エネルギー問題はなぜ深刻?事業活動との関係性
上記の通り、日本は自国だけで発電に必要なエネルギーを賄えていない状況にある。仮に海外からの供給がストップすれば、経済的に大きなダメージを受けることは明白だろう。
実際に、2021年からは新型コロナウイルスの影響で原油価格が高騰しており、さまざまな業界に影響を及ぼしている。運輸業はもちろん、石油を使用する製造業やエネルギー業界、灯油をつかう農家などもコスト増に直面している。
また、SDGsやESG投資が広まった影響で、再生可能エネルギーへの転換などが求められている点も企業は軽視できない。環境・社会に配慮したビジネスが注目されているため、利益だけを追求するとステークホルダー(投資家や消費者など)からの評価を下げてしまう恐れがある。
日本が抱える5つのエネルギー問題
ここからは、日本が抱えるエネルギー問題をさらに深掘りしていこう。
1.化石燃料への依存
資源エネルギー庁の資料によると、日本における2021年度の電源構成は以下の通りである。
新エネルギーによる発電量も増えてはいるものの、現状では75%以上を化石燃料(LNG・石炭・石油等)に頼っている。特に中東からの輸入が多いため、サウジアラビアやUAEなどで政変や紛争が起こると、さまざまな関連業界が大きなダメージを受けてしまう。
2022年から本格化したロシア・ウクライナ危機のように、政変や紛争はいつ起こるのか分からないため、化石燃料への依存は深刻なリスクと言えるだろう。
2.エネルギー自給率の低さ
日本のエネルギー自給率は、OECD加盟国(35ヵ国)の中で第34位である。日本より自給率が低い国も多く存在するが、同じアジア圏の中国・韓国に遅れを取っている点は軽視できない。
日本の周辺海域にはメタンハイドレートが見つかっているものの、2023年~2027年にかけての商業化が目指されているため、実用化はまだ先の話だろう。つまり、今後少なくとも数年間は、エネルギー自給率の大幅改善はないと考えられる。
3.原子力発電所の稼働問題
2011年に東日本大震災が発生して以降、多くの原子力発電所は稼働を停止している。その影響は大きく、2010年に20%強を記録した日本のエネルギー自給率は、9年間で10%強にまで下がってしまった。
原子力発電所はエネルギー不足の解決策となり得るが、安全を確保しない限りは全面的な再稼働は難しい。現在では新たに新規制基準が設けられており、複数の審査を通過しないと稼働できない仕組みになっている。
4.電気系統の障害
山岳地帯や海洋など、国内で多くの再生可能エネルギーを生み出せる場所は限られている。北海道や東北地方はその代表エリアとして知られるが、現状では生み出したエネルギーを供給するためのシステムが整っていない。
従来の電気系統は、あくまで大規模な発電所(主に火力発電や原子力発電)から需要地へと電力を運ぶために構築されたものである。つまり、再生可能エネルギーの供給には特化していないため、新たな電力網を整備しなければならない。
そのコストや手間を考えると、再生可能エネルギーへの完全転換は難しい状況と言えるだろう。
5.環境問題への対応
ベルステルマン財団の「Sustainable Development Report 2022」によると、日本のSDGs達成度は第19位であった。経済大国であるアメリカや中国よりも上位につけているが、以下の目標については「進捗が停滞(必要なペースの50%以下)」と評価されている。
○SDGsの評価が低い目標(日本)
【13】気候変動に具体的な対策を
【14】海の豊かさをまもろう
【15】陸の豊かさもまもろう
(※【13】の目標については、2022年のレポートで評価が上昇)
つまり、日本は環境問題への対策を迫られており、早急に化石燃料からの脱却を図る必要がある。しかし、現状では大きなエネルギー転換ができないため、日本がSDGs先進国を目指すのは厳しい状況である。