「信用取引はやめとけ」といわれる最大の理由は、信用取引なら同額の資金でも現物取引より大きな額で取引ができるので、その分大きく損する可能性があるからです。一方で、現物取引以上の大きな利益が出せる可能性もあります。ただし、そのためにはロスカットや取引額、信用余力など、より一層のリスク管理と強いメンタルが要求されるので、一筋縄ではいきません。

大きな利益を夢見て失敗する初心者が多くいるため、信用取引はやめておいた方が良いと感じていらっしゃる方が比較的多いかもしれません。

目次

  1. 信用取引とは
  2. 信用取引はやめとけといわれる理由
    1. レバレッジがかかるためハイリスクハイリターン
    2. 金利(貸株料)を払う必要がある
    3. 信用売りは逆日歩が発生する可能性がある
    4. 買いは家まで、売りは命まで
    5. 制度信用取引には期限がある
    6. 株主優待が貰えない
    7. 売りの場合は配当落調整額を支払わなければならない
  3. 信用取引の始め方
    1. 金融機関を選ぶ
    2. 口座開設に申し込む
    3. 信用取引口座も一緒に開設する
    4. 審査を通過したら開設完了
  4. 信用取引をするなら覚えておくべき事項
    1. テクニカル分析について学習する
    2. 追証が発生しないようリスク管理をする
    3. 危ないと感じたらちゅうちょせずにロスカットを
    4. 信用取引残高を観察する
    5. 現物を担保とする信用二階建て取引に注意
  5. FAQ
    1. 信用取引をやめておいた方がいい人の特徴は?
    2. 制度信用と一般信用、どっちがお得?
    3. 空売りのメリット・デメリットは?
    4. 現物取引と信用取引の違いは?
  6. 信用取引はいくらから始められる?

信用取引とは

信用取引 やめとけ
(画像=Looker_Studio/stock.adobe.com)

信用取引とは、現金や株式を証券会社に担保として預けることで、証券会社からお金や株式を借りて売買を行うこと。担保価値に対して約3.3倍までの取引を行うことができます。

メリットとしては、以下のような点が挙げられます。

  • ハイリターンを狙える
  • 下落相場でも利益を狙える
  • 一日信用取引でデイトレードを行えば手数料が安い場合もある

信用取引は、少ない資金で現物株以上の取引ができることにより、大きな利益が得られるという、ハイリターンを狙うことができます。

また、下落相場でも利益が狙える点は、信用取引では売りから入る「空売り」を行うことで、利益が得られる点も大きいでしょう。

さらに、デイトレードでその日中に決済を行った場合に、手数料や金利、貸株料を無料に設定している証券会社もあります。

一方のデメリットとしては、以下のような点が挙げられます。

  • ハイリスクである
  • 借金が発生する可能性がある
  • 金利を払わないといけない

ハイリターンが狙えることとは裏腹に、ハイリスクであり損失を被ることも考えられます。

仮に株価が下落して含み損を抱え、担保価値が減少することとなれば、証券会社に対して追加保証金(追証)を差し入れる可能性もあるでしょう。

そのような場合には追加資金を手当てしなければなりません。

そして、信用取引で買いを行う「買建て」の場合は金利が、売りを行う「売建て」の場合は貸株料を証券会社に支払う必要が出てきます。

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信用取引はやめとけといわれる理由

冒頭で記載しましたが、信用取引はやめとけといわれる理由は、現物株取引と違い準備した資金以上の取引ができるためハイリスクハイリターンであることでしょう。

さらに、リスク管理を徹底していないと難しいこともありますが、それ以外の理由もあります。

信用取引の際に発生する金利や逆日歩、売りから入る場合のリスクなど、知っておかなければならないことも多いためです。

具体的にどのような理由が挙げられるのか、確認してみましょう。

レバレッジがかかるためハイリスクハイリターン

信用取引ではレバレッジをかけることができます。レバレッジとは、手元資金や担保に入れた株式の価値以上の取引ができることであり、 担保価値の約3.3倍までの取引が可能 です。

つまり、最低委託保証金である30万円を準備すれば、(金利や手数料を仮に除いて考えると)約100万円までの取引が可能となります。現物取引で株式を購入する場合は、30万円あれば30万円分しか購入できません。

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信用取引 現物取引
元本 30万円 30万円
レバレッジ 〜約3.3倍 1倍
投資できる金額 〜約100万円 30万円
※2022年12月19日現在

具体的な例として、30万円で100万円分の株式を購入したと仮定しましょう。

購入株式が大幅に値上がりして、100万円から150万円になったとします。

これにより、株式を売却すれば50万円の利益を確保できることとなり、30万円で50万円の利益が得られます。

現物取引では、逆に3.3分の1程しか利益が得られないことから、15万円程の利益になるでしょう。

逆に、購入株式が大幅に値下がりし、100万円から69万円の価値になってしまった場合には、31万円の損失が出ることとなります。

この場合は、準備した30万円はマイナスになり、担保価値もなくなってしまうほど損失を被ります。

担保価値が足らない分は、証券会社に新たに不足金を充当 しなければなりません。

これらがレバレッジをかけることによるメリットとデメリットといえるでしょう。

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金利(貸株料)を払う必要がある

信用取引は、証券会社に預けている以上の資金や現物株を担保に取引をする仕組みで、証券会社からお金を借りて購入する必要があります。

お金を借りる場合は、銀行から借りる場合をイメージしていただければ分かりますが、 借りた分に応じた金利が発生 します。

一方で、 売りから入る場合は、証券会社から株を借りて売る必要があり、証券会社に対する貸株料が発生 します。

例えば、ある株式を100万円の信用買いする際に金利が1.10%であった場合を想定してみましょう。

証券会社に対して発生する金利は、

金利=(約定代金×買方金利(年利)×日数)÷365(日)

で算出されます。

仮に半年間信用買いした株を保有すると想定する場合には、借りた金額に対して半年相当の金利がかかることとなります。

そのため、金利額として

100万円×1.10%×180日÷365=5,424円(小数点以下切り捨て)

これだけの金利を証券会社に支払わなければなりません。

逆に空売りを行うために証券会社から株を借りる場合は、貸株料を支払う必要があります。

同様に、

貸株料=(約定代金×貸株料(年利)×日数)÷365(日)

で算出されます。

貸株料は株式銘柄によって異なりますが、PER(株価収益率)が比較的高いグロース市場上場株は高い傾向にあります。

銘柄や証券会社によって貸株料は異なりますが、高い所では10.0%を超える貸株料を設定している所もあります。

仮に、とある貸株料10.0%の株式を、100万円分半年間空売りした場合、

100万円×10.0%×180日÷365=4万9,315円(小数点以下切り捨て)

と非常に高額になります。

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信用売りは逆日歩が発生する可能性がある

信用取引で 売建てを行う場合は、逆日歩(ぎゃくひぶ)という追加コストが発生 する可能性があります。

逆日歩とは、制度信用取引において、証券会社が外部の機関投資家等から売建て用の株式を調達する費用のことです。

制度信用取引においては、売りが買いを上回る場合には、売り方に貸すための株式が足らなくなります。

本来証券会社において、信用取引において買い方が購入した株式は証券会社内に預け入れられることとなり、この株式を売り方に貸すことで、空売り用の株式が調達できます。

逆に、売り方における株式の需要が多くなると、売り方への貸株を証券会社内で行うことができず、外部の日本証券金融から株を借りなければなりません。

さらに、日本証券金融側でも足らない場合には、日本証券金融は機関投資家等から融通することとなります。

ちなみに、 逆日歩が発生するかどうかは、営業日の取引終了後に売買を差し引くことで判明 します。

また、逆日歩の値段は取引翌営業日に行われる入札によって決定し、売りを行った段階で発生するかどうかや、いくらになるかは不明です。

ただし、銘柄が売りに偏っている場合は、高額の逆日歩が付くこととなり、売り方が買い方に支払うこととなります。

逆日歩は1株あたり、株価が4桁の銘柄で0.15円〜0.6円程度、5桁の値がさ株で0.6〜5円程度です。

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買いは家まで、売りは命まで

信用取引の格言として、「買いは家まで、売りは命まで」といわれることがあります。

「買いは家まで」を説明するために、300万円を準備して、とある銘柄を1,000万円分、信用買いで実施する場合を考えてみます。

この銘柄を買ったものの、仮に購入後にこの会社が倒産した場合、株式価値はゼロとなるでしょう。

すなわち、1,000万円分の投資資産がゼロになることとなります。

担保300万円に対して1,000万円の借金を背負うことになり、場合によっては 差引額を埋めるために家を売却してまで資金の工面をしなければならない かもしれません。

「売りは命まで」の説明として、逆にとある株式を1,000万円分、売りから入る場合を考えてみます。

おそらく売る場合は、会社の株式価値が500万円や100万円等、下がることを前提として売るのだと考えられます。

しかしながら、空売り銘柄の株価が10倍となり価値が1億円になった場合はどうでしょうか。

この会社の株価が下がる前提で1,000万円分を売り始めたにもかかわらず、1億円になった場合には、9,000万円の含み損が発生します。

さらに極論ですが、10億円になった場合はどうなるでしょうか。

理論的には、 株価はどこまでも上がるため、無限ということもできる かもしれません。

これが「売りは命まで(奪う可能性もあり得る)」の例となります。

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制度信用取引には期限がある

信用取引には、制度信用取引と一般信用取引があります。

数ヵ月程度の短期売買が多い信用取引において、使いやすいのが 金利や貸株料のメリット がある制度信用取引です。

しかしながら、信用取引に慣れるまでは短期の売買は比較的難しいため、制度信用取引の 原則6ヵ月の決済期限には一定のハードルがある でしょう。

制度信用取引は、東証と名証上場銘柄のうち、取引所が選定した一定の基準を満たした銘柄において売買ができ、売建ては貸借銘柄、買建ては制度信用銘柄として指定されています。

さらに、証券会社が証券金融会社を通じて資金や株式を調達することで、投資家に対して制度信用取引として売買を可能としています。

一方、一般信用取引は、投資家と証券会社との間で取引を行う形態であり、売建ては証券会社が指定した銘柄、買建ては原則全上場銘柄で売買することができます。

一般信用取引における決済期限は 一般信用取引における決済期限は顧客と証券会社との間で決定 されます。

それぞれのおもなメリットとデメリットは以下の通りです。

制度信用取引 一般信用取引
メリット ・一般信用取引に比べて金利や貸株料が安い ・基本的に逆日歩がない
・一日信用取引に対応
・カバーしている銘柄が多い
デメリット ・決済期限が最長6ヵ月と短い
・取引所が選定した銘柄しか売買できない
・銘柄によっては逆日歩が発生する場合がある
・制度信用取引に比べて金利や貸株料が高い
・貸借銘柄が証券会社によって違う
※2022年12月19日現在

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株主優待が貰えない

信用取引で投資家が購入する株式は証券会社名義となっており、実際に投資家が保有するわけではないので、たとえ買建てでも 信用取引で保有している会社の株主優待は貰えません 。そもそも、信用取引で保有している会社の株主名簿に記載されることもありません。

もし投資対象銘柄の株主優待を獲得したい場合は、現物株を購入して、かつ銘柄の権利確定日に株主である必要があります。そこで使われるのが現引きという投資手法です。

現引きとは、信用取引で買建てした銘柄を、反対売買ではなく現物株を買い取る形で清算することです。これを権利確定日の2営業日前の権利付き最終売買日に行うことで、株主優待を獲得することができます。

ただし、取得に必要な額の不足分は追加の資金を投入して対応しないといけないので、直前になって現引きできないことがないように、証券口座の取引余力を確認しておきましょう。

信用取引においては、次の項目で触れていますが、「優待クロス」という手法により、現物と信用を組み合わせて株主優待の権利を得る方法があります。

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売りの場合は配当落調整額を支払わなければならない

現物株において、権利確定日に株式を保有している場合には、先ほどの株主優待に加え配当金が受領できます。

買建てで権利日を迎えた場合は、同様に配当金に相当する額を受領することができます。

制度信用取引の場合は、配当金から源泉徴収税相当額を差し引いた分が、一般信用取引では配当金がそのまま受領できます。

一方で、権利日を売建てて迎えた投資家はどうなるのでしょうか。

売建ては買建てと逆の立場になるため、制度信用取引の場合は、配当金から源泉徴収税相当額を差し引いた分が、一般信用取引では配当金相当分が徴収されます。

地合いや当日夕方から夜にかけての欧米を中心とした海外市場動向にもよりますが、 権利が確定した翌営業日はいわゆる「配当落ち」という配当分だけ株価の調整 が入ります。

配当落ちは一般的には下落するため、買建ての場合は、含み益の減少もしくは、含み損が拡大することも考えられ、売建ての場合はその逆となることも考えられます。

この配当落ち後の価格変動を回避する方法として、権利付き最終売買日に現物株を保有しながら、売建てを行う手法があります。

これは同時に株主優待の権利も実質無料で取得することから、「優待クロス」といわれる手法です。

しかしながら、優待クロスを目的とした売建てが増えることにより、逆日歩が発生し結果的に高額な優待となってしまうことも過去に複数出ています。

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信用取引の始め方

一般的に現物取引口座と信用取引口座は別々で開設する必要 があります。

また、株式取引を行うにあたって、初めに現物取引を開始している場合、証券口座によってはマイページ経由で、新たに信用取引の専用口座開設をすることもできるでしょう。

今回は初めて証券会社に口座開設を行うにあたって、信用取引口座も開設し、信用取引を始める場合を想定して紹介します。

金融機関を選ぶ

信用取引を行うためには、 証券会社にて、信用取引口座を開設する必要 があります。

証券会社各社においては、取引用の独自ツールが準備されています。

とくに瞬時の値動きにも素早く注文対応を出す必要があるデイトレードを行う場合は注文の出しやすさも大切でしょう。

さらには、テクニカル分析において重要になってくるチャートの使いやすさも挙げられます。

そして、将来的に違ったタイプの取引を検討されている方にとっては、FXや米国株、投資信託など、日本株以外のトレードの充実性もあります。

ほとんどの証券口座で信用取引を開設できますが、中でもおすすめの金融機関として、以下の3つを紹介します。

  • 楽天証券
  • SBI証券
  • 松井証券

まず、楽天証券ですが、楽天グループのポイントを使って投資ができる点です。

また、多くのデイトレーダーから評価されているツール「マーケットスピード」の使い勝手の良さが挙げられます。

SBI証券をおすすめする理由は、とりわけ海外取引を行う場合、米国株と米国株信用取引以外に、世界8ヵ国の株式売買ができる点です。

最後に松井証券ですが、初心者にも使いやすいシンプルなUIであり、日本株に絞って信用取引を開始する場合には、使い勝手の良さとして挙げられるでしょう。

一度各証券会社のサービスを、 信用取引とともにそれ以外の取引がどこまでできるかを確認して、口座開設を検討 してみてはいかがでしょうか。

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口座開設に申し込む

参考までに楽天証券を例に、信用取引口座開設から信用取引を始めるまでの手順を解説します。

信用取引を行う前に、まず 現物株取引が可能な証券口座開設が必要 です。

楽天証券トップページの右上にある、「口座開設」から申し込みます。

口座開設の方法は、おもに「スマートフォンと運転免許証または個人番号カードをお持ちの方」「運転免許証・個人番号カード以外の本人確認書類をご利用の方またはパソコンから本人確認書類を提出される方」の2つがあります。

とくに前者がスムーズに口座登録ができておすすめです。

口座開設申し込みのメール登録を行い、本人確認書類とともに、顔写真の撮影を行います。

お客様情報を入力して、翌営業日以降にログイン用IDが送信されてくるので、初期設定を行い、投資資金を入金することで、現物株を取引開始できます。

後者は、ログインIDと初期パスワードがメールではなく郵送されるため、その間やや時間を要しますが、その後の流れは同じです。

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信用取引口座も一緒に開設する

まず、楽天証券のマイページ中段からやや下あたりに、右側に「お客様情報の確認・変更」の入り口があり、

信用取引

入ると「申込が必要なお取引」の入り口があります。

信用取引

すると、楽天証券で取引ができる各取引形態のなかに、「信用取引(国内株)」という欄があります。

信用取引

一番右の「お手続き」の列から「申込」のボタンを押し、「信用取引に関する説明書」「信用取引ルールについて」「信用取引規定」および「信用取引口座設定約諾書」の内容確認が必要です。

さらに、 個人情報利用目的の同意書類も確認が必要 です。

申し込みの必須事項を入力するとともに、信用取引に関する問診に回答し、入力内容を確認したのちに、申し込み受け付け完了となります。

信用取引口座開設にあたって、 他の証券会社経由で信用取引の経験がある方や、一定の現物取引の経験がある方が対象 となります。

審査を通過したら開設完了

楽天証券側で審査を行い、申込日の翌々営業日以降に登録メールアドレスに審査結果が届きます。

メールを受信した日から信用取引が開始可能です。

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信用取引をするなら覚えておくべき事項

信用取引を行うにあたって、覚えておくべき事項を紹介します。

必ずしも全てを覚えておく必要はありませんし、リスクを最小限に抑えるべく少額の信用取引を経験しながら学習していく方法も有益です。

信用取引に限らず、現物取引含め机上の学習だけでは難しいこともあります。

実際に売買をしながら確認することや、株式シミュレーションゲームなどを使って取引を始める前に経験するのが良いでしょう。

テクニカル分析について学習する

まず、テクニカル分析についてです。

テクニカル分析とは、 過去の銘柄や市場全体の値動きから将来の値動きを予想する手法 です。

過去の出来事により当時株価がどのように動いたのかを、 今後の値動きに対しても応用 することができます。

過去の値動きを表した株価チャートだけを分析すればよく、企業の業績や経済全体の状況を把握していなくてもいいというメリットがあります。

反面、将来的に必ずしも過去と同じような動きをするものではないことや、市場全体に影響する動きがあった場合には、個別銘柄でも影響を受けてしまうということがあるでしょう。

また、テクニカル分析に対して、ファンダメンタル分析という概念があります。

ファンダメンタル分析は、企業の過去の業績や今後の成長性、さらには競合他社と比較して割安か割高などを分析することです。

PER(株価収益率)やPBR(株価純資産倍率)、売上高成長率や利益成長率など、各種業績指標を用いて、個別銘柄の可能性を独自に分析することとなります。

信用取引は金利や手数料もかかることから、デイトレードや数日、長くても数ヵ月から半年程度の売買が一般的です。

信用取引のような短期売買では、企業業績をベースとしたファンダメンタル分析よりも、チャートをベースとしたテクニカル分析の方が親和性があるといえます。

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追証が発生しないようリスク管理をする

信用取引においては、担保価値の約3.3倍まで売買ができるとご説明しました。

売建て、買建てどちらかまたは両建てしている段階で含み損が出ている場合、担保価値から含み損分がマイナスされることとなります。

結果的に担保価値が減少し、証券会社が定める最低委託保証金率を下回った場合には、追加保証金(追証)を差し入れなければなりません。

追証が発生するのは、信用取引で建てた銘柄に対して、含み損が発生する場合が一般的です。

また、現物株を代用有価証券として担保としている場合、仮に信用建ての銘柄が含み益であったとしても、代用有価証券の株価が下落し担保価値が減少すれば追証が発生します。

したがって、 信用取引で建てている銘柄以外にも、担保である現物株の株価にも注意を払う必要 があります。

とりわけ、信用取引はレバレッジがかかることから、含み損は解消されるだろうと放置していると、さらに含み損が膨らみやすい構造ともいえます。

そのため、一定以上の含み損を抱えた場合には 早期にロスカットをすることや信用余力に注意しながら新規信用建てを行うなど、リスク管理を徹底 し、追証を回避することが重要です。

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危ないと感じたらちゅうちょせずにロスカットを

株価は一方向に動き出したらその方向に継続的に動いていくこともあり、考えていた方向と違う方向に動いた場合はロスカットを検討する必要があります。

とりわけ発行済株式数が少なく、流動性が低いグロース上場株の場合、急騰したと思えば、翌日以降急落することもあり、高いボラティリティが発生することもあるでしょう。

そのような値動きが激しい銘柄は、信用建てを行った場合に思っていたよりも逆の方向に動いてしまうことも多々あります。

勢いの余りにストップ高、またはストップ安で貼り付いてしまうことも考えられます。

したがって、信用建てをする際には、 買建ての場合は売却もしくは、売建ての場合は買戻しをどこでするかなど、出口を決めておくことが賢明 でしょう。

これは含み益を利益確定する場合も、含み損を損失確定(ロスカット)する場合も、双方に対していえることです。

結果的に 早期のロスカットは大損することを回避することにもつながり、投資家の資産を守る こととなります。

しかしながら、ロスカットは自分の損失を確定することとなり、資産を損なうだけでなく、自分が間違ったことを認めたくないというメンタル的な面でも障壁となります。

その点を改善するには非常に難しい点もありますが、改めてフラットな気持ちで次に臨めるため、有効的な手段といえるでしょう。

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信用取引残高を観察する

信用取引においては、 信用取引残高を追っていくことが重要 です。

信用取引残高とは、信用取引において買建て、売建てそれぞれの残高を集計したものです。

中でも「銘柄別信用取引残高」は、各取引所が公表しています。

制度、一般信用取引における買い残高と売り残高を前週末残高として、毎週第2営業日の16時30分を目安に公表しています。

また、日本証券金融が、証券会社に資金を貸し付けた融資と貸株の情報「日証金貸借取引残高」は、毎日夜に速報で、翌営業日11時頃に確報という形で公表しています。

速報は当日の夜にその日の信用残の情報として、確報は翌営業日に逆日歩の発生含めて情報が提供されます。

とくに確認しておきたいのが、投資対象銘柄における融資と貸株の残高で、その比率は貸借倍率として表示されます。

貸借倍率は融資残高÷貸株残高で算出されることから、1より大きいと融資残高が多いということになるでしょう。

融資残高が多いということは、融資による信用買いが、株式を貸与することによる信用売りに比べて多いことを指します。

融資残高が多い場合は、買建てを行った投資家が将来的には売りに回るため、将来的な売り需要があるといえます。

逆に貸株残高が多い場合は、売建てを行った投資家の買戻しにより、将来の買い需要があるといえるでしょう。

このように、 特定銘柄における需給の観点から、信用取引残高を確認しておくことは重要 です。

現物を担保とする信用二階建て取引に注意

現物株を代用有価証券として用いることで信用取引を行うことができますが、注意が必要です。

仮に保有している現物株と同様の銘柄を使って信用取引を行う場合を具体的な数値を用いて説明してみます。

ある銘柄を現物株として50万円分所有している場合を想定します。

この場合、代用有価証券として用いることができる金額は、
50万円×80%(上場株式の代用有価証券掛け目)×3.3倍=132万円

です。

現物株が50万円の場合は、現物株50万円+信用買い132万円=182万円まで同一銘柄を保有できることとなります。

もともと50万円の現物株に対して、信用買いを合わせると182万円となることから、約3.6倍のレバレッジをかけることができます。

この銘柄の株価が値上がりして現物株の価値が60万円になった場合、現物株の含み益10万円とともに、信用買建て分132万円も含み益が約26万円発生することから、合計約36万円の含み益になるでしょう。

50万円の現物株に対して約36万円の含み益が出るということから、非常に高い利益率になります。

一方で、逆に含み損になった場合はどうでしょうか。

同じく現物株の価値が40万円になった場合は、現物株は10万円の含み損、信用分はマイナス約26万円の含み損が発生します。

現物と信用で合わせて約36万円分の含み損になり、50万円の現物株に対して、合計約36万円の含み損を抱えることとなります。

このように現物株と信用買いを同一銘柄で行う、いわゆる信用二階建て取引にはレバレッジが約3.6倍となることから、注意が必要です。

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FAQ

信用取引をやめておいた方がいい人の特徴は?

信用取引は現物取引に比べてレバレッジをかけやすいことで信用建てのロットが大きくなりがちであり、さらに金利、貸株料のコストが高くなります。

そのため、リスクに対する自己管理ができる方には向いていますが、 ロスカットや利益確定がなかなかできない場合は厳しい かもしれません。

また長期保有を前提としている場合は、保有期間に応じた金利や貸株料がかかってくることから、信用取引よりも現物株がいいでしょう。

チャートを中心としたテクニカル分析よりも、企業の状況を把握したいファンダメンタル分析を好む方も、信用取引より現物取引の方が向いています。

制度信用と一般信用、どっちがお得?

制度信用と一般信用はどちらがお得なのかは、一概にいえない所があり、 投資家のトレード方針によって変わってくる でしょう。

また、デイトレード中心なのか、数日から数週間で売買を行うスイングトレード中心なのか、優待クロスを行うときのみなのかなどがあります。

金利や貸株料を気にするなら制度信用 ですが、 信用建ての期間や空売りできる銘柄数でいえば一般信用 に軍配が上がるでしょう。

一般信用の中には、一日信用取引として、デイトレードでは手数料を無料にしている証券会社もあります。

さらに、制度信用にはない、グロース市場上場銘柄に対しての空売りができるものもあります。

/b>ですが、 銘柄や信用建て期間によって、お得な方を選択することが望ましい でしょう。

空売りのメリット・デメリットは?

空売りのメリットは、 下落基調でも売りにより利益が獲得できること でしょう。

現物株の買いと空売りの両建てを行うことによってうまくヘッジすることができれば、株価が下がった場合でもトータルでは貸株料程度の損失で抑えられる可能性があります。

上昇相場はゆっくりですが、下落相場は急激になるといわれていますので、株価の急落を空売りでうまく取ることができれば、大きな利益になる可能性があります。

一方のデメリットは、 信用買いに比べて空売りできる銘柄が少ない 点が挙げられます。

また、マーケット参加者は基本買いポジションを持つことから、相場が上昇し、空売り参加者が買い戻す場合、 乗り遅れると多額の損失を被る こともあるでしょう。

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現物取引と信用取引の違いは?

現物取引と信用取引を以下の通り整理してみます。

現物取引 信用取引
取引可能額 準備した現金の範囲内 準備した現金×約3.3倍
※現物株を保有していない場合
金利や貸株料、売買手数料 売買手数料
※金額によって無料の証券会社もあり
売買手数料+金利(買建て)
売買手数料+貸株料(売建て)
買建て、売建て共に上記以外のコストもあり
購入や信用建ての期限 なし 基本的に期日あり
売りから始める取引 できない できる
※ただし銘柄によってはできない場合もあり
配当 貰える 配当相当額が貰える
株主優待 貰える 貰えない
銘柄購入先に対する議決権 あり なし
※2022年12月19日現在

それぞれの特性を理解しながら、取引を行っていくことが重要といえます。

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信用取引はいくらから始められる?

信用取引は 諸費用を除いた最低委託保証金30万円 を準備すれば始めることができます。

30万円の場合は、売買できる金額は約3.3倍の100万円までです。

現物取引口座以外に、まずは信用取引口座を開設する必要がありますが、銀行から入金した場合に、証券口座の預り金として入金されます。

預り金を委託保証金に振り替える必要があり、入金しただけで委託保証金に振り替えを行わないと、信用取引はできません。

また、含み損で最低委託保証金を下回った場合には、新規で信用建てを行うことができず、新たに追加で入金することで30万円以上の基準値を満たさなければなりません。

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