ビットコインやNFTを筆頭とする暗号資産の弱気相場が続く中、ウォール街やシリコンバレーでより多くの機関投資家の暗号資産市場参入を促す動きが広がっている。機関投資家向けに開発された暗号資産トレード商品や管理ソリューションを提供することにより、機関投資家の市場参加を促すことが狙いだ。
「7年以内に機関投資家がデジタル資産の主流投資家」に?
暗号資産の時価総額を収集、公開している「コインマーケットキャップ(CoinMarketCap)」のデータによると、2022年10月13日における暗号資産市場全体の時価総額はおよそ926億ドル(約137兆8,728億円)と、2021年11月のピークの3分の1前後に落ち込んでいる。ところが、個人投資家心理の冷え込みとは対照的に、機関投資家は暗号資産への関心を益々高めているという。
デジタル資産(*1)の運用企業「グレースケール・インベストメンツ(Grayscale Investments)」」が、総額1,825億ドル(約27兆1,568億円)の資産を運用する欧州のファンドマネージャーやウェルスマネージャー、機関投資家などを対象に実施した調査では、71%が「7年以内にデジタル資産の60%を機関投資家が保有するようになる」と回答した。
*1:暗号資産などのブロックチェーン技術を基盤とする金融資産全般を指す。
デジタル資産の97%を個人投資家が保有しているという現状からは容易に想像できないが、「ブロックチェーンを基盤とする新たな金融インフラは成熟期に突入した」と分析する専門家は多く、市場の成熟にともない、参加プレーヤーの顔ぶれが変化することも十分に考えられる。暗号資産が現在の“氷河期”を乗り越え、次なる成長ステージに移行する手段として、機関投資家の市場参加が重視されているのも納得できるのではないだろうか。
その一方で、「市場のリスク管理体制の強化」という重要な課題が横たわる。最近の暗号資産市場の冷え込みは、米国から広がった世界的な利上げや経済への不安感が主な要因とされているが、暗号資産を悪用したマネーロンダリングやハッキングなどの金融犯罪、規制の不透明さなど、市場リスク管理体制の欠如を根本的な要因として挙げる声も多い。2022年5月上旬、一夜にして600億ドル(約8兆9,274億円)相当の価値が市場から消えたステーブルコイン「テラUSD」の暴落は、その象徴的な出来事となった。