脱炭素社会に向けた日本の課題
中小企業が施策を考える際には、国内の課題を意識することが重要である。ステークホルダーから評価される施策を打ち出すためにも、ここからは日本ならではの重点課題を見ていこう。
化石燃料への依存度が高い
火力発電所が多い日本は、世界的に見ると化石燃料への依存度が高い。高度経済成長期からはやや改善されているものの、2018年度の時点で85.5%のエネルギーを化石燃料で賄っている状態だ。
主な対策として原子力発電所の稼働があるが、2011年に発生した東日本大震災の影響で、原発ならではのリスクが顕在化してしまった。また、効果が期待される再生可能エネルギーについても、安定性や供給量の面では不安が残されている。
化石燃料には枯渇するリスクもあるため、日頃から多くの電力を消費する企業は、エネルギー転換に関する施策を積極的に考えていきたい。
物流業界の脱炭素化が遅れている
欧米諸国に比べると、日本の物流業界は脱炭素化が遅れている。
アメリカのカリフォルニア州では、2035年以降にガソリン車やハイブリッド車を全面禁止にする規制案が公表された。ほかにも航空燃料を変更するなど、欧米には国をあげて脱炭素化に取り組んでいる地域が多い。
一方で、日本の物流業界は2022年10月現在でも、化石燃料を使うトラックや航空機、鉄道などに依存している。省エネ化・省人化につながる施策は打ち出されているが、産業構造を変えるまでには至っていない。
物流業はエネルギー産業に次ぐCO2排出量であるため、企業側も深刻な課題として受け止める必要がある。
家庭でのCO2排出量が多い
家電の技術進歩やガス設備によって、家庭でのCO2排出量が多い点も日本の課題である。環境省の「令和2年度家庭部門のCO2排出実態統計調査」によれば、1世帯あたりのCO2排出量は2.88トンに上った。
上のグラフを見ると、特に戸建物件は集合住宅の約1.8倍にあたるCO2を排出している。電気はもちろん、ストーブに使う灯油やガス設備によるCO2排出も少なくない。
この現状を解決できるような商品・サービスを生み出せば、大きなニーズにつながる可能性があるだろう。
中小企業が考えたい脱炭素社会に向けた対策
日本の現状を踏まえて、国内企業はどのようなCO2対策をすべきだろうか。ここからはそのヒントとして、中小企業が考えたい対策を紹介する。
まずはエネルギー消費の削減から考える
中小企業は資金が限られているため、いきなり設備を導入することは難しいだろう。まずは手軽に取り組める施策として、エネルギー消費の削減から考えていきたい。
エネルギー業界や物流業界でなくても、CO2排出量を削減できる取り組みは多く存在する。例えば、事務所の照明を高効率なものに換えたり、熱源機器・空調を見直したりするだけでも、ある程度の効果を期待できる。
エネルギー転換は長期的なプランを組む
化石燃料に頼らないシステムを作りたい場合は、長期的なプランを組むことが必須だ。最初から再生可能エネルギーを導入すると、事業効率の低下によって赤字経営になってしまう。
カーボンニュートラルの効果はすぐには表れにくいため、無理のないペースで取り組むことがポイントになる。社用車を年間数台ずつ電気自動車にするなど、経営面にダメージが及ばないプランを慎重に立てていこう。
太陽光発電の導入を考える
中小企業でも取り組みやすい施策としては、自家消費型太陽光発電の導入が注目されている。初期費用はかかるものの、太陽光パネルを設置すると次のようなメリットが生じるためだ。
○太陽光発電を導入するメリット
・電気代のコスト削減につながる
・SDGsに貢献できる
・環境対策として分かりやすい
・銀行や投資家からの評価が高まる
太陽光パネルは少しずつ普及しており、2025年以降の東京都では一般家庭にも設置義務が課される予定である。屋根や屋上はもちろん、駐車場などの空きスペースにも設置できるため、ほかの施策が思いつかない場合は検討してみよう。