不動産価格指数を見ると、最近10年でマンション価格のみが右肩上がりで上昇しています。一戸建てと土地は横ばいが続いていますが、同じ不況下なのになぜマンション価格だけが上昇しているのでしょうか。不動産カテゴリー別の現状を分析すると見えてくるマンション投資の優位性について解説します。
最近10年間の不動産価格指数の推移は?
国土交通省が公表している最近10年間の不動産価格指数を見ると、マンションと住宅地・一戸建てが対照的な動きをしています。グラフを見ても分かるとおり、2010年を100とした場合、住宅地・一戸建ては100ポイント前後でほとんど伸びていないのに対し、区分所有マンションは2021年初頭で160ポイントと1.6倍に上昇しています。
もし2010年頃に新築マンションを購入したとすると、連動して中古マンションの価格も上昇するので、物件によっては10年後中古になった時点で買値を上回っている可能性は高いでしょう。その間家賃収入も得ているので、インカムゲインとキャピタルゲインの両方を得られることになります。
一方で、一戸建ては価格が低迷しているため、中古になった場合は売却益を得るのが難しいと考えられます。一戸建ての需要が減れば住宅地も連動して安くなる傾向があります。マンション投資がひとり勝ちの様相ですが、オフィス・ホテルも含め他の物件タイプが低迷しているのはどのような事情があるのでしょうか。
コロナ禍で影響が大きかったオフィス空室率とホテル客室稼働率
2020年から大流行している新型コロナウィルスで大きな影響を受けた1つが賃貸オフィスです。緊急事態宣言が発令されて以降、テレワークを導入する企業が増え、オフィスを縮小する動きが強まったことが影響しています。
三鬼商事が公表している「オフィスマーケット」の空室率調査によると、コロナ前の2020年1月の東京ビジネス地区オフィス空室率は1.53%と5ヵ月連続で低下していました。
1年後の2021年1月には4.82%に悪化し11ヵ月連続で上昇、2022年8月現在でも6.49%と改善の兆しが見えない状況が続いています。コロナ禍でテレワークが定着した社会情勢を考えると、空室率が高止まりする可能性があるオフィスビル投資はかなりリスクが高いといえるでしょう。
ホテルに投資した人もコロナの影響で壊滅的な打撃を受けました。国土交通省観光庁が調査した「宿泊旅行統計調査」によると、2020年1月に約4,320万人だった延べ宿泊者数が、最初に緊急事態宣言が発令された2020年4月には約1,080万人の4分の1に激減しています。延べ宿泊者数は外国人延べ宿泊者数と日本人延べ宿泊者数を合計した数字です。
とくに2020年1月に約970万人が日本を訪れていた外国人観光旅行客が、入国制限の影響で2020年4月に約30万人まで減少したのが大きく響いています。
上記調査には旅館も含まれていることからすべてがホテルの減少数ではありませんが、コロナが完全に終息するまではホテル投資にはある程度のリスクがあることを心得ておく必要がありそうです。
不況下で手放す人が増えた一戸建て
長引く不況に新型コロナウィルス感染拡大が加わり、収入の減少から一戸建てを手放す人が増えたことも社会問題になりました。「住宅ローン難民」といわれる人たちです。
東京カンテイの「市況レポート」によると、首都圏中古一戸建て平均価格はコロナ前の2020年1月は3,309万円でしたが、1年後の2021年1月には2,960万円と3,000万円の大台を割っています。コロナの影響が大きかったことがわかります。
その後徐々に回復し、2021年7月に3,374万円とようやくコロナ前の価格を上回りました。これは輸入木材価格の高騰による原材料高と供給減によって新築一戸建ての価格が上がっていることが影響しています。材料不足による工期の遅れなども指摘されており、新築を諦め中古物件に流れたユーザーが増えたと考えられます。
木材価格が落ち着けば一戸建ての価格もピークアウトする可能性があり、将来的には単身世帯の増加による一戸建て需要の減少も考えられます。投資対象としてはリスクが高いといえるでしょう。
もはやバブルは期待できない土地投資
1980年代後半から1990年代にかけて起こった不動産バブルでは地上げなどによって土地の価格が高騰した実績があります。土地は必ず値上がりするという土地神話が生まれたのもバブル期です。しかし、バブルが崩壊し、不良物件を抱えた金融機関が苦境に陥ったことはよく知られています。
土地は経済情勢の影響を受けやすく、上記不動産価格指数のグラフを見ても2008年には住宅地は区分マンションよりも高い数値を示していました。それが2011年の東日本大震災で形成が逆転し、マンションの高騰と逆に住宅地は指数が100を割り込む低迷を続けることになります。
今後、一戸建てやオフィスビルの需要が減ることが考えられる時代に、バブル期のように土地の値上がりで利益を上げることは難しくなるでしょう。それよりも購入した土地にマンションを建築するなど、土地を有効活用することが大事です。
コロナ禍もマンション価格と賃料は上昇が続いた
では、マンションの価格はどのような推移を見せたのでしょうか。2020年2月から本格化した新型コロナウィルスの感染拡大は不動産にも影響を与えましたが、マンション価格と賃料はコロナ禍でも右肩上がりの上昇を続ける意外な結果となりました。
前出した東京カンテイの「市況レポート」によると、首都圏中古マンション70㎡換算価格はコロナ前の2020年1月には3,716万円でした。2月から本格化したコロナの感染拡大で価格下落が心配されましたが、2020年6月の3,668万円で底を打ち、年末の2020年12月には3,839万円と年間の高値を付けています。一時的に買い控えが起きたものの、年間を通せば上昇を記録したことになります。
首都圏の分譲マンション賃料も2020年1月の2,874円/㎡から、途中軽微な下落を挟みながら上昇を続け、2020年12月の賃料は3,168円/㎡と年初比で10.2%も増加しています。テレワークの導入で部屋数の多い物件に引っ越しする需要が発生したことも賃料上昇の要因の1つになっているようです。
居住用不動産はオフィス・ホテルのような景気に左右されやすいビジネス需要と異なり、必ず1ヵ所は住むところが必要な生活必需品であることがコロナの影響が軽微な理由と考えられます。なかでもマンションはほぼファミリー層限定の一戸建てに比べ、ユーザー層が広範囲である点で優位性があるといえるのです。
将来人口推計から見て投資するなら東京23区のマンション
ここまで10年間の不動産価格の流れについて見てきましたが、問題は将来を考えてどのエリアのマンションを購入したらよいかです。不動産価格指数は平均値なので、これから先もすべてのエリアが同じように値上がりするわけではありません。したがって、将来推計人口を参考にしながら、より安定した賃貸需要が見込めるエリアのマンションを購入する必要があります。
国立社会保障・人口問題研究所が公表している「日本の将来人口推計調査」(2017年7月31日公表)によると、日本の総人口(死亡中位推計)は2015年の1億2,709万人から、25年後の2040年には1億1,092万人と1,617万人の大幅減少になると推計しています。
また、都道府県別に見た総人口の推移では、2015年を100とした数値が30年後の2045年では東京都のみ100.7%とプラスを維持する見込みです。全国的には人口減少でマンション経営に不安があるものの、東京都に限れば2045年までの長期で安定した需要が見込めます。
将来人口推計で見る限り、投資するなら東京23区のマンションに絞るのが最も安全性が高いと考えてよいでしょう。
※本記事は2022年9月18日現在の情報を基に構成しています。不動産価格は流動的ですので、数値は参考程度にお考えください。
(提供:Incomepress )
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