AIの進化で何が起きたのか
AIが登場し、技術が進歩したことで、私たちの日常には具体的にどのような変化があったのか。代表的な事例を紹介する。
囲碁や将棋でAIが人間に勝利
複雑な思考やパターンによる戦略を要するゲームでは、人間の強者とAIとの対決がたびたび注目される。1997年には、米IBMが開発したAI「ディープ・ブルー」がチェスで当時の世界チャンピオンに勝った。
将棋では、2012年にコンピューターソフトがトップ棋士に勝利する。さらに、チェスや将棋に比べて盤面が広くパターン数が多いためAIが勝利するのは難しいと言われていた囲碁でも、2016年、コンピュータープログラム「アルファ碁」にトップ棋士の李九段が敗れて大きな話題となった。棋譜など過去のデータを一切見ずに自ら学ぶことができるAI「アルファゼロ」の開発も進んでいる。
クレジットカードの不正監視
クレジットカードの不正対策に金融機関で導入されているAI技術が「レグテック」というシステムだ。このシステムでは、過去の不正パターンを機械学習したAIがリスクを監視しており、オンラインでの本人確認や、マネーロンダリング対策など、不正対策に幅広く活用されている。
AIレコメンド機能
ECサイトのおすすめ商品や、SNS上の広告などは個人の購入履歴や閲覧履歴に基づいて表示されることが一般的になった。ユーザーそれぞれの関心や趣味を捉え、効率的に商品やコンテンツが宣伝される。一方で、AIのレコメンドによって個人の多様性が失われるとの指摘もある。
自動運転
自動車をAIが自動で運転することで利便性を向上し、交通事故を大幅に減らせるのではないかと期待されている。渋滞の緩和策や公共交通機関が少ない地方での移動手段としてもメリットがある。
2022年現在、日本では「条件付自動運転車(限定領域)」が実現している。高速道路などにおいて自動運転システムを作動できるが、システムが自動運転を継続できなくなればドライバーは運転に戻らなければならない。
今後は、ドライバーの関与がなくても決められたルートを走行できる「自動運転車(限定領域)」や、領域の制限がなくなる「完全自動運転車」の実現が想定される。
自動翻訳
AIを用いて言葉を別の言語に翻訳する技術も顕著だ。深層学習の登場によって、より自然で人間が訳したような言葉に近い翻訳が実現されつつある。海外旅行用の翻訳機や外国語で書かれたウェブサイトを閲覧する際などにも使われ、身近になっている。
医療画像診断
深層学習の進歩で、AIが画像を認識する技術も向上した。医療現場では放射線画像などをAIが認識し、異常の検知などを支援しており、見落としの防止や業務効率化に役立っているという。
2021年には、新型コロナウイルスの画像診断を支援するAIシステムが医療機器として承認された事例もある。
ChatGPT、Bing AIなどの高度なテキスト生成
近年におけるAIの進化の一つとしては、テキスト生成能力の飛躍的な向上が挙げられる。その代表例がOpenAIの「ChatGPT」やMicrosoftの「Bing AI」だ。これらのAIでは、自然言語処理(NLP)技術を用いて人間が理解しやすい自然な文章を生成できる。
特に「ChatGPT」は、大量のテキストデータから学習して自然な会話を生成する能力があり、カスタマーサービスのチャットボットや文章作成補助ツールとして広く活用されている傾向だ。一方「Bing AI」は、Web検索の結果を自然な言葉で説明する能力を持つ。
画像生成にも対応しており、「Bing Image Creator」を使いユーザーの指示に従って新しい画像を作成できる。
画像・イラストも高度に自動生成
画像やイラストの自動生成技術とは、テキストやデータなどを入力することでAIが自動的に画像やイラストを生成してくれる技術だ。この技術は、デザインやアートなどの分野で活用されている。画像やイラストの自動生成技術の具体例としては、以下のようなものがある。
・DALL・E
テキストを入力すると、その内容に合った画像を生成するAIだ。例えば「アボカドの形をした椅子」「熊が火星にいる」といったテキストを入力すると、それらに対応した画像を生成する。2023年9月には最新版「DALL·E 3」がリリースされた。
・Stable Diffusion
テキストや画像を入力すると、その内容に合った高品質な画像を生成するAIだ。例えば「猫」というテキストを入力すると、さまざまな種類の猫の画像を生成する。また人物の顔写真を入力すると、その人物に似た別人物の顔写真の生成が可能だ。
2023年11月にはStable Diffusion 2.0」がリリースされ、さらに2023年12月には日本特化モデル「Japanese Stable Diffusion XL」がリリースされた。