本記事は、⼩倉広氏の著書『常勝チームの鬼100則』(明日香出版社)の中から一部を抜粋・編集しています。

若手,ビジネス,社員
(画像=One/stock.adobe.com)

ナンバー2には若手を抜擢する

ナンバー2に必要な資質は、チームの目標達成、ビジョン実現へ良い影響を与えるリーダーシップです。要件を満たすのが仮に若手であるならば、ちゅうちょなく彼をナンバー2に抜擢しましょう。

多くの場合、チームでは年功序列的に古株がリーダーシップを発揮しているもの。そしてチームのリーダーであるあなたもそれに追従してしまいがちです。

しかし、最も大切なのは、原則を曲げないこと。

ナンバー2に適する人がいるならば、年齢や社歴にとらわれず、ナンバー2として抜擢することが大切です。

ナンバー2に求められる資質はリーダーと同じ。チームに矛盾や無理無茶はつきものであり、それを解消していくのがリーダーとナンバー2の役割だからです。

ならば、リーダーはナンバー2に絶対に遠慮をしてはいけない。ナンバー2へ遠慮したつけ・・は、その下のメンバーたちへのしわ寄せとなってしまうからです。

そのためにはチームの利益を自分の利益よりも優先する利他の心を持つ人をナンバー2にすることです。これでリーダーが遠慮することなくナンバー2に高い要望をすることができます。

逆にそうでないならばリーダーのエネルギーの大半はビジョンの達成ではなくナンバー2との人間関係に費やされてしまいます。チームに対して最も影響を与えるのはリーダーとナンバー2です。ならばその2人が遠慮をしたり喧嘩をしている場合じゃない。阿吽あうんの呼吸で互いを認め合い、頼りにし合う最高の関係でなくてはならないのです。

ただし年長者への配慮も忘れてはなりません。リーダーやナンバー2はただの役割。決してその2人が偉いわけではありません。むしろリーダーこそ謙虚であれ。年長者のメンバーがいたならば、人生の先輩である彼らを敬いきちんと配慮をすることは、役割とは別な、人間として当然の行為として行わなければならないのです。

必要であればナンバー2に若手を抜擢せよ。リーダーとナンバー2が一体となるためのセオリーです。

ナンバー2にはプレイヤーとしても高い目標達成を求める

よほどの大企業でもない限り、チームのナンバー2はプレイヤーも兼務です。そのとき彼にマネジメントを中心に求めるか、プレイヤーとして実績を上げることを求めるか。

リーダーの皆さんは迷うところだと思います。

答えは簡単、その両方。つまりプレイヤーとしても高い達成度を求めながら、マネジメントも要望すべきなのです。

自分ができないことをメンバーに求めることはできません。プレイヤーとして軽々と高い業績を成し遂げることのできるリーダーにこそメンバーはついていくもの。そのためにもナンバー2は、プレイヤーとしても秀でていなくてはならないのです。

もしもナンバー2がマネジメントに長けていても、プレイヤーとして低い業績を続けていたとしたならば、おそらくメンバーは「あんたに言われたくないよ」とばかりに彼の言い分を聞いてくれなくなってしまうでしょう。

そもそもナンバー2に必要な資質は利己ではなく利他。自分のエゴを捨てチームのために貢献する人こそがナンバー2になるのです。もし彼が目標の未達成を続けるとしたならば……。それはチームに献身している人ではない。チームの数字に大きな穴をあけ、足りない数字を誰かに依存する、チームに迷惑をかける人でしかないのです。

リーダーたるあなたは、ナンバー2に負担をかけて申し訳ない、と心の中で感謝しながらも遠慮会釈なく彼に高い達成を求めなければなりません。そしてその期待に応えつつ、さらに付加的にマネジメントへ注力しメンバーを鼓舞し続ける人こそ本物のナンバー2なのです。

「しかしそれでは不公平だ。ナンバー2にはマネジメント分の手当がついていないから可哀そうではないか」というリーダーがたまにいます。

しかし真のリーダーとは手当のために働く人ではありません。手当などに関わらず自らの使命としてメンバーへ尽くすことがリーダーとナンバー2に課せられた役割なのです。

ナンバー2にはプレイヤーとしても達成を求める。彼の大変さを知るだけに、リーダーにとっては辛い役割です。

ナンバー2へ厳しく求め、たっぷり時間をかける〝えこひいき〞をする

不良の巣窟であった伏見工業高校ラグビー部を日本一へ育て上げた不世出の名監督・山口良治氏は、チームにかける時間の大半をキャプテンと共に過ごしたといいます。

チームメンバー全員を平等に育てることは不可能です。そうではなく、自分の分身となりチームの連結ピンとなるナンバー2にこそたっぷりと時間をかけるべき。

私はそれを「えこひいき」と呼び、チームづくりの鉄則としてコンサルティングの顧客へ指導しています。

私が提唱する「えこひいき」とは世間一般のそれとは異なり、人一倍厳しく接する、ということです。他のメンバーが10を達成すればほめられることを、10ではほめず20まで求めていく。他メンバーが見ていて気の毒に思うほどナンバー2に対して高い水準を求め、それを達成させていく。そして陰で他者の2倍以上の愛情を注ぐのです。

人は厳しさだけでは頑張れない。シーソーの片側に厳しさという高い要望を置くならば、その反対側にはそれと同等かそれ以上の愛情をどっしりと置かなければなりません。

そこで注意しなければならないのは「自分勝手」な愛情を注がないこと。

ナンバー2の価値観はあなたとは異なります。あなたがされて嬉しいことがその人にとって嬉しいこととは限らないのです。「相手のために」はえてして自分勝手になってしまうもの。そうではなく「相手の立場に立って」相手が喜ぶことをするのが本当の思いやりです。

そうしてナンバー2があなたの分身になってくれたとしたならば……。

そのときこそ、チームの勢いに加速度がつく瞬間です。これまで1つのエンジンで動いていた車が2つの強力なエンジンを得て、ぐいぐいと前へ進み始めることでしょう。ナンバー2というエンジンは車のシャーシーも兼ねています。先に述べた連結ピンの役割でリーダーとメンバーをガッシリとつなぎと止める。そしてエンジンのパワーをしっかりとメンバーへと駆動力として伝えるのです。

頼りになるナンバー2を育てるため、あなたがすべきは「えこひいき」なのです。

ナンバー2とリーダーこそ毎週1 on 1を実施する

半導体メーカーのインテル社、中興の祖であるアンドリュー・グローブが始めたといわれている1 on 1ミーティング。日本ではヤフー社が先鞭をつけ2010年から始めて大きな成果をあげています。

IT業界から始まったこのムーブメントは今や業種を問わず、メーカー、商社、サービス業とあらゆる産業で「心理的安全性」を高め、エンゲージメントを高めるための有効な技法として活用されています。

この1 on 1ミーティング。本来は管理職であるリーダーがメンバー全員と定期的に行うものですが、実際にそれがきちんと習慣化されている企業はまだまだ限られているようです。ましてや、本来の1 on 1の頻度である毎週欠かさず実施している企業は、ヤフー社などごく一部にとどまり、月に1回程度しか実施できていない企業が多いようです。

この1 on 1、きちんと運用すれば大変有効なツールです。であればこそ、チームの要であるリーダーとナンバー2だけは、ぜひ毎週という高い頻度で優先順位を上げて実行していただきたいのです。

1 on 1の実施において大切なことはそれが100%「メンバーのための時間」であることです。つまり、議題やその雰囲気などはすべてメンバー、この場合はナンバー2が決めること。決してリーダーがナンバー2に確認したいことを根掘り葉掘り聞く場ではありません。

リーダーが発すべき第一声は「今日はどんなことを話したいですか?」というもの。ナンバー2がリーダーに知っておいてほしいこと、リーダーに助言をもらいたいこと、リーダーの考えを知りたいことなど、すべてはナンバー2のために時間を使うのです。

リーダーに求められるのはディスカッション(討議)ではなくダイアログ(対話)の姿勢。つまり、答えを出すことや助言を急がずに、ただただナンバー2の気持ちをわかろうとする姿勢です。

職場の問題解決のためには信頼関係という土台が必要です。1 on 1は問題解決の場ではなく土台づくりの場。その目的を忘れずに運用すれば必ずやプラスに働くことでしょう。

=常勝チームの鬼100則
⼩倉広
公認心理師
”経営に心理学を” 株式会社小倉広事務所 代表取締役

青山学院大学卒業後、新卒でリクルート入社。就職情報誌の事業企画、商品企画、営業企画、編集部、組織人事コンサルティング室課長など主に企画畑で12年過ごす。
その後、現東証プライム上場のソースネクスト常務取締役、コンサルティング会社代表取締役などを経て現職。自らの失敗を赤裸々に語る体験談と心理学の知見に裏打ちされた論理的内容、さらにはオンライン研修を知り尽くした飽きさせない腹落ちのカリキュラムで人気を博し、年300回を越える講演、研修に登壇。「一年先まで予約が埋まっている」講師として依頼が絶えない。
また著作46冊、累計発行部数100万部超のビジネス書作家であり、同時に心理カウンセラー・セラピストとして経営者、管理職、個人事業主を中心に個人面接を行っている。

東京公認心理師協会正会員、日本アドラー心理学会正会員、日本ゲシュタルト療法学会会員

おもな著書に『コーチングよりも大切な カウンセリングの技術』(日本経済新聞出版)、『アルフレッド・アドラー 人生に革命が起きる100の言葉』(ダイヤモンド社)、『もしアドラーが上司だったら』(プレジデント社)、『あたりまえだけどなかなかできない 33歳からのルール』(明日香出版社)。

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