XRが注目される背景

近年XRが注目されている背景を見ていこう。

技術の進化

・5G「第5世代移動通信システム」の実用化
5Gは、高速大容量、高信頼・低遅延通信、多数同時接続を実現する新しい通信技術だ。モバイルなどで用いられている次世代通信規格の5世代目を意味し、すでに日本では2020年春から商用サービスが開始している。どのようなデバイスを利用するにしても、高速で安定した通信ができなければXRの世界にアクセスすることはできない。

そのため5Gの普及は、XRを各所で活用するために不可欠なインフラとなる。

・デバイス・ソフトの進化
デバイスやソフトの進化は、VRで必要とされる高画質なビジュアル、立体的な音響効果を実現する。肉眼と差を感じない視野やダイナミックな音の世界がさらなる没入感を生み出す。またセンシング精度の向上により微妙な動作を感知し仮想的世界になめらかな変化を与え続けられる。

かつては、大規模スタジオなどの特殊な施設のみで可能であったこれらの技術が、ハードウェアの低価格化により身近なものとなってきたことも大きな要因だ。

社会生活の変化

・消費者の志向変化
XRでは、これまで誰もが経験したことのない未知の世界を気軽に体感できる。インターネットで世界がつながり、消費者は自分で検索したりSNSなどから膨大な知識を得たりしながら非常に詳細な好みに合わせた買い物ができるようになった。市場の変化はスピーディで新商品が次々に投入され、発売と同時に陳腐化する時代だ。

「モノ消費」から「コト消費」の体験重視へと消費者の志向が変化する現代において、XRは新たなビジネスへの起点となる可能性を秘めている。

・コロナ禍による働き方の変化
2020年から猛威を奮っているコロナウイルスによって世界のすべてが大きな影響を受けた。感染を食い止めるためにビジネスでは人との距離を保ちながら働ける環境が求められた。リモートワークやテレワークの導入で課題とされたのが、コミュニケーションの維持である。こうしたニーズへの対応策としてXR技術のビジネス活用が急激に進むこととなった。

XR導入のメリット

XRは、現実で実現しづらい状況まで視覚や聴覚、体感で提供することが可能となる。XRの導入効果としては、主に以下のようなものが挙げられる。

時間や場所を問わず、高い再現性で環境や空間が構築される

XRは、現実と近い環境をいつでも再現できる点がメリットだ。遠隔地にいるメンバーが話し合ったり共同作業したりする際に「同じものを見る」「同じ音を聞く」といった経験を共有すれば意思疎通がしやすくなり、同程度の理解を得ることが期待できるだろう。同空間にいるのと同様の密なコミュニケーションができるため、連帯感や同一意識が持ちやすくなる。

危険なく試乗や訓練、シミュレーションが可能となる

XRの活用が最も進んでいるのが、さまざまな機器類の操作や業務訓練の現場だ。操作に不慣れな場合や危険な現場では、実地訓練が難しいこともある。しかしXRを使えば安全に業務上で必要な感覚を養うことが可能だ。現実感に満ちたリアルな恐怖を通じて緊急時の対応を何度でも練習することができる点はメリットといえる。

サービス提供や顧客対応教育など訓練の効果が高い

XRを活用した教育では、一般的な手法で行うよりも各段に高い効果が得られる点もメリットの一つだ。ゲームに慣れた子どもの教育では、教師の口頭やテキストだけの授業よりも理解しやすいとされる。ビジネスにおいても顧客へのサービス提供やコミュニケーション対応などバリエーションに富んだ具体的なシチュエーションをいくつも設定できるため、応対技術が身に付きやすいと考えられる。

仮想体験を通じて現実味のある経験が得られる

世の中には「体験してみないとわからない」「判断がつかない」という場面が数多くある。購買活動の場もその一つだ。XRを購買体験に活用することで顧客に現実味のある経験を提供できる。観光業や自動車ディーラー、不動産業などでは、セールスプロモーションにVRを取り入れることで訴求効果の拡大を図れるだろう。