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米国・ニューヨーク市は23日、西アフリカでエボラ出血熱患者の治療にあたっていた医師が、エボラ出血熱の検査に陽性反応を示したことを発表。すでにエボラ出血熱による死亡者を出し、二次感染者も発生している米国では関心が高まっている。

これから米経済は、エボラ出血熱によってどのような影響を受けるのか。ロイヤルバンク・オブ・スコットランド(RBS)のチーフエコノミスト、ミッシェル・ギラード氏は、「一般論として米国の経済は力強い。消費は底堅いし、住宅市場の回復も始まっている」として、現在のところはエボラ出血熱の悪影響がほとんど見られないことを強調した。

有力経済サイト「ビジネス・インサイダー」では、今回のエボラ・パニックで世界の経済成長(国内総生産、GDPの総計)が最大0.4%押し下げられると推計している。多くの感染者を出して経済に大打撃を受けた西アフリカ諸国を除くと、まだ実際のインパクトは大きくないが、米経済への潜在的な影響は小さくない。

こうしたなか、米国初のエボラによる死者と二人の看護師の感染者(後に全快)を出したテキサス州のダラスでは、伝染を怖れた人々が公共の場所を避けたため、経済活動が鈍化したと報告されている。

消費者や観光客の動向をモニターする米ゲスト・メトリックス社によると、エボラ出血熱で死亡したトーマス・ダンカン氏が9月25日に病院に救急搬送された次の週、ダラス市のレストランでのディナーの件数が前年同期比2%低下した。その次の週はさらに下がり、5%減となった。一方、バーやクラブの客数は前年比11%も落ち込み、ホテルの宿泊客数は7%減った。(その後、ダラスはエボラ熱の封じ込めに成功した。)ゲスト・メトリックス社は、「ビジネス客がダラスへの出張をキャンセルしたり、延期したと思われる」と分析している。

注目されるのは同市でのアルコール飲料消費が、10月の最初の2週間、前年比10%減少したことだ。伝染病の恐怖で、飲む気になれなかったのかも知れない。エボラが地元に風評被害を生み、消費心理を冷やすことを示唆している。

10月21日に発表された米ギャラップ社の世論調査によれば、経済や「イスラム国」などと並び、エボラ出血熱が米国民の十大関心事の一つに挙げられた。米国人は過敏になりつつある。万が一、ニューヨークやロサンゼルスなどの大都市で二次感染が確認されたら、どうなるか。ダラスの例に見られるように、風評が悪化し、全米規模で経済活動に影響が出るのは避けられないだろう。

ダラス市の風評被害は、日本でエボラ出血熱の感染が確認された場合、どのような経路で地元経済に影響が及ぶのかを推測する上で貴重なデータである。国や自治体、各企業が米国の例を教訓に、エボラ出血熱の経済に対する悪影響を最小化する対策を早急に立てることが望まれる。

(在米ジャーナリスト 岩田太郎)

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