経営者にとって廃業はつらい選択肢だが、実は再チャレンジにつなげる方法もある。手元に資金やノウハウを残せば、新たなビジネスで成功できるかもしれない。本記事では、廃業のメリットや考えるべきタイミング、前向きな廃業にするポイントを解説する。
目次
廃業はなぜつらい?きれいに会社をたたむことが難しい理由
そもそも、なぜ廃業には「つらい」などのマイナスイメージがあるのだろうか。まずは、きれいに会社をたたむことが難しい理由から見ていこう。
廃業にも費用がかかる
廃業は現金がない企業でもできると思われがちだが、実は以下の費用がかかる。
上記の通り、株式会社の廃業では少なくとも10万円弱の費用が発生する。さらに手続きを外部に依頼する場合は、士業への報酬だけで数十万円を超えることも珍しくない。
設備や不動産の処分費用がかかることも
設備や不動産の処分費用も、廃業時にかかる大きなコストだ。資産売却をする方法もあるが、失敗したビジネスの設備・不動産は資産価値が下落しやすく、買い手を見つけられないケースが珍しくない。
特に設備を処分したり、不動産を更地にしたりする必要がある場合は、手元に現金が残ればいいほうである。
在庫がたたき売り価格になりやすい
廃業時に処分する資産の中でも、特に在庫はたたき売りの状態になりやすい。保管用の不動産(倉庫など)を売却する場合は、早急にすべての在庫を処分する必要があるためだ。
在庫買取業者を利用する手もあるが、この場合でも販売実績が多く、信頼性の高い業者を探すコストが生じてしまう。
従業員との雇用関係を解消しなければならない
廃業をする場合は、従業員との雇用関係も解消しなければならない。従業員の生活への影響は避けられないため、これは精神的な負担が大きいプロセスだろう。
同じ地域で再チャレンジを目指す場合は、かつての従業員が取引先の担当者になるような可能性もある。また、強引な解雇は法的トラブルに発展するため、従業員にも配慮する形で廃業準備を進めることが重要だ。
規定がある場合は退職金が発生する
就業規則などに規定がある場合は、「普通解雇・整理解雇・定年退職・会社都合退職」のいずれでも原則として退職金を支給しなければならない。1人あたりの支給額が数百万円でも、全従業員を解雇すると総額で1億円を超えることもある。
また、役員に対しても退職金は発生するため(※規定がある場合)、廃業前には就業規則を隅々まで確認しておきたい。