認知症リスクを下げる生活習慣

そもそも、脳は非常に複雑なシステムです。

頭蓋骨という強固な城壁に守られた繊細極まる臓器の機能。そのシステムを現在の脳科学は、すべて解明しきれていません。

認知症もいまだ謎の多い症状です。しかし、日々の生活習慣が認知症になるリスクを下げることは確かなようです。

カリフォルニア工科大学出身でアルツハイマー型認知症の世界的権威、デール・ブレデセン博士は、認知症を抑える「リコード法」を提唱しています。食事療法・サプリメント治療・薬物治療に加えて、睡眠・運動・食事・デトックス・脳トレなど、全部で36からなる要因を複数組み合わせ、オーダーメイドの生活習慣を守ることで、初期の認知症進行を抑えることができるというもの。

彼の考えでは、認知症とは何か1つの薬を飲めばOKというものではなく、様々な要素を掛け合わせることで、改善や抑制がみられるというのです。実際、この理論は納得のいくものですし、認知症に限らず多くの生活習慣病は、日々の生活の帰結です。

ただし、あまりに「健康」を人生の第一目標に持って行ってしまうことも、要注意だと僕は思っています。

カロリー・脂質・添加物などを極端に気にするあまり、「精神が不健康」になってしまっては、元も子もありません。朝から晩まで「ボケない頭」をつくるためのプログラムをこなすだけの人生では、第一、面白くありません。

あくまで楽しみながら健康的に、をモットーにしたいですね。

実はもう一つ、僕が皆さんに贈りたい言葉があるのです。それは、「三日坊主も100回繰り返せば、『300日継続』達成」というもの。

集中力がない、継続力がない。そういった悩みを、僕はよく相談されます。大丈夫です。僕もですから(笑)。

それでも僕は落ち込みません。それは、右記の真実を知っているから。「ダイエットを始めよう!」と思って、3日後に挫折することなどしょっちゅうです。でも大丈夫、4日目に再開すればいいだけのことです。「継続」で大切なのは、文字通り「毎日」することではなく、「トータルで見て、継続できている」ことです。

語学・毎朝のランニング・ブログ執筆・小説執筆・英語の書籍執筆……、どれもこれも「三日坊主の法則」で、僕が成し遂げたものです。

一番もったいない脳の使い方は、「継続できない自分」に失望して、本当にやめてしまうことです。でもそれって、本当は「継続できない」ことを言い訳にして、諦めているのではないでしょうか。

「俺っていつも三日坊主だからさ」ということを盾にして、継続できない言い訳にしているのではないでしょうか。

語学を勉強しよう・ピアノを練習しよう・ランニングをしよう。そう決意して3日目に中断してしまったら、翌日から再開すればいいのです。

健康も同じです。糖質制限して、ラーメンやカレーなどは我慢して、お酒も甘いものも全部我慢。そのためにお茶や飲み会のお誘いもすべて断り、早寝早起きを実践して……。

それが心地よいならいいですが、我慢に我慢を重ねて生きる人生は、「クオリティ・オブ・ライフ」の面で、もったいないと僕は思います。

低糖質・低アルコール・清貧の生活を心掛けても、楽しむことは忘れない。トータルで見て、平均的に「健康」であれば大成功なのです。

70歳になってもボケない頭のつくり方
茂木健一郎(もぎ・けんいちろう)
1962年東京都生まれ。脳科学者。ソニーコンピュータサイエンス研究所シニアリサーチャー。東京大学理学部、法学部を卒業後、同大学院理学系研究科物理学専攻課程を修了。博士(理学)。「クオリア(意識における主観的な質感)」をキーワードとして、脳と心の関係を探求し続けている。『脳と仮想』(新潮社)で第4回小林秀雄賞受賞、『今、ここからすべての場所へ』(筑摩書房)で第12回桑原武夫学芸賞受賞。

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