日本が行っているカーボンニュートラルの取り組み事例
では、環境省を中心とした政府は、どのような施策を進めているのだろうか。ここからは、日本が行っているカーボンニュートラルの取り組み事例を紹介する。
グリーン成長戦略
グリーン成長戦略は、2050年までに成長が期待される14分野を選定し、予算や税制、金融などの政策を総動員するプロジェクトである。
○グリーン成長戦略の施策例
・グリーンイノベーション基金を通した資金支援
・重要性の高いプロジェクトへの集中投資
・カーボンニュートラル投資促進税制の導入
・新技術に対応するための規制改革
・大学等における人材育成 など
上記の施策は一部であり、ほかにも分野別ロードマップの作成や、欧米との技術協力なども行われている。多方面からサポートを受けられるため、カーボンニュートラルに関連する企業はぜひチェックしておきたい。
RE100
RE100は、企業の消費電力をすべて再生可能エネルギーで賄うための国際的な取り組みである。活動報告書の提出義務や技術要件はあるものの、この取り組みに参画した企業には以下のようなメリットが生じる。
○RE100に加盟するメリット
・ステークホルダーからの評価が高まる
・再エネ先進企業とコミュニケーションを図るきっかけになる
・化石燃料高騰の影響を受けにくくなる
中小企業が参画することは難しいが、例えばRE100の参画企業と技術提携をすれば、イノベーション創出の可能性がアップするはずだ。また、最近では取引先に対して、RE100への参画を求める企業も見られるようになった。
カーボンプライシング
カーボンプライシングとは、課税やクレジット取引などを通して、炭素に価格をつける施策である。例えば、燃料・電気の使用量に応じた炭素税を導入すると、全国的にCO2排出量を抑制する効果が期待できる。
カーボンプライシングは企業によるCO2排出をコントロールできることから、脱炭素社会に貢献する施策として注目されている。現状では炭素税(CO2排出量1tあたり289円)とクレジット取引のみだが、今後の動向によっては新たな仕組みが導入されるかもしれない。
脱炭素やカーボンニュートラルに関するQ&A
脱炭素やカーボンニュートラルは、今後の世界経済やビジネスを左右する重要ワードである。ここからは基礎知識をQ&A形式でまとめたため、おさらいの意味も含めて最後までチェックしていこう。
Q1.カーボンニュートラルの意味や具体例とは?
カーボンニュートラルとは、温室効果ガス(主にCO2)の排出量・吸収量を均衡させることである。具体例としては、再生可能エネルギーの導入や電力の脱炭素化、カーボンリサイクルの利用などが挙げられる。
努力では削減しきれない温室効果ガスについては、他団体のクレジットを購入する「カーボンオフセット」が利用されるケースもある。
Q2.カーボンニュートラルの弊害は?
カーボンニュートラルの弊害としては、まずコスト面が挙げられる。例えば、風力発電や太陽光発電は初期費用が高く、設備のメンテナンス費も負担しなければならない。
また、温室効果ガスの明確な検証が難しい点も、軽視できないデメリットだろう。なかでも複数国に自社工場を構えている企業は、排出量・吸収量の検証が難しいとされている。
Q3.脱炭素の具体例は?
脱炭素の例としては、発電時に大量のCO2を排出しない「再生可能エネルギー」の導入が挙げられる。
再生可能エネルギーには多くの種類があり、代表的なものとしては水力や風力、バイオマス燃料などがある。いずれも石炭や石油より環境にやさしいため、日本を含めた世界各国で導入が進められている。
Q4.カーボンニュートラルの成功例はある?
関西エリアを中心とする阪急電鉄は、カーボンオフセットを活用する形で摂津市駅のカーボンニュートラルを実現している。同駅は太陽光発電やLED照明、無水トイレなどを導入し、CO2の排出量を大きく減らすことに成功した。
また、温室効果ガスを吸収する施策として、駅構内の緑化計画にも取り組んでいる。
Q5.カーボンニュートラルはなぜ難しい?
カーボンニュートラルの問題点としては、次の3つが挙げられる。
・計測方法による国家の格差
・導入コストの高さ
・検証の難しさ
中でも導入コストの高さは、国内企業にとって深刻な問題である。日本は再生可能エネルギーの土壌が乏しいため、設備導入だけで多くの初期費用がかかってしまう。