日経225先物は現物株の動きに大きな影響を与えています。この記事では、日経225先物の仕組みと特徴、日経225先物が現物の株式市場に大きな影響を与えている理由を解説します。
日経225先物は日経平均株価が原資産
日経平均株価は、東京証券取引所 プライム市場に上場する約2,000銘柄の中から、市場の流動性が高い225銘柄の株価をもとに、日本経済新聞社が算出する株価指数です。
選定された225銘柄の構成銘柄は、年1回(原則10月上旬)変更されます。定期的な見直しは、市場の流動性やセクター間のバランスを考慮した上で行われるのです。市場流動性の高い銘柄を組み入れ、(市場流動性の)低い銘柄は除外しています。また、構成銘柄が上場廃止になるなど不測の事態が発生した場合は、臨時で入れ替えを行います。
日経平均株価を原資産とした先物が「日経225先物」です。日経平均株価を対象にした先物だけではなく、TOPIX(東証株価指数)を対象にした先物もあります。TOPIX(Tokyo Stock Price Index)は、東京証券取引所に上場している銘柄を対象に算出・公表している株価指数です。
国内株式で運用する機関投資家のベンチマークとして、日経平均株価よりもTOPIXが多く利用されています。
日経225先物の特徴
日経225先物取引は日経平均株価を対象にしているので、個別銘柄を選別・分析する必要はありません。また先物取引は買いだけでなく、売りからも取引できるので、上昇相場だけでなく、下落相場でも利益を得られるチャンスがあります。
日経平均株価はテレビやラジオ、新聞などで確認でき、値動きがわかりやすい株価指数です。証拠金取引なので、少ない資金で取引ができる「レバレッジ」が魅力です。
先物取引には期日があります。日経225先物の期日は、3月、6月、9月、12月の第2金曜日です。期日の前営業日を取引最終日として、それまで取引ができるのです。トレーダーは、日経平均などの指数が期限までに上がるか下がるかを予想し、予想が当たれば利益が得られます。取引には日経225先物が上昇すると利益が出る「買い」取引と、日経225先物が下落すると利益が出る「売り」取引の2種類があります。
日経225先物は証拠金取引
日経225先物の取引単位は、日経平均株価を1,000倍した金額が最低取引単位(1枚)になります。たとえば日経平均株価が3万円の場合、3万円×1,000=3,000万円となります。ただ、日経225先物は証拠金取引なので、135万円で取引可能です(2022年11月2日時点)。
先物取引と裁定取引
日経225先物には理論価格があります。現物である日経平均株価を前提に、先物価格を計算したものです。
先物の理論価格 = 現物価格(株価指数) + 金利相当分[- 予想受取配当分(配当がある場合)]
そして、市場価格と理論価格に価格差が生じていた場合、「裁定取引」が行われます。たとえば現在の日経平均株価が2万5,000円、2023年3月第2金曜日の日経225先物の理論価格が2万5,100円のところ、日経225先物の市場価格が2万5,200円で取引されていたら、先物の市場価格が理論価格よりも高いことになります。
この場合、割高になっている日経225先物売り、日経平均株価に採用されている現物株を買うことで、差額100円(2万5,200円 - 2万5,100円)の利益が出ます。これが、日経225先物と日経平均株価(現物)との間の「裁定取引」です。
高い方を売り、安い方を買うという裁定取引は、理論価格を計算すれば必ず儲かる手法ですが、現在はコンピューター取引により瞬時に裁定取引が行われるので、価格が大きく開くことはありません。
ただ、先物が動いた場合、裁定取引により現物株も動く可能性が高いということを覚えておく必要があります。
日経225先物市場は外国人投資家がメイン
株式市場が日経225先物主導で動く背景には、市場参加者が証券会社や国内外の機関投資家などの大口投資家が中心という事情もあります。とくに大きなシェアを持っているのが外国人投資家です。
現物株の売買代金の約6割を占めるなど大きな影響力を持つ外国人投資家ですが、先物市場では7~8割とさらに大きなシェアを占めています。
日経225先物は流動性が非常に高いので、何百億~何千億円といった大きな資金を要する機関投資家が希望した値段で売買できます。国内の株式市場に影響を及ぼすような好材料が出ると、まず先物が買われますし、悪材料が出ると売られる傾向があるのです。
しかし、株価指数に連動する先物取引を売買するのは投機的な投資家だけではありません。市場全体の値下がりにより、保有する株式の時価が大きく下落する事態に備え、先物取引を行う投資家も存在するからです。たとえば、大口顧客との市場外取引のために大量の株式を保有している証券会社や、顧客の株式を保有している金融機関などがこれにあたります。
保有する株式の時価と同じ大きさの先物を売ることで、保有する株式の価格が下がると利益を出し、逆に価格が上がると損をします。しかし、これらの取引により、資産の増減の総額は減少するのです。これを「ヘッジ取引」といいます。
裁定取引に伴う現物株の「裁定買い残高」と「裁定売り残高」で相場を予測する
海外投資家による先物取引は、主に証券会社が行う裁定取引を通じて、間接的に日本の現物株式の価格を動かしています。現物株式の空売りが禁止され、裁定取引ができない国では、株価指数先物は指数と大きく乖離したままです。裁定取引によって指数と先物が大きな乖離なく連動するのは、日本の株式市場が効率的である証拠だともいえます。
東京証券取引所では、毎週、裁定取引に伴う現物株の「裁定買い残高」と「裁定売り残高」を公表しています。裁定買い残は「先物売り・現物買い」のポジションが形成されている裁定取引において、まだ解消されていない現物買いの残高のことです。先物取引の決済日に多額の裁定残高が残っていると、裁定解消のための現物売りによって相場が下落することになるので注意が必要です。
一方の裁定売り残は、「先物買い・現物売り」のポジションが形成されている裁定取引において、まだ解消されていない現物売りの残高のことです。先物取引の決済日に多額の裁定売り残高が残っていると、裁定解消のための現物株の買い戻しにより相場が上昇する要因となるのです。
ただし、裁定解消で必ず相場が動くわけではないので、マーケットを分析する手段の1つとして考えるようにしてください。
まとめ
現物株を取引する投資家でも、日経225先物の値動きをチェックすることは大切です。日経225先物は、現物株に大きな影響を及ぼすからです。日経225先物の仕組みや特徴を理解し、資産運用に役立てるようにしてください。
\「資産を減らしたくない」「資産を増やしたい」/
ZUU Advisorsで自分にピッタリ合った資産アドバイザーを探す