本記事は、⼩倉広氏の著書『常勝チームの鬼100則』(明日香出版社)の中から一部を抜粋・編集しています。
SMARTの法則で目標を立てる
たとえばダイエットの目標を立てるときに「なんとなく痩せるぞ」と曖昧な目標を立てる人はいないはず。
必ず「体重を減らすぞ」や「体脂肪率を減らすぞ」とSpecific(具体的)に指標を明確にするはずです。
同様に「何キロでもいいから痩せるぞ」とする人もおそらくいないはず。
「5キロ」減らそう、とか体脂肪率「3%」改善するぞ、など目標を数値化することでしょう。これがMeasurable(数値化)という目標設定の2つ目の基本ルールです。
目標設定3つ目の法則はAgreed upon(合意している)こと。
先ほどの目標数値が、面倒見のいいパートナーが勝手に立てたものであり、肝心の本人がまったく合意していない目標だったとしたら、そのダイエットは成功するとは思えません。必ず本人が目標に合意していること。これが3つ目の法則です。
そして4つ目の法則はRealistic(現実的)であること。
目標が「3カ月で30キロ痩せる!」とした場合、それは非現実的であり健康にも悪いもの。
そうではなく現実的に達成可能な目標を設定すべきなのです。
最後の5つ目はTimely(期日が明確)であること。
「いつの日か10キロ痩せればいいなぁ」では目標になりません。3カ月後なのか半年後か。
明確に期日を設定し、それを追いかけてこそ初めて目標になりえるのです。
5つの頭文字を合わせてSMARTの法則。英語でスマートとは「痩せている」という意味よりは、「賢い・頭が良い」という意味になります。
この5つの法則を守って「賢い」目標設定を。
そしてその目標をもとにして、的確に「計画→実行→検証→仕組み化」を行うのです。
リーダーが行うべきチームの基本サイクル。
その基本は「賢い」目標設定にあるのです。
月に一度は業績を〆 る
あなたのチームでは、業績の〆は半期単位でしょうか、それとも通期でしょうか?
中には外資系企業のように四半期で〆る会社もずいぶんと増えてきたようです。
あなたのチームの業績の〆が四半期であろうが、半期であろうが、それとは別に、月次でもぜひ業績を〆てみてください。
計画→実行→検証→仕組み化のサイクルは、あまりに長いスパンでは修正が追いつきません。大きな修正は四半期や半期で行うにしても、小さな修正は月次で行わなければならないはず。そのためにも月次で一度業績を〆ることは大変重要なのです。
私がかつてお世話になっていたリクルート社では、四半期を1年のごとく基本の業績管理スパンとしながらも、それから独立した形で月次の目標を設定し、その達成を追いかけていました。
もちろん完全に独立したわけではなく四半期と連動しているのですが、たとえば初月と2カ月目で数字がショートした場合、その差額をローリングで乗せるのではなく1カ月で十分達成可能な数字を別途3カ月目に目標として設定するのです。
普通の考えであれば、初月と2カ月目のショート分を乗せなくては四半期は達成できない、未達成を前提とした目標設定はおかしい、となるはずです。
しかし、そんな正論を振りかざすよりは1万円でも多く売上を上げてもらうために、適正な3カ月目の月次目標を設定するほうが理にかなっています。
ショート分を追いかけるのは、それとは別に四半期目標としてきちんと別な指標で残っているのですから、それを追いかければいいのです。
いきなり42.195キロメートルのマラソンのゴールを目指すのではなく、途中途中でマイルストーンを設定してそれを追わせてあげる。その意味でも月次の目標は重要です。
長期と短期の両睨みで目標を設定してみてください。
目標は3カ月単位で修正する
公式な業績管理のスパンは通常、四半期か半期か通期のいずれかのはず。
しかしあなたのチームがどのスパンで動こうとも、世の中の変化のスピードは速まる一方です。
その意味では、公式な業績目標の修正は四半期単位の3カ月ごとに行うのが適切です。
目標の設定は、以下の要素をトータルに加味して行うもの。外部環境として、自チームに影響を及ぼしうるマクロな「経済動向」「法規制」「技術トレンド」などの変化を加味し、直接的には「競合動向」を見、さらには、「顧客動向」をもとに決定します。と同時に外部だけでなく内部の組織の要素も加味しなければなりません。
「人・物・金・情報」といわれる資源の状態と、自社の組織文化やコミュニケーションの状態。これらをトータルに勘案しながら目標設定を行うのです。
つまりは今掲げた要素が1つでも動いていくならば目標も見直しが必要、ということ。
これだけの多岐にわたる要素が3カ月もの長い間に1つも変わらないことはあり得ません。
3カ月に1回というサイクルは、公式な業績目標を修正するスパンとしては最低限必要な回数であるといえるのではないでしょうか。
それに加え、前四半期の目標達成状況、すなわち通期における目標と実績のかい離を埋める必要があります。これらを素早く加味して適切な目標を設定していくのがリーダーの役割であるのです。
高過ぎる目標はメンバーのやる気をなくし、あきらめを生みます。逆に易し過ぎる目標は成長のチャンスを奪い、組織を弱くします。
全力でジャンプし、ぎりぎり手が届くか届かないかの高さが適切な目標水準です。
ぜひ3カ月に一度、手が届くか届かないかの絶妙な水準に目標を修正していってみてください。
”経営に心理学を” 株式会社小倉広事務 代表取締役
青山学院大学卒業後、新卒でリクルート入社。就職情報誌の事業企画、商品企画、営業企画、編集部、組織人事コンサルティング室課長など主に企画畑で12年過ごす。
その後、現東証プライム上場のソースネクスト常務取締役、コンサルティング会社代表取締役などを経て現職。自らの失敗を赤裸々に語る体験談と心理学の知見に裏打ちされた論理的内容、さらにはオンライン研修を知り尽くした飽きさせない腹落ちのカリキュラムで人気を博し、年300回を越える講演、研修に登壇。「一年先まで予約が埋まっている」講師として依頼が絶えない。
また著作46冊、累計発行部数100万部超のビジネス書作家であり、同時に心理カウンセラー・セラピストとして経営者、管理職、個人事業主を中心に個人面接を行っている。
東京公認心理師協会正会員、日本アドラー心理学会正会員、日本ゲシュタルト療法学会会員
おもな著書に『コーチングよりも大切な カウンセリングの技術』(日本経済新聞出版)、『アルフレッド・アドラー 人生に革命が起きる100の言葉』(ダイヤモンド社)、『もしアドラーが上司だったら』(プレジデント社)、『あたりまえだけどなかなかできない 33歳からのルール』(明日香出版社)。※画像をクリックするとAmazonに飛びます