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広がるエボラ出血熱のリスク

西アフリカでのパンデミックは、欧州と北米に飛び火しました。10月23日付の外務省「海外安全ホームページ」によると、西アフリカ3カ国(ギニア・リベリア・シエラレオネ)でのエボラ出血熱症例は、22日付のWHOレポートでは死者4,877人、感染者数は9,936人に上り、スペインやアメリカで医療関係者の二次感染が報告されています。

エボラウイルスが襲った西アフリカの3カ国は、金やダイヤモンドが採掘されており、EUを中心とした貿易で経済成長が10%を超えますが、道路・水道・電気といったインフラが未整備であり、衛生環境が甚だしく悪いです。そのため、感染が拡大し、その防御が不可能になっています。こうした国々との貿易では、ウイルス感染者が潜伏期間を保ったまま、国外に流出することで二次感染が広がっていきます。つまり、治療法が限られている現段階では、この「一次感染リスク」「二次感染リスク」を食い止める手だては限定的です。


エボラ熱感染者の衝撃的な治療金額

エボラ熱の脅威への各国政府当局の対策が報道されるなか、一患者の治療費に焦点が当たることは少ないですが、シカゴ・トリビューン紙(2014年10月7日)は、衝撃的なレポートを掲載しました。

アメリカで最初のエボラ出血熱の発症者となった、トーマス・ダンカン氏は、テキサス州ダラスで9月28日に隔離治療を開始、10月8日に終了しました。治療内容は、人工呼吸器、試験薬投与、腎臓透析から、流体交換、輸血、そして血圧維持薬まで幅広いものでした。さらに、エボラ汚染廃棄物の処理、看護師を完全防備するための機器と、そのセキュリティなどにも及びます。ワシントンの保険コンサルティング会社の最高経営責任者のダン・メンデルセン氏が、その治療費用を推定したところ、金額は1時間に1,000ドル、1日当たり18,000ドル(約 190万円)に上ります。そして、たった10日間の治療総額は、50万ドル(約5,300万円)に達すると述べました。そして、この記事が掲載された翌日、健康保険に加入していないダンカン氏は亡くなりました。


保険会社が「正常」なら、免責条項

10月22日のロイターは、英米の保険会社はリスク回避として、エボラ熱を普通保険約款の適用除外としたと報じました。

米保険大手エースは22日、企業契約で加入している従業員向けの保険について、ケースバイケースで、補償範囲からエボラ熱を除外していると発表。この他にも、急遽、約款改正を行う保険会社が続出中です。

一方で、東京海上日動火災保険〈8751〉では、エボラ出血熱での治療や死亡でも、海外旅行保険の適用範囲と約款に提示しています。ただし、帰国日を含め30日以内の場合に限りますが、これは日本の他の損害保険会社でも同じ扱いであって、現在のところ、免責条項に移行しようとする日本の保険会社はありません。

ここから、日本と英米の保険会社の違いをよく知ることができます。健康保険制度が根底にある日本では、補償外とはならないのに対し、アメリカは自由診療の国であり、民間の保険や組合健康保険、あるいはキリスト教徒の慈善保険などに加入していなければ、医療費が捻出できずに治療を受けられない可能性が高いです。

日本の場合は、生損保とも、たとえ免責条項があったとしても、適用せずに保険金の支払いを行うケースが多いです。現に2014年10月3日、生命保険協会は、「噴火による死亡、怪我」は免責条項としてあるにも関わらず、御嶽山噴火火山関連の保険金支払いを宣言しました。

では、今後の日本の保険業界は、度重なる震災やパンデミックに対応するでしょうか? 現在のところはYESでしょう。日本の保険政策には厚生労働省、金融庁、財務省などが携わっており、保険業界は様々な監視体制が整っているため、契約者が心配することはないと考えられます。

(ZUU online)

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