特集「不動産業界トップランナーに聞く アフターコロナ時代の経営戦略」では、各社のトップにインタビューを実施。新型コロナウイルス感染症が収束した後の社会における不動産業界の展望や課題、この先の戦略について、各社の取り組みを紹介する。

福岡に拠点を置く、1951年創立の老舗不動産企業である株式会社三好不動産。日本ではかなり早い段階でサブリースを開始した同社は、不動産賃貸仲介・売買仲介だけではなく相続問題や事業承継など、顧客のさまざまな問題について真摯に取り組んでいる。「三方好し」の取り組みについて伺った。

(取材・執筆・構成=山崎敦)

株式会社三好不動産
三好 修(みよし・おさむ)
三好不動産代表取締役社長
1955年2月1日生まれ。1977年に西南学院大学法学部法律学科卒業後、積水ハウス株式会社入社。1980年に株式会社三好不動産入社し、1992年には同社の常務取締役、1998年から代表取締役社長に就任。全国賃貸住宅経営者協会連合会会長。

三好不動産
1951年7月設立。本社は福岡県福岡市。主な事業は不動産賃貸管理、賃貸仲介、売買仲介など

不動産から相続問題まで、一貫したサポート体制を構築

― 三好不動産様の現在の事業と、立ち上げからこれまでの変遷を簡単にご紹介ください。

三好不動産代表・三好修氏(以下、社名・敬称略):私の祖父は元軍人でした。戦後、三菱鉱業という炭鉱で働いた後に質屋を始めましたが、数年後、父が不動産業を始めたのが当社の事業の始まりです。

しかし、昭和40年代に日本が成長する中で質屋業が次第に下火になり、父の不動産業が収益の柱になりました。当時の不動産業は売買や一般賃貸が主流でしたが、父が福岡の唐人町で始めた資産活用提案や有償の管理サービス、今でいうサブリースを始めたことにより全国でもまだ珍しかった管理を主体とした不動産業というストックビジネスに移行し、少しずつ事業を拡大していきました。

当時、中古住宅は主に地元の小さな不動産屋が取り扱っていましたが、昭和55年に大手不動産会社が中古住宅の仲介部門に進出したことで、当時の全宅連と訴訟になりました。私の父は全宅連の常務理事や福岡の宅建協会の会長を務めていたこともあり、父と大手不動産会社との間で協議はしていたものの、やはり大手の進出は免れないという結論になりました。そこで、当社がやっていた有償の管理業を福岡のみんなでやろうと、オープンに呼びかけました。

今は全国賃貸管理ビジネス協会や日本賃貸住宅管理協会のような管理団体がありますが、それらが始まったのはバブル崩壊後の平成初期です。そう考えますと、福岡は全国に先駆けて10年以上早く有償の管理業をスタートしたことになります。

私が代表になり、「物件管理から資産管理へ」といった不動産オーナーに対し不動産にだけこだわらず幅広い提案をしていこうという話になり、専門の営業担当を入れて生命保険の販売を始めました。しかし、ほとんど売れませんでした。理由は、生命保険を売るのが目的になってしまっていたからです。

そこで相続対策を目的にして、節税対策などの手段としての生命保険を提案するという形を考えてみました。当社のオーナーですと、ビルやアパートをお持ちで自宅もあると、当然ながら1億円くらいの資産をお持ちです。

そこには相続分割や相続税の問題も付いて回りますから、我々がしっかり勉強して資産管理のお手伝いをさせていただければ、ビジネスになるのではないかと思ったのです。

相続サポートの行き着く先は、遺言です。保険や金融資産などの情報も分かるようになるからです。当社としては、まず不動産管理からお手伝いさせていただき、そこから遺言や家族信託などをお任せいただき、信頼を得ながら次のステージに行こうというのが、現在の弊社のやり方です。

― 三好不動産様の不動産業界における強みや、特徴的なサービスについてお聞かせください。

三好:当社の社員は相続等のアドバイスができるところですね。宅建の取得率は約80%で、相続支援コンサルタントの資格も100人以上が取得しています。

また、当社もいろいろなところで相続セミナーを開催していますが、その講師を自社の社員が担当できるのは大きな強みだと思っています。2022年には九州発の不動産信託会社も作り、新たな挑戦をしています。

― 三好不動産様がビジネスを行う上で最も重視するポイントは何ですか?

三好:やはり、「お客様がお持ちの総資産をどう有効活用していくか」ということですね。年齢などを理由に不動産を売却されるオーナーは多いのですが、売却後の現金の活用について当社の投資信託や生命保険のサービスと絡めながら、一つのビジネスとして展開できるかどうかということを重視しています。

その他に事業承継の問題なども含めて、当社でもさまざまな提案やセミナーのご紹介を続けていきたいと考えています。

不動産にまつわるお金の問題にしっかりと向き合う制度作り

― 三好不動産様は賃貸管理や賃貸・売買仲介だけでなく、資産運用や相続サポート、各種セミナーなど幅広いサービスを展開されていますが、近年、三好不動産様のお客様(オーナー)が抱える問題や課題にはどのようなものがありますか?

三好:最も多いのは、やはり事業承継です。財産をどのようにして子どもに残していくかということですが、今は寿命が延びたこともあり、お孫さんの代までの関係づくりについても、当社も一緒に考えていかなければならないと思っています。

当社では、毎月1~2件の遺言状作成や家族信託のサポートをさせていただいています。80歳や90歳で資産を持ち続けるというのはやはり危険ですので、不測の事態が起きた際に不動産などの財産で困らないよう当社では家族信託をお勧めしています。何があってもご家族が自宅を含む不動産をコントロールできるしくみを提案しています。

その他、お孫さんが産まれた際に贈与するという方法もご提案しています。実際、新卒入社の社員の中には、300万円ほどの奨学金という借金を抱えて社会に出てくる者もおります。そのような形で、お金にまつわるさまざまなご相談に乗っていきたいと思っています。

また、不動産は長期保有が前提になるため、修繕やメンテナンスの問題もあります。当社では、長期修繕のための積立をご提案しています。10~20年後に屋上防水や外壁の修理などをしておかないと雨漏り等の問題が発生しますので、長期修繕計画のご提案も当社側からしっかりとやっていかなければならないと思っています。

物件の規模にもよりますが、修繕には最低でも1,000万~2,000万円ほどかかるため、当社は分割払いのご提案もさせていただいておりいます。分割払いをしている間も家賃収入がありますから、それを見込んで5年の分割にするといった具合です。また、相続人の方を分割の連帯保証人にさせていただくことで、最終的に相続が発生した際に当社が仲介に入らせていただく、といったこともできると思います。

― 相続対策に関して、社内にファイナンシャルプランナーなどの専門の資格を持つ方はいらっしゃいますか?

三好:はい。CFP(サーティファイド ファイナンシャル プランナー)など、必要な資格を持っているメンバーを揃えています。また、私が日本賃貸住宅管理協会の会長だった時に「相続支援研究会」というものを作りました。そこで「相続支援コンサルタント」という資格制度を作り、全国で毎年400~500人の不動産関係者が取得のためのセミナーを受講するまでになり、資格保有者も増えています。

同時に、資格の使い道も考えなければなりません。そのため、遺言書や委託状などを事業展開するためのノウハウを教える「相続ビジネスコンサルタント」という独自の資格を整備し、不動産管理会社さん向けのサービスを展開しています。

このような相続ビジネスは、やはり弁護士さんや税理士さん、司法書士さんらと協力しないと成り立ちません。当社はオーナーに近い位置にいると思っています。コンサルタントとしての主役はあくまで我々管理会社で、下請けとして弁護士や税理士にご協力いただくというかたちでご提案しております。

― 昨今の新型コロナウイルスの流行を始め、空き家問題や2022年問題、高齢化社会の加速、若年層の人口減少、LGBTQなど、日本全体の問題が不動産投資業界に与える影響についてどうお考えでしょうか?また、そのような問題に対してどのような対策を取られていますか?

三好:新型コロナに関しては、入居者も在宅時間が増えて近隣の騒音トラブルが顕在化したことから戸建てが欲しいというニーズが増え、小さな戸建てを求めるケースが見受けられます。それに伴って福岡でも戸建ての宅地用地が不足しつつあり、土地などを買い取ってから開発するという事業も進めています。

また、不動産投資の小口化も当社が考えていきたいことです。ビル一棟ごとだけにとどまらず、小口にアパート投資ができるようなものも開発しています。

当社は「購入後も長期間安定した収入を得られる」ことをアピールしていますので、お客様との信頼関係をきちんと保てるような物件を提供していきたいと考えています。

― 三好不動産様はSDGsの取り組みとして「ずっと住みたいFUKUOKA」を掲げていますが、どのような形で地域に貢献されていますか?

三好:一つはNPOですね。当社は高齢者向けのNPO団体を持っていまして、一人暮らしや身寄りがなく生活保護・年金で生活されている約120名の高齢者をサポートさせていただいています。

もう一つは「一般社団法人アースプロジェクト福岡」という団体です。こちらは学生ボランティアといった活動を中心に、若い方にさまざまな経験をしていただくための団体です。しかし、コロナ禍で学生がなかなか動けなかったこともあり、我々のほうで休眠預金を使って学生に活動費を支給し、働いてもらう有償ボランティアを行っています。例えば、水害で水に浸かった家屋を清掃するボランティアなどですね。600名ほどの学生が登録していて、そこから10~20人で各地域のボランティアに行ってもらうための仕組みを作っています。

地場、福岡を拠点にオーナーと入居者が安心して利用できるサービスを提供する

― 三好不動産様の5年後、10年後の目標や未来構想はありますか?

三好:売上を増やす方法は常に模索しています。現在福岡市は人口が増えていますが、10~15年後は人口が減っていくのではないかと言われています。福岡は熊本や長崎への往来の拠点でもあるため、九州の中では福岡に人口が集中すると予想され、賃貸の営業や売買仲介も激戦になると思われます。その中でも、当社はしっかりとシェアを守っていきたいと思っています。

また、高齢者の増加による空き家問題は大きくなると考えています。当社としては、先ほどお話しした高齢化による相続問題について、もっと地域に根差した形を目指し、将来は福岡市内での相続セミナーを毎月100ヵ所で行いたいと思っています。当社の社員にもしっかり勉強してもらい、現在行っているオーナーセミナーや相続セミナーを社員が住む地域の公民館でできるようになればと思っています。

認知症が発症したり老人ホームに入所したりしてからでは大変なので、ある程度しっかりしているうちに家族信託を進めていただきたいと思っています。当社のような不動産業者と一緒に家族信託のような準備をしておけば、不動産の流通も進むと考えています。

福岡は、不動産業界の競争が非常に激しいところです。大手はCMやブランド力で勝負していますが、当社はもっと地域に根差した活動の中で認知を拡大していきたいですね。

また、社員の高齢化も意識しています。「定年後も仕事をしたい」という声に応えるために、地域に根差した活動や情報収集で活躍できるような仕組みを作りたいと考えています。

― これから本格的に不動産投資を始めたい、または現在行っている不動産投資でパフォーマンスを最大化したいと考えている投資家の皆さまへ、三好不動産様からメッセージをお願いします。

三好:当社は入居者様が安心して安全に暮らせるサービスを充実させ、オーナーに安心して物件を任せていただけるようなサービスを提供したいと考えております。加えて、オーナーの資産を次の世代に安心してつなげられるようなご提案もしていきたいですね。

このあたりが、三好不動産の強みだと考えております。今後も、オーナーや入居者様に信頼していただけるような関係をしっかり作っていきたいと思います。