さらなる省エネルギーに向けた課題や取り組み
ここまで解説したように、日本が今すぐ化石燃料から脱却することは現実的ではない。そのため、以下のような取り組みを通してさらなる省エネルギーを実現する必要がある。
一般家庭や企業のエネルギー効率化
以下の表は、1973年から2017年にかけての最終エネルギー消費量の倍率を表したものである。
全体の最終エネルギー消費量はそこまで変わっていないが、家庭部門・業務部門では2倍以上に増えている。つまり、一般家庭や飲食店、オフィス、商業施設などのエネルギー効率が悪いと分析できるだろう。
政府はこの課題を解決するために、革新的な省エネルギー技術の開発促進事業を実施している。ただし、イノベーションは必ずしも生まれるとは限らないので、各家庭や企業による努力もポイントになる。
建築物の省エネ効果をアップさせる
世界のエネルギー消費量のうち約3割は、オフィスビルや商業施設などの建築物が占めると言われている。そのため、各企業が以下のような施策を実施すれば、ある程度の省エネ効果を実現できる。
○建築物の省エネ対策
・断熱性能の高い建築材を使用する
・定期的な換気で空調の負荷を減らす
・屋根やひさしで日光をしっかりと遮る
・太陽光発電用のパネルを設置する など
地味な努力に見えるかもしれないが、日本全国の企業が足並みをそろえて対策をすれば、大きな省エネ効果を期待できるだろう。
事業承継・M&Aをご検討中の経営者さまへ
THE OWNERでは、経営や事業承継・M&Aの相談も承っております。まずは経営の悩み相談からでも構いません。20万部突破の書籍『鬼速PDCA』のメソッドを持つZUUのコンサルタントが事業承継・M&Aも含めて、経営戦略設計のお手伝いをいたします。
M&Aも視野に入れることで経営戦略の幅も大きく広がります。まずはお気軽にお問い合わせください。
【経営相談にTHE OWNERが選ばれる理由】
・M&A相談だけでなく、資金調達や組織改善など、広く経営の相談だけでも可能!
・年間成約実績783件のギネス記録を持つ日本M&Aセンターの厳選担当者に会える!
・『鬼速PDCA』を用いて創業5年で上場を達成した経営戦略を知れる!
中小企業が考えたいエネルギー対策
経営資源が限られた中小企業にとって、大規模な設備・システムなどの導入は難しい。では、中小企業が貢献できるエネルギー対策にはどのようなものがあるだろうか。
エネルギー問題による自社への影響を考える
まずは前提として、エネルギー問題による影響を細分化する必要がある。日本の現状を踏まえて「自社にどのような影響があるか?」を理解しなければ、効果的な対策は立てられない。
例えば、東日本大震災以降は多くの原子力発電所が稼働停止したものの、電力の供給不足に陥った企業は少ないはずだ。しかし、化石燃料や再生可能エネルギーによる発電が中心となれば、エネルギー価格は割高になると考えられる。
特に利益率の低い企業は、経営状態がエネルギーコストに左右されやすい。実際に2021年からは原油価格が高騰しており、多くの中小企業が苦境に立たされている。
この状況が長引くと、体力のない企業は倒産するリスクがあるため、早急に事業構造やサプライチェーンなどを見直す必要がある。
再生可能エネルギー分野への参入を検討する
北海道や東北をはじめ、再生可能エネルギーを生み出すエリアは地方に分散している。一つひとつの規模は小さいが、所在地によっては再生可能エネルギー分野に参入しやすい企業もあるだろう。
再生可能エネルギー分野は市場が拡大しており、国際再生可能エネルギー機関(IRENA)と国際労働機関(ILO)の共同報告書によると、2021年からの12ヶ月間で70万人の雇用が生み出された。また、再生可能エネルギー分野にもさまざまな関連事業があるため、最新技術を有していない企業にも参入のチャンスはある。
○再生可能エネルギー分野の関連事業
・廃棄物の処理や有効活用に関する事業
・自然環境の保全事業
・クリーンエネルギー事業
・省エネ化に関する事業
・排出権の取引 など
直接的に関係するものはクリーンエネルギー事業のみだが、近年ではカーボンニュートラルが注目されている影響で多くの環境事業が注目されている。再生可能エネルギー事業に取り組む企業を顧客にするようなビジネスも含めれば、さまざまな関連事業が対象になるだろう。
国や自治体のエネルギー対策を注視する
国や自治体のエネルギー対策に目を向けることも、中小経営者が意識したいポイントだ。資金が限られた中小企業であっても、支援策を活用すれば新事業を始められる可能性がある。
例えば、経済産業省は日本政策金融公庫を通して、非化石エネルギーの導入を促進するための融資制度(環境・エネルギー対策資金)を実施している。中小企業でも最大7.2億円の資金を低金利で借りられるため、さまざまな設備を導入できるはずだ。
ほかにも税制優遇や補助金など、エネルギー事業の関連施策は多く実施されている。自治体による支援も含めれば、中小企業でも多くの資金を調達できるかもしれない。
ただし、ほとんどの制度には要件や期間が設けられているため、資金計画を立てる前に詳細をチェックしておこう。