法だといえる。

なお、投資信託およびETFは、少額投資非課税制度のNISA口座でも取引ができる。NISAは、投資から得た配当金や分配金および売却益にかかる20.315%の税金が非課税になる制度だ。税金は、投資においてコストとなる。コストを抑えた資金効率のよい資産運用を目指すなら、NISAの利用もぜひ検討しよう。

NISAでの取引を希望するなら、証券総合口座と併せてNISA口座の開設も必要だ。NISA口座の開設には税務署の審査が必要なため、証券会社によっては申込から口座開設完了まで2~3週間かかるケースがある。NISAで取引をするなら、計画的に口座開設手続きを進めよう。

金先物取引のための取引口座開設

金先物取引を行うには、証券総合口座に加え先物・オプション口座を開設する必要がある。開設は、ホームページの顧客ページから進めよう。注意事項や個人情報利用目的などを確認後、いくつかの質問に回答すれば開設手続きは完了する。

まとめ:現物資産である金を資産に組み入れ、分散投資の効いた資産運用を目指そう

「金」は、古くから世界中で取引されてきた信頼性の高い現物資産だ。インフレに強く株や債券とは値動きの傾向が異なるため、分散投資の1つとして運用資産に組み入れる投資家も多い。

金投資は、地金や金貨といった実物資産への投資だけでなく、投資信託やETF、先物取引を活用する方法もある。どの方法を選ぶかにより必要資金額や手数料、リスクが異なるため事前にしっかりと確認し、投資スタイルに合った方法を選ぶことが肝心だ。

金投資をするなら、証券会社に口座を開設しよう。取引方法によっては証券総合口座以外の口座も必要なため、前もって確認するとスムーズに手続きを進められる。まずは少額から金投資をスタートし、経済や市場の動きに対応できる資産作りを目指してみてはいかがだろうか。