会社の期待どおりに働くことで評価されてきた人たち

ミドルエイジ,ビジネスマン
(画像=one/stock.adobe.com)

興味深い調査結果を紹介しましょう。2000〜2002年に拡大した希望退職の波が、08年のリーマンショックで再拡大した2010年に、定年退職し雇用延長や再就職した人たちを対象に行われた調査です(*1)。

対象者に、「セカンドキャリアがスタートした直後の自己イメージ」を尋ねたところ、8割の人が「人並みにやっているし、寂しくなどなかった」と答えました。ところが、新しい条件や環境で働き続けてみると、多くの人たちが当初考えていた働き方を断念していたことがわかりました。

  • 自分のスキルを生かそうと張り切っていたのに、誰からも期待されない
  • 賃金が下がることはわかっていたけれど、実際に働いてみると低すぎる
  • 権限が縮小した

そんな現実に失望し、不満が募り、自尊心を低下させ、挙げ句の果てに、

  • 気楽に仕事をするようになった
  • 職場の人と勤務時間外に付き合わなくなった
  • 仕事に長期的な見通しを立てなくなった
  • 重い責任を負うような仕事のやり方はしないようになった

など、自ら率先して「働かないおじさん化」していたのです。

会社員とは、「会社の期待どおり、あるいはそれ以上の働きをする」ことで評価されてきた人たちです。

ところが、新天地では誰からも期待されなかった。会社も上司も、誰も期待してくれないのです。できる自分を見せようとすればするほど周りから煙たがられ、後輩たちからぬれ落ち葉のように扱われるのも情けない。結果を出そうとすればするほど空回りし、自分が浮いているような気がして居心地が悪い。

同僚の中には高待遇で他社に再雇用されたり、早期退職して大学の教授になった人もいるので、余計に滅入る。

「どうせ私は……」という自己否定が、ステレオタイプどおりの「私」を演じさせてしまうのです。

*1:独立行政法人 労働政策研究・研修機構「定年退職後の働き方の選択に関する調査研究結果」