シェアリングエコノミーのスキーム
シェアリングエコノミーのビジネススキームは、「共有」がキーワードだ。従来までの、「モノを購入し所有する」という概念から、「借用・貸与して共有する」というスタイルへ変化している。モノやサービスを融通し合うため、多くの場合は個人の費用負担を軽くできる点がメリットだ。
提供者・利用者・事業者の関係
シェアリングエコノミーのシステムが成立するには、モノやサービスを「貸す側(提供者)」と「借りる側(利用者)」の存在が不可欠だ。そして両者を繋ぎ、より円滑にやり取りできる場を提供するのが事業者の役割となっている。
例えば着物をシェアする場合、貸す側にとっては「自分は着ないが、たんすにしまってある着物を活用したい」といった課題がある。一方で借りる側にとっては、「パーティーに着て行きたいが、日常的に着用するわけではないのでコストを抑えたい」といったニーズが考えられる。両者がマッチングすることで、それぞれのメリットが生まれ需要が満たされる仕組みだ。
ただし、双方がスムーズに貸し借りをするためには、一定のルールが必要になる。借用期間のスケジュールや費用負担のルールなどを管理し、トラブルを防ぐためだ。それらを担保し、プラットフォームを提供するのが事業者だ。
シェアリングエコノミーの課題は?
近年認知度が上昇しているシェアリングエコノミーだが、比較的新しい概念であるため、多様な面で課題が残る。
モラルやルールに関する課題
シェア事業において、モノやサービスを提供する側・受ける側のいずれにとっても相手方のモラルやプラットフォームのガバナンスへの信頼が不可欠だ。しかし実際には、ルールが十分でなかったりモラルに起因する問題があったりして、トラブルに発展するケースも少なくない。
法整備に関する課題
新しいビジネススキームであるために、法整備が追いついていないのが現状だ。法律や規制が整備されていないことによって、グレーゾーンと言われるような事業が存在していることもある。
行政機関もシェアリングエコノミーを推奨しており、法整備に尽力している。例えばカーシェアや民泊もかつてはグレーゾーンだと指摘されていたが、法改正によって問題点を解消した。一方で次々に新しいビジネスモデルが考案され実現するため、法律の整備が追いついていないのが現状だ。
雇用に関する課題
クラウドソーシングなど人材やスキルを有効活用するシェア事業では、労働力を提供する側にとっては多様な就労形態や働き方を実現できる。提供を受ける側にとっても、人材を雇用する場合に比べて、必要なときに必要なスキルを利用できるためコストを下げて品質を上げられるというメリットがある。
ただし雇用契約に比べて、報酬や評価の制度やマネジメント方法が十分に構築されていないケースが多い。労働基準法の適用範囲や、事故が起きたときの損害の負担者などが明確でないことも問題だ。
安全性や補償に関する課題
モノやサービスを提供するのが、従来のような企業や事業者ではなく個人になるため、品質や安全性を担保する仕組みが十分でないこともある。
法整備同様に、補償や保険の制度が設けられていないことも多い。事故やトラブルに巻き込まれた際、既存の補償制度では適用範囲外となるケースもある。法整備同様に、実態に即した制度設計が進められてはいるが、事業の多様化も進み追い付かないことも考えられる。
税金に関する課題
使っていない資産を有効活用して収益を得られる可能性があることから、気軽に始められる副業としてもシェアリングエコノミーは人気が高い。しかしそれらの収益に対する課税方法など税制面でのルール作りや周知などが課題だ。
デジタル格差に関する課題
シェアリングエコノミーでは、インターネットを通じてサービスを仲介することが前提となる。利便性が高い反面、スマートフォンやPCなどデジタル機器の所有状況やリテラシーによって、得られるサービスや情報に差が出る「デジタル格差」の問題が指摘されている。
年代や収入額を問わず、幅広い層がシェアリングサービスの恩恵を受けられるような環境づくりが求められている。
シェアへの抵抗感に関する課題
人によっては、自分のモノを他人に貸すことに抵抗を感じる場合もある。特に新型コロナウイルスの感染拡大が懸念される中では、他人が使ったモノをシェアすることで感染に対する不安や嫌悪を抱く人もいる。