企業がGXへ参加するメリット

企業がGXへ参加する主なメリットには、以下の3つが挙げられる。

  • 政府のサポートや公的予算の増加
  • ブランドイメージの向上
  • 人材獲得の優位性向上

各メリットについて以降で詳しく見ていこう。

政府のサポートや公的予算の増加

日本政府は「2050年カーボンニュートラル宣言」「GXを重点投資分野の一つに指定する」などGXに力を入れている。上述した通り、今後10年の間に官民協調で150兆円規模の投資を行う方針もあるため、企業はGXに参加することで資金的な援助が期待できるだろう。

ブランドイメージの向上

企業は、GXへ参加することで環境問題に力を入れていることを社内外にアピールできる。消費者側も環境問題に対する意識が向上しているため、環境問題に取り組む企業姿勢が評価されブランドイメージの向上が期待できるだろう。

人材獲得の優位性向上

GXに取り組む企業は、世界的なトレンドを積極的に取り入れ先進的な事業運営を行っているとして、求職者の認知度やイメージの向上につながる。結果として「より優秀な人材が集まる」「多くの応募がある」など人材獲得のうえでも有利に働く可能性が高まるだろう。

日本政府のGX戦略

日本政府の主なGX戦略としてGXリーグとGX実行会議を紹介する。

GXリーグ

GXリーグとは、産官学が協働しカーボンニュートラル時代の未来像やGX市場のルール形成について議論しながら新たな市場を創造する実践の場だ。GXリーグにより経済と環境および社会の好循環を目指す。GXリーグは、未来社会像対話の場・市場ルール形成の場であるとともに自主的な排出量取引の場としても提供される。

GX実行会議

2022年7月、岸田内閣は「GX実行会議」を設置した。GX実行会議では、以下の2点について議論する。

  • 日本のエネルギーにおける安定供給の再構築
  • 脱炭素に向けた経済・社会、産業構造変革の今後10年間におけるロードマップ

2022年8月の第2回会議では、2022年2月に勃発したウクライナ情勢により世界的にエネルギーの需給状況が不安定となっている点を整理。再エネ政策の今後の進め方について議論が進められた。

国内の取組事例

ここからは、国内の以下4例の取組事例を紹介する。

  • 経団連(一般社団法人日本経済団体連合会)
  • 東京電力ホールディングス株式会社
  • トヨタ自動車株式会社
  • NTT(日本電信電話株式会社)

自社でGXに取り組む場合の参考としてチェックしてほしい。

経団連(一般社団法人日本経済団体連合会)

2022年5月に経団連(一般社団法人日本経済団体連合会)は、GXに向けた提言を発表した。提言のなかでは、産業の国際競争力強化や官民の投資を最大限に引き出すために日本政府に対してGX政策パッケージ(グランドデザイン)の早急な提示を要求している。またエネルギーの供給側には、エネルギー安全保障の強化や原子力など既存技術の活用を指摘。

エネルギーの需要側には「省エネ・電化」「イノベーション」「グローバル・バリューチェーン」から見直した温室効果ガス排出量削減などによるカーボンニュートラルの対応を求めている。

東京電力ホールディングス株式会社

2022年3月、東京電力「GXリーグ基本構想」への賛同を発表した。東京電力は、発表のなかで「ゼロエミッション電源の開発」「エネルギー需要の更なる電化促進」の2点を重点的に取り組むことを宣言している。

トヨタ自動車株式会社

2015年10月、トヨタ自動車株式会社は「トヨタ環境チャレンジ2050」を発表した。車が環境に与えるマイナスの要素をゼロに近づけて環境や社会にプラスをもたらすことを目指している。自動車製造時に生じる二酸化炭素の排出量を削減するほか、新車の平均二酸化炭素排出量を2050年までに2010年と比較して90%削減など目標は具体的に数値化している。

NTT(日本電信電話株式会社)

NTTグループは、2020年5月に「環境エネルギービジョン」を発表。同ビジョンによると自社の再生可能エネルギー利用率を2030年度までにNTTグループの温室効果ガス排出量を2013年度比で80%削減し2040年度にはグループ全体でカーボンニュートラㇽの実現を目指すとしている。カーボンニュートラルで目指す主な施策は、以下の2つだ。

  • 再生可能エネルギー利用を拡大して温室効果ガスを45%削減
  • IOWN(アイオン)導入により電力消費量を削減し温室効果ガスを45%削減

IOWN(Innovative Optical and Wireless Network)とは、次世代コミュニケーション基盤。NTTは、2024年に仕様確定、2030年ごろにIOWNの実用化を目指している。