本記事は、茂木健一郎氏の著書『70歳になってもボケない頭のつくり方』(きずな出版)の中から一部を抜粋・編集しています
「永遠の現在」 認知症を遠ざけるには?
「認知症」は、なぜ起こるのでしょう。
まず確認しておきたいのは、認知症とは1つの病気ではなく、様々な要因が絡み合っての症状の総称だということです。
原因も1つではありません。大脳の側頭葉や、海馬、後頭葉や前頭葉が委縮していくタイプ、脳血管の詰まりや破れ、甲状腺機能の低下、脳腫瘍など様々で、遺伝的要素もゼロではありません。
アルツハイマー型認知症、脳血管性認知症、レビー小体型認知症、前頭側頭型認知症など、いくつかある「認知症」の中で、皆が一番イメージするのは、「記憶」に関するものかもしれません。
「さっき食べたものが思い出せない」 「家族の名前も忘れてしまう」
こうした物忘れや、新しいことを覚えられないといった記憶障害が有名ですが、そのほか、判断力や理解力の低下、慣れているはずの日常ルーティンもできなくなってしまう実行機能障害などがあります。
家の中に見知らぬ人がいるなどの「幻視」を訴えたり、「感情」コントロールが難しくなるタイプの認知症もあります。かつては穏やかな人柄だったのに、認知症になってから怒りっぽくなった、興奮しやすくなった、「モノを取られた!」と思い込み、周囲の人を責めてしまう……。
「自分らしさ」が失われる――。 「永遠の現在」に閉じ込められる――。
それが多くの人が、認知症を恐れる一番の理由ではないでしょうか。
そんな認知症にならないで済む方法はあるのでしょうか。
残念ながら、現在のところ、認知症を根本から治す万能策や万能薬は存在しません。
ただし、認知症になる確率を下げる方法はあります。認知症には遺伝性もあると言われていますが、生活習慣も大きな影響を与えることがわかっているからです。