今、不動産クラウドファンディングに投資をする個人投資家のほとんどが「利回りの高さ」に着目してファンドを選んでいるのではないでしょうか。そんな現状に対し、不動産クラウドファンディングのリアルを知り尽くす松井晴彦さん(グローシップ・パートナーズ株式会社 代表取締役)が警鐘を鳴らします。

【松井晴彦さんプロフィール】
斬新なビジネスモデルをITで実現化するコンサルティングファームである、グローシップ・パートナーズ株式会社の代表取締役。同社はこれまで約30の不動産クラウドファンディングの立ち上げ・運営を支援。Webサイトやシステムの構築も行う。松井さんご自身は、アンダーセン・コンサルティング(現:アクセンチュア)でコンサルティングに従事した後、2社の代表取締役を歴任して現職。30年以上のコンサル経験を持つ。

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目次

  1. 不動産クラウドファンディングも対面販売も本質は変わらない
  2. 不動産クラウドファンディングの悪徳業者を見抜くポイント
  3. 不動産クラウドファンディング選びではセキュリティも重要

不動産クラウドファンディングも対面販売も本質は変わらない

「不動産クラウドファンディングは高利回りだけで選ぶな」グローシップ・パートナーズ代表・松井晴彦さんに聞く(前編)
(画像=YANUSY編集部)

-最近は、若い世代の投資家を中心に不動産クラウドファンディングが人気を集めます。これから先、不動産クラウドファンディングが投資商品として定着したり、さらなる発展をしたりするうえで、大きな壁があるとしたら何でしょうか。

これは不動産クラウドファンディングに限りませんが、新しい投資商品は市場が大きくなる過程で問題が表面化しやすいものです。今、不動産クラウドファンディングの市場はどんどん大きくなっていますが、それとともにリスクも大きくなっている可能性があります。

これは、同じ不動産をテーマにしたREITを例にするとわかりやすいでしょう。REIT という仕組みが国内で浸透する過程で、質の悪い物件を対象にした事業者もいました。端的にいうと、不動産クラウドファンディングで詐欺まがいの物件が投資対象になる可能性もゼロではありません。

こういった背景を考えると今後、不動産クラウドファンディングが発展していくためには、投資家に信頼してもらえる市場をつくっていく、あるいは、信頼性のある事業者しか参入できないようにしていくというのが重要になってくると思います。

-利回りの高さに目を奪われがちですが、事業者の信頼性を見極めることが大事ということですね。個人投資家に対して具体的な注意点はありますか。

不動産クラウドファンディングに投資をされる方は、契約前に「事業者の継続性・信頼性」と「商品の毀損リスク」を確認することをおすすめします。

「事業者の継続性・信頼性」とは、その事業者に歴史があるか、不動産クラウドファンディング以外の本業で実績があるか、といったことです。この2つが欠けている事業者のファンドへの投資は慎重になったほうがいいかもしれませんね。

たとえば、歴史があり上場している不動産会社が、不動産クラウドファンディングで個人投資家の皆さんにご迷惑をかけてしまったら、会社の存続自体が脅かされます。そのため、継続性と信頼性のある事業者は、「適正な中身のファンドを適正な利回りで運営していこう」と考える可能性が高いのではないでしょうか。

-インターネットで販売する不動産クラウドファンディングも、対面で販売する不動産投資の個別物件も本質は変わらないということですね。

そのとおりです。だから、運営会社そのものの信頼性や本業を評価することが大切なんですね。あわせて、募集しているファンドの物件の立地や築年数などの中身を調べることも重要です。

たとえば、空室リスクが高かったり、売却しづらかったりするような価値が疑われるファンドが高利回りで募集していれば、「毀損リスクがあるのでは?」と疑ったほうがよいかもしれません。

-不動産クラウドファンディングは利回りの高さで比較されがちですが、毀損リスクを考えると、低利回りでも安全性の高いファンドに投資していくという意識も大切なんですね。

不動産クラウドファンディングの悪徳業者を見抜くポイント

-これまで計30もの不動産クラウドファンディングの立ち上げ・運営を支援されてきた松井社長のもとには、この市場の様々な情報が集まってくると思います。市場を見渡してみて、「もしかしたら毀損リスクがあるかもしれない」という事業者もいますか。

正直、いますね。たとえば、不動産クラウドファンディングの市場のなかでも、極端に高い利回りを設定している事業者がいます。高利回り自体はよいのですが、問題は公式サイト上で、リスクや物件詳細がほとんど説明されていない。気になって会社自体を調べてみたのですが、実態がよくわからない。

もちろん、それだけで悪徳事業者とは断定できませんが、「事業実態がわからない」「利回りが高い」「商品の説明がほとんどない」という3つのポイントにあてはまる事業者は、もし私が個人投資家だったら怖くてしょうがないですね。

ほかの事業者の例でも、一般的には売却が難しいような物件を運用する毀損リスクの高いファンドを数多く扱っている事業者もいます。ちなみに、この事業者は社歴があまりありません。

-これらの事業者は、さきほど松井社長がおっしゃっていた「事業者の継続性・信頼性」の部分で弱いということですね。私たちの印象でも、リスクの高い物件を見栄えよく見せることで、人気を集める不動産クラウドファンディングの事業者がいます。

不動産投資は悪い方向に行ってしまうと、情報弱者が価値の低い物件を最後につかまされるババ抜きビジネスになってしまう。そのために悪徳事業者が不動産クラウドファンディングを使うという流れにはなってほしくありません。

不動産クラウドファンディング選びではセキュリティも重要

-このほかにも、個人投資家が不動産クラウドファンディングを選ぶ際、気をつけたほうがよいポイントはありますか。

これは、個人投資家のほとんどが気にされていないと思いますが、不動産クラウドファンディングの公式サイトやシステムのセキュリティも重要です。これは不動産クラウドファンディングの支援をしていると実感します。

一例では、ある不動産クラウドファンディングの事業者から、「自社のシステムに脆弱性が見つかった」と相談されたことがあります。外部からハッキングされたと想定して、試しに自社の不動産クラウドファンディングのシステムからデータを抜きとろうとテストしたら、とれてしまったというんですね。それで弊社に相談が来て、すぐにシステムの載せ替えを実行しました。

不動産クラウドファンディングの公式サイトやシステムは、事業者が大企業、中小企業問わず、海外から攻撃を受けるのが当たり前の時代になっています。脆弱性のある不動産クラウドファンディングを選んでしまうと、投資家の個人情報などが抜き取られてしまうリスクがあります。

-公式サイトやシステムのセキュリティを気にする個人投資家はごく少数ですね。

同じような観点では、システムの処理速度も重要です。最近では、不動産クラウドファンディングは人気が高く、募集開始直後に募集価格に達するファンドも珍しくありません。個人投資家からすると、アクセスが集中してシステムに不備があると「本来これくらい儲かったのに」ということになりかねません。

このようなことを踏まえると、システムの堅牢性と処理速度が高い不動産クラウドファンディングを選ぶことも大事な視点です。

-使っていて、不具合があったり、処理速度が安定しなかったりする不動産クラウドファンディングは利用を避けたほうがよさそうですね。

現実的に、個人投資家がシステムの堅牢性と処理速度を確認するのは大変ですが、やはり本業で信頼性のある事業者は、セキュリティにそれなりの投資をしている可能性が高いのではないでしょうか。

(提供:YANUSY

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