丸山優太郎
丸山優太郎
日本大学法学部新聞学科卒業のライター。おもに企業系サイトで執筆。金融・経済・不動産系記事を中心に、社会情勢や経済動向を分析したトレンド記事を発信している

高級住宅街で暮らすことは、富裕層のステータスの象徴でもあります。住民の生活水準が高いため隣人トラブルは少ないイメージがありますが、実際はどうなのでしょうか。本稿では、高級住宅街における隣人トラブルの実態や隣人トラブルに遭った場合の相談先について紹介します。

目次

  1. 住宅街でよくある隣人トラブル
  2. 高級住宅街にも隣人トラブルはあるのか
  3. 高級住宅街のトラブル事例
    1. 開発事業で起きた住民のクレーム
    2. セレブ芸能人の隣人トラブル
  4. 隣人トラブルに遭った場合の相談先
  5. 富裕層は都心の高級マンションを好む傾向も

住宅街でよくある隣人トラブル

高級住宅街にもある隣人トラブルに遭遇した場合の相談先
(画像=oka/stock.adobe.com)

2016年に日本法規情報株式会社が実施した「近隣トラブルに関する実態調査」によると「ご近所トラブルに巻き込まれたことがありますか?」との問いに対し47%があると回答しています。トラブルになった原因のトップ5は以下の通りです。

近隣トラブルの原因割合
騒音20%
駐車、車のトラブル13%
ペットの飼育やマナー12%
ごみの不法投棄、ポイ捨て10%
理由は分からないが無視する、難癖をつける人がいる9%

全体的に各トラブルの原因の割合が低く分散していることからも分かるように、トラブルの原因は多岐にわたっており、多くの人が隣人トラブルに苦労している実態がうかがえます。同調査は、集合住宅も含まれているため、一戸建て限定ではありません。しかし住宅街でも、おおむね同じ傾向があると予想できます。

近隣トラブルの原因トップの騒音問題は、集合住宅にあるトラブルと思っている人が多いのではないでしょうか。しかし一戸建てでも騒音トラブルに発展するリスクはあります。例えば、窓を開けたまま大音量で音楽を聴いたり夜間にホームパーティーを開催して騒いだりするなどの行為があれば、隣家からクレームを受けることは十分に考えられます。

参考:日本法規情報株式会社「近隣トラブルに関する実態調査」

高級住宅街にも隣人トラブルはあるのか

富裕層が優雅に暮らすエリアでも隣人トラブルはあるのでしょうか。なんとなくなさそうなイメージを持っている人が多いかもしれません。しかし高級住宅街には、普通の住宅街にはないトラブルがあるようです。例えば、近隣地域の景観を維持することに神経質な人がおり、植栽が少し道路にはみ出すなどメンテナンスを怠るとクレームを受けることがあるといいます。

またエリアによっては、景観について独自の地域ルールが決められており、ルールを守らなかった場合、住民同士の対立に発展する場合があるのです。さらに静かな住環境こそがメリットなだけに、子どもが騒いだだけでクレームを受けるなど、騒音問題にも神経を使わなければなりません。このように高級住宅に住んだからといって「バラ色の生活」とはならない場合も往々にしてあります。

高級住宅街のトラブル事例

実際にどのようなトラブルがあったのか、インターネットで公開されている事例を見てみましょう。

開発事業で起きた住民のクレーム

景観維持を求めるクレームのケースとして、建設会社が高級住宅街で10棟の住宅開発を進めようとしたところ住民の反対に遭った事例が挙げられます。「街並みが変わる」という理由でさまざまなクレームを受け、一時工事が中断しました。建設会社が弁護士に介入を依頼し、住民の言い分も聞いたうえで結果的に住民と合意できたため、住宅を建築することができました。

事例出典:弁護士法人DREAM「住民対策、近隣迷惑などのトラブルによる事例」

セレブ芸能人の隣人トラブル

週刊誌では、芸能人が体験した隣人トラブルの事例を紹介しています。2011年に女優Mさんが東京・自由が丘に自宅を建築する予定でしたが、基礎工事の段階から近隣住民の猛反対を受けます。その理由は、地中熱システムを導入するために地下100メートルまで掘り下げる計画だったためです。

騒音や地盤から水が出る恐れを住民が心配したようです。工事は一時中断し、最終的には夫の死去に伴い中止となりました。また、俳優Oさんが2014年に建てた稽古場もある地上3階、地下1階の大豪邸も隣人トラブルに巻き込まれています。クレームの内容は、エアコン室外機の排気音やたまり場となった俳優仲間の話し声など騒音に関することが中心です。

これに加え、町内会会費未払いでもクレームを受けるなど自身の落ち度によるものもあります。このほかにも芸能人の隣人トラブルは多数あり、セレブ芸能人だからといって必ずしも歓迎されるわけではない実態がうかがえます。

隣人トラブルに遭った場合の相談先

隣人トラブルに遭ってしまった場合は、いったいどこに相談すればよいのでしょうか。マンションなどの集合住宅であれば管理組合や管理会社にまず相談すべきですが、一戸建ての場合は以下のような相談先が考えられます。

・自治会・町内会
一戸建てで隣人トラブルに遭った場合は、自宅がある地域の自治会や町内会などに相談してみるのもよいでしょう。地元に人望の厚い会長であれば、これまでの実績から適切な解決方法を提案してくれる可能性があります。

・地方自治体
自治会や町内会で解決できない場合は、市区町村役所・役場にある生活課で相談する方法があります。相談内容に応じた解決策の提案が期待できるでしょう。市区町村の職員が直接解決に乗り出してくれるかは未知数ですが、住宅街全体が被害を受けるような騒音や悪臭などの問題であれば動いてくれる場合もあります。

・警察
同じ町内に住む相手だけに、なるべく警察沙汰は避けたいところです。しかし悪質なトラブルの場合は、警察に相談するのもやむを得ないでしょう。場合によっては匿名で相談することもできるため、相手に知られることなく警察に注意してもらって解決に至る場合もあります。

・弁護士
警察に介入しても解決しない場合は、最終手段として弁護士に依頼することも考えなければなりません。弁護士に依頼する場合は、相手と直接話し合うことを覚悟して依頼しましょう。弁護士は、具体的な被害の状況を確認するため、証拠の収集を行って対応してくれます。例えば騒音問題であれば「どの程度の騒音なのか」を実際に測定して交渉に説得力を持たせられるでしょう。

住民トラブルは、まず当事者間の話し合いで解決するのが基本です。警察や弁護士に相談するのは、地域内で解決できなかった場合の最終手段と考えたほうがよいでしょう。

富裕層は都心の高級マンションを好む傾向も

高級住宅街に対する富裕層の見方も変化の兆しが見られます。なかには、トラブルを避け東京都心の高級マンションに移住する人も少なくありません。特に問題になるのがトラブル事例でも紹介した景観の厳しい規制です。本来なら家を建てる際は、建ぺい率の上限まで建てることが許されています。

しかし高級住宅街では、ゆとりある景観にするために建ぺい率上限まで建てにくい地域のルールがあることも少なくありません。例えば田園調布には、一般社団法人田園調布会が制定した「田園調布憲章」や「環境保全についての申し合わせ」があり、「田園調布地区地区計画」が制定されています。これらの厳しい規制を守らなかった場合は、住民とのトラブルに発展しかねません。

トラブルに嫌気がさした住民が、高級住宅街を手放して都心の高級マンションに移住するという流れを呼んでいるようです。また時代の流れで、現代では広大な敷地の住宅は売れにくくなっており、不動産会社は敷地を細分化して多くの住宅を建築する戦略に転換しているといいます。そうなると、ますます高級住宅街としてのステータスが下がり、邸宅を構えるほどの魅力を感じなくなってきている傾向にあります。

高級住宅街では、空き家も目立つようになり見切りをつけた富裕層が都心の高級マンションを好む傾向が見られるようになってきました。トラブル事例で見たように、高級住宅街は決して理想郷ではないことが分かります。今後は、富裕層が高級マンションの魅力を見直す流れが強まるかもしれません。

(提供:YANUSY

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