◉意外な人気投資商品① 漢方薬
ここまででまとめたように、中国人の個人投資の手段はその金銭余力に対して極めて少ない状況です。
そのため、資金の行く場をなくした個人投資家達は新たな投資対象を求めるようになりました。そしてその中には、“漢方薬”や“茅台酒”など投資商品としては一見風変わりなものも含まれます。
例えば、漢方薬の中でも極めて希少な 冬虫夏草 の価格は、2010年から2倍に跳ね上がっています。最高級品は1ポンド(約453g)当たり1万1500ドル(現在約117万円)の値がつくまでになりました。また30年という期間で見ると冬虫夏草の価値は3500倍にまで上がっています。そのため、東虫夏草のことを「ソフトゴールド」と呼ぶ人もいます。
なお冬虫夏草は標高が高い地域で成長するのですが、近頃の市場のニーズ拡大に合わせて採集頻度も高くなりました。まさに「ゴールドラッシュ」の様相です。
しかし、漢方薬投資全般の注意点ですが、特に冬虫夏草はリスクが非常に大きい商品です。
まず薬剤の真偽を見分けることが至難です。投資家達は薬剤については詳しくないので、偽りや質が低いものを買ってしまう例が多くあります。
また、通常の小売市場での回収価格が非常に低く、投資商品としての価格の三分の一に過ぎないようです。
専門家の中には「普段冬虫夏草を買う人は自分で食べるかプレゼントとして他人に送ることが一般的です。もし投資手段の一つと考えられているなら、リスクを負う可能性が大きいので、お薦めではありません。」と述べる人もいます。
◉意外な人気投資商品② 茅台酒
漢方薬以外に去年中国では茅台(マオタイ)酒ブームも起りました。茅台酒はウイスキー、ブランデーと並ぶ三大蒸留酒の1つで、中国では政府主催の宴会用のお酒に指定されています。そのため中国の国酒とも呼ばれ、最も高級な蒸留酒ブランドの一つです。
50年前、茅台酒は1瓶が一元(現在約16円62銭)でした。現在、市場で販売されている茅台酒は1瓶が1500元(約24930円)になります。さらに、2010年のオークションでは、58年物の五星ブランドの茅台酒が112万元(約1861万4400円)で落札されました。
このような国内の価格の高騰が理由で、中国人は国外から茅台酒を買い戻すことを始めています。国外はまだ茅台酒ブームが波及されてないので、正常な価格で売られているためです。国外での出張や旅行の際に、茅台酒を大量に買い込んで帰国する人が多くなっています。
なお、最近話題になった中国の金の現物ブームも、中国人の投資手段が極めて乏しいことに起因していると言われています。筆者の知人にも金の現物を買った人が多くいました。
次回の記事では実際に購入者の話を伺いながら、「なぜ金の価格が爆落したのに、中国人の個人投資家による金購入が急増したのか」というテーマで記事をお届けしたいと思います。
BY S.S