2008年のリーマンショックは、システミックリスクが顕在化した世界的な金融危機として知られる。あれから10年以上が経過した今も、中国が抱える巨額の債務問題などシステミックリスクが顕在化する懸念は絶えない。システミックリスクとはどのようなものなのか。
目次
システミックリスクとは?
まず、システミックリスクの概要を説明する。
どういう意味?
システミックリスクを簡単に言うと、1つの金融機関の決済不履行が次々と他の金融機関の決済不履行を引き起こし、ひいては金融システム全体を麻痺させるリスクのことだ。
システミックリスクはどのように起きる?
システミックリスクは、複雑に入り組んでいる金融ネットワークの中で、1参加者(A)の決済不履行から始まる。
決済とは、お金のやりとりによって債権や債務を解消することを意味し、Aの決済不履行によって、別の参加者(B)の債権は未回収の状態になる。
そして金融機関同士は巨額の決済を日々行っており、例えばBはAに対する債権者であると同時に、別なCに対しては債務者である場合、今度は債権を回収できなかったBが決済不履行に陥り、Cの債権が未回収状態になる。
このようにして、A→B→Cと決済不履行の連鎖が生じ、システミック(systemic:全身の/全体の)に決済機能が麻痺していく。
システミックリスクの3つの要素
福岡大学の永田裕司氏は、「システミック・リスクと金融の脆弱性」の中で、システミックリスクの3つの要素を説明している。
同時的かつ大規模な悪影響
1つ目は、システミックリスクが同時的かつ大規模な悪影響(ビッグ・ショック)を及ぼす点だ。
永田氏は、ある個別的なショックが参加者によるリスク分散により「保険可能」で、中間的なショックにとどまるうちはシステミックリスクとはいえないと指摘している。
システミックなショックが起きるとその影響は広い範囲に波及し、「保険不可能」な状態となる。このような「保険不可能」な状態では、部門や地域を越えて金融システム全体が機能不全に陥り、深刻な景気後退が生じる。
金融機関や金融市場の間で伝播
システミックリスクの2つ目の要素は、発生したショックが金融機関や金融市場の間で伝播していくことだ。システミックリスクのこのショックの伝播は「コンテイジョン(contagion)」と呼ばれる。
永田氏は、金融機関同士が入り組んだ決済関係を有していることから、情報の不足により自らの行動が他の金融機関にどのような影響を与えるか判断が難しくなっていると指摘している。
これは裏を返せば、他の金融機関がもたらす負の影響から自らを守ることが困難になっているのと同義で、金融機関の複雑なネットワークの中で単独防衛がいかに難しいかがわかる。
生産や雇用などの実体経済に及ぼす影響
システミックリスクの3つ目の要素は、ショックが生産や雇用など実体経済に影響を及ぼすことだ。
永田氏はこの金融セクターで生じたショックが実体経済に影響を及ぼす関係を、「プロシクリカリティ(景気循環増幅効果)」という言葉で説明している。
金融機関は好景気時には融資などを積極的に行い、実体経済セクターの活動は活発になるが、景気後退時は融資などを差し控えるため、実体経済セクターの活動は滞りがちになる。
このような景気の上下両方向への振れやすさをプロシクリカリティといい、永田氏は金融市場の規制緩和に伴いプロシクリカリティが強まっていると強調する。プロシクリカリティの強まりは、システミックリスクが顕在化したときに、より実体経済に深刻な影響をもたらす。
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