利用者側が不安に感じている点は?

シェアリングエコノミーでモノやサービスの提供を受ける側にとっては、どのような懸念があるのか。利用者の不安を解消するための制度についても触れる。

事故やトラブル時の対応

PwCコンサルティング合同会社による「国内シェアリングエコノミーに関する意識調査2021」の結果では、「シェアリングエコノミーのサービスを利用する場合の懸念事項」について、いずれの事業分野でも「トラブル対応と信頼性」との回答が最多だった。

個人間での貸し借りを前提とするシェアリングエコノミーでは、トラブルに発展したり、不慮の事故に巻き込まれたりするリスクが否定できない。プラットフォームを提供する事業者が十分なルールや補償を提供しているかどうかはユーザーにとって重要だ。

口コミ評価が信頼できない

個人間での取引を主とするシェアリングサービスでは、相手の信頼性を確かめるために、すでに利用したユーザーのレビューや口コミ評価などが重要な判断材料となる。

しかし口コミは必ずしも適正とはいえず、金銭取引によってレビューや評価が不正に操作されていることもある。正確な情報を知りたいユーザーにとっては不安を感じる点だ。

サービスの品質などが不安

シェアリングサービスは提供者やプラットフォームによって、サービスなどの品質がさまざまだ。そのため、求めている品質やスキルを十分に満たすかどうかが事前に分からない場合も多い。

「シェアリングエコノミー認証制度」

一般社団法人シェアリングエコノミー協会は、シェアサービスの安全性や信頼性を評価し、一定の基準を満たした事業に認証を付与している。政府の公表したガイドラインを基に自主規制(共同規制)を策定し、シェアリングエコノミー協会は第三者として認証する。

認証制度では、安全性や品質に関する信頼性だけでなく、提供者・利用者・事業者の責任分担を可能な限り明確化し「価値の共創を促進する仕組み」を構築しているか、また持続可能性が向上する取り組みかどうかを基本原則としている。認証はユーザーにとっての判断材料となり得る。

シェアリングエコノミーに関するQ&A

シェアリングエコノミーをめぐるよくある疑問をまとめた。

シェアリングエコノミーのデメリットは?

個人間でのモノやサービスの貸し借りでは、トラブルに発展する危険性もある。また、新しいビジネススキームであるために法律や税金、補償制度が未整備であることや、個人によって「貸し借り」への抵抗感やデジタル機器を使いこなせる力が異なると格差が生まれる点が課題だ。

シェアリングエコノミーの環境への影響は?

シェアリングエコノミーはSDGsにも多様な面から貢献している。環境面では、モノや空間のシェアによって、既存資産を活用することで建設や製品の製造、ごみ処理の過程で排出されるCO2を削減できる。また、移動手段のシェアによってエネルギー消費の減少にもつながる。

シェアリングエコノミーの例は?

シェアの対象や具体的なサービス内容は、シェアオフィスやイベント会場などの「空間」、カーシェアなど「移動手段」、服飾品や家電製品など「モノ」、特殊な技能など「スキル」、クラウドファンディングなど「お金」といった多様な分野に及んでいる。

シェアリングエコノミーの将来性は?

シェアリングエコノミー市場は成長を続けており、現状のペースで拡大すれば2030年度には7兆6,455億円に至ると予測されている。新型コロナウイルス感染拡大の影響などの問題が解決すれば、2030年度は14兆2,799億円に至る見込みだ。