英国エリザベス女王の逝去は2022年を代表する世界的トピックになりました。その際に話題になったのが、ロイヤル不動産(王室が所有する不動産)です。これに対し、日本の皇室はどれくらい不動産を所有しているのでしょうか。本記事では、皇室の財産一覧から検証します。

エリザベス女王逝去で話題になった王室の不動産資産

日本のロイヤル不動産はどれくらいある?皇室の財産一覧を検証する
(画像=Yusei/stock.adobe.com)

2022(令和4)年9月8日、英国のエリザベス女王が逝去し、世界中に悲しみの声が広がりました。英国有力紙のデイリーミラーによれば国葬にかかった費用は800万ポンド(当時のレートで約13億円)といわれています。

一方で2022年9月27日に行われた安倍晋三元首相の国葬にかかった費用は前日の段階で約16億6,000万円と報道されています。規模や荘厳な雰囲気からエリザベス女王の葬儀のほうがお金がかかっているイメージですが、なぜ英国のほうが少ない費用で実施できたのでしょうか。

理由の1つとして挙げられるのが、葬儀会場や葬列のルートに関わる場所の多くが国や王室の所有物であったことです。そこで話題になったのが、英国王室が所有する膨大な不動産資産です。王室の不動産は英国王に帰属する土地や権利を管轄するクラウン・エステートが管理を行っています。

「BAZAAR」の報道によると、クラウン・エステートは143億ポンド(報道当時のレートで約2兆226億円)の大規模な不動産事業を行い、収益は国庫に納付され国民に還元されています。そして、クラウン・エステートの収益状況に応じて、約15%が王室助成金として王室に支払われる仕組みです。王室助成金からロイヤルファミリーの公務に関する費用や基本的な維持費、警備費、旅費などが賄われているといわれます。

クラウン・エステートはロンドン有数のショッピング・ストリートとして知られるリージェント・ストリート全域に土地を持つほか、アスコット競馬場やゴルフクラブ、公園、ホテル、商業施設など多彩な不動産を所有しています。ほかにも英国全土に14万ヘクタールの農地や1万ヘクタールの森林も所有し、その不動産資産は広大なスケールを誇ります。

日本の皇室はどれくらい不動産を持っている?

英国王室に対して、日本の皇室はどれくらいの不動産を所有しているのでしょうか。日本のロイヤル不動産にあたる皇室所有の不動産は、宮内庁ホームページで公開されています。「皇室用財産一覧表」を見ると、所有する不動産の規模は、15ヵ所合計で土地が1,905万5,512.72平方メートル、建物が20万9,542.99平方メートルに及びます。

そのうち皇居(東京都千代田区)が115万436.87平方メートル、赤坂御用地(東京都港区)が50万8,920.96平方メートルと東京の一等地に広大な土地を所有しているのが目立ちます。

超一等地皇居の資産価値は?

皇室の財産で資産価値の多くを占めるのが皇居です。皇居の資産価値はどれくらいあるのか興味を持っている人も多いでしょう。皇居の住所は「東京都千代田区千代田1-1」で、番地から見ても日本の中心地であることがわかります。時代劇を見ると、江戸城のことを千代田と呼ぶことがあります。

地図で見ても明らかなように地下鉄の駅がいくつも周囲に点在するくらいの広大な敷地面積になっています。皇居の資産価値は、所有土地面積約115万平方メートルに二重橋駅前の2022年公示地価1平方メートル3,670万円をかけると、実に42兆2,050億円に上ります。事業に使われるわけではないので、クラウン・エステートと単純な比較はできませんが、皇室の不動産資産も英国王室に劣らない規模であることがわかります。

全国のロイヤル不動産を検証してみる

皇居以外にどのような不動産があるのか、全国に点在するロイヤル不動産の内容を確認してみましょう。皇室には全国に4ヵ所の御用邸があります。そのうち、ニュースにもよく登場する那須御用邸は皇室不動産のなかでも最も土地が広く、662万5,665.10平方メートルに及びます。

全国にある皇室所有施設の概要は以下のとおりです。

・赤坂御用地
東京都港区元赤坂に所在する皇室関連施設です。赤坂御苑とも呼ばれます。敷地内には、仙洞御所・秋篠宮邸・三笠宮邸・三笠宮東邸(寛仁親王邸)・高円宮邸・赤坂東邸があります。

・常盤松御用邸
東京都渋谷区東に所在する皇室財産で、現在は常陸宮が邸宅として使用しています。

・那須御用邸
栃木県那須郡那須町に所在し、本邸は1926(大正15、昭和元)年、付属邸は1935(昭和10)年に建築されました。

・須崎御用邸
静岡県下田市須崎に所在し、1971(昭和46)年に建築されました。

・葉山御用邸
神奈川県三浦郡葉山町に所在し、本邸は1981(昭和56)年に建築されました。

・高輪皇族邸
東京都港区高輪に所在する皇室関連施設で、2020(令和2)年3月31日から2022年4月12日まで上皇・上皇后が居住していたことで知られます。

・京都御所
京都府京都市上京区に所在し、明治維新まで天皇の住まいだった歴史ある皇室関連施設です。約500年間天皇の住まいとして使用されましたが、途中幾度となく火災に遭い、現在の建物の多くは1855(安政2)年に再建されたものです。

・桂離宮
京都市の南西部、桂川の傍らに所在する宮家の別荘です。1615(元和元)年から約50年の歳月をかけて建造されました。

・修学院離宮
京都市の北東部、比叡山の麓に所在し、江戸時代初期の1656(明暦2)年から1659(万治2)年にかけて造営された山荘です。

・正倉院
奈良県奈良市の東大寺大仏殿の北北西に所在する大規模な正倉(高床式倉庫)です。1997(平成9)年に国宝に指定され、翌1998(平成10)年にはユネスコの世界遺産に登録されています。

・御料牧場
栃木県塩谷郡高根沢町・芳賀郡芳賀町にまたがる地域に所在する、農・畜産事業の総合的経営を行う牧場です。

・埼玉鴨場・新浜鴨場
埼玉県越谷市に所在する埼玉鴨場と千葉県市川市に所在する新浜鴨場はともに宮内庁の鴨場です。鴨場は鴨の狩猟期間に賓客の接待の場として使用されています。

・陵墓
近畿地方を中心として山形県から鹿児島県まで1都2府30県に460ヵ所899の陵墓があります。なかでも仁徳天皇陵(大阪府堺市)は面積約46万4,000平方メートルで最大の規模を誇ります。

皇居、京都御所、京都仙洞御所、桂離宮、修学院離宮は申し込めば参観も可能です。歴史に興味がある人にとっては訪れたい施設ですが、宮内庁ホームページでは京都御所、京都仙洞御所、桂離宮、修学院離宮の施設案内ビデオを公開しているので、概要を知るのに便利です。ビデオで学んでから実際に参観してみるのもよいでしょう。

不動産投資でこれからも変わらない東京23区の優位性

歴史を振り返ると、徳川家康が江戸幕府を創立したのが1603(慶長8)年です。その後1867(慶応3)年に大政奉還されるまで江戸時代は264年間続きました。大政奉還翌年の1868(明治元)年、明治天皇が京都から遷都し、江戸城は一時東京城と改名されたのち、1948(昭和23)年から皇居と呼ばれるようになりました。

江戸幕府創立以来、江戸・東京は政治や商業の中心地として栄えてきました。皇居と赤坂御用地がある千代田区・港区は今も都心5区として不動産投資では人気エリアの座を維持しています。東京のエリアを表す城東・城西・城南・城北という言葉は、江戸城(皇居)を中心にして東側・西側・南側・北側に位置するエリアであることを表しています。それくらい皇居が東京でも重要な位置を占めていることがわかります。

国立社会保障人口問題研究所によると、全国の人口が減り続けるのに対し、東京の人口は2030年までは伸び続けると予測されており、不動産投資における東京23区の優位性はこれからも変わらないでしょう。

※本記事は2022年10月11日現在の情報を基に構成しています。記事中の国葬費用は報道段階の概算であり、最終的な報告の数字と異なる場合があります。参考程度にお考えください。

(提供:Incomepress



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