GXが注目されている背景
GXが注目されている背景には、地球温暖化の深刻化や日本政府の2050年カーボンニュートラル宣言、岸田内閣がGXを「重点投資分野」の一つに位置付けたことなどが挙げられる。それぞれの背景について以降で順番に整理していく。
地球温暖化の深刻化
地球温暖化の深刻化に伴い大規模な水害や森林火災などさまざまな環境問題が発生している。環境問題による経済損失は計り知れず、温室効果ガスの排出の高い状況が続いた場合、2100年までに平均気温が約2.6~4.8度上昇する。未曽有の干ばつや洪水の発生リスクが高まっている状況だ。
欧米では、以前より地球温暖化対策に尽力した結果、技術力向上によってマーケットシェアを高め大きな収益を上げる企業が増加している。かつて温室効果ガスを多く排出している米国と中国は、地球温暖化対策に熱心ではなかった。しかし経済的な機会損失や国際的な影響力低下を懸念していることもあってか現状両国ともに地球温暖化対策に取り組み始めている。
2050年カーボンニュートラル宣言
日本政府は、2020年10月にカーボンニュートラルの実現を2050年までに目指すことを宣言した。2021年6月には「2050年カーボンニュートラルに伴うグリーン成長戦略」を発表。成長が期待される14の分野別に現状と課題を整理し成長戦略の「工程表」を掲げている。
カーボンニュートラル宣言とは、分かりやすい言葉で表現すると「地球の温暖化を防ぐため、人々が出す二酸化炭素の量と、それを吸収する量を同じにしよう」という考え方を指す。これが何を意味するのか、もう少し詳しく説明しよう。
我々が普段使っている車や電気、そして工場での生産活動などにより、大量の二酸化炭素が空気中に放出されている。二酸化炭素が多くなると地球の気温が次第に上昇し、「地球温暖化」と呼ばれる現象を引き起こす。このままでは、海面上昇や異常気象が増えるなど、日常生活に大きな影響が出ることが予想されている。
地球温暖化を防ぐための目標が「カーボンニュートラル」だ。多くの国や企業が「カーボンニュートラル」を目指して行動を起こしている。具体的には、二酸化炭素の排出を少なくするための新しい技術の導入や、再生可能エネルギーの利用拡大などの取り組みを行う。また、排出をゼロにすることが困難なケースでも、森を増やすことで、自然が二酸化炭素を吸収する力を増やす方法も考えられる。
「カーボンニュートラル宣言」は、このような考え方や取り組みを公式に表明することだ。つまり、「地球温暖化を防ぐために、二酸化炭素の排出と吸収のバランスをとる努力をする」という意志を宣言することを意味する。
GXがビジネス界での重点投資分野として浮上
2022年6月、岸田内閣は経済の成長戦略として「新しい資本主義のグランドデザイン及び実行計画」を発表した。岸田内閣は、この計画のなかでGXを今後の成長のキーとして位置づけ、重点投資分野の一つに指定している。
この背景には、GXが持つ経済的な潜在力や産業のイノベーションを促進する可能性を評価し、国の競争力を高めるための戦略として取り入れたいという意図がある。具体的な取り組みとして「今後10年間に官民が協力して150兆円規模のGXへの投資を実現する」という野心的な方針を打ち出しており、これにより日本の経済活性化や新しい産業の創出を目指している。