そもそもIT化は必要なのか?メリット・デメリットから見る必要性

デジタル化の波が押し寄せているからと言って、そもそも地方企業にIT化は必要なのだろうか。その点を整理するために、まずはIT化を進めるメリット・デメリットを確認してみよう。

メリット・デメリット

IT化の最も大きなメリットは、さまざまな業務を改善できる点にある。例えば、顧客データやアンケート結果をデータ化すると、書類を作成したり整理したりする手間を省けるため、余った労働力をほかに回せるだろう。また、検索によって必要な情報を簡単に得られる点も、IT化ならではのメリットと言える。

しかし、これらのメリットは十分な知識を備えていることが前提条件だ。導入すべきツールやシステムを誤ったり、使う側にうまく活用する知識・スキルがなかったりすると、IT化がかえって負担になることもある。

つまり、業種や業務内容、社内のリテラシーによっては、必ずしもIT化が正解になるわけではない。既存システムとの組み合わせもポイントになるため、IT化を進める範囲は慎重に考える必要があるだろう。

低コストで取り組めるIT化もある?地方企業が優先したい対策

資金や人材が限られた地方企業は、取り組みやすいところからIT化を進めることが重要だ。ここからは低コストで始められる方法に絞って、地方企業が優先したい対策を紹介する。

ペーパーレスを加速させるクラウド化

古い慣習をすべて排除する必要はないが、紙文化はスムーズに脱却しやすい分野だ。請求書や発注書、従業員からの提案書、顧客情報などをデータ化すれば、業務効率化だけではなくコスト削減(印刷代や紙代)にもつながる。

ペーパーレスを加速させる方法としては、クラウド化が有効である。クラウド化とは、ネット上のサーバーに文書データなどを保存する方法であり、近年では無料で利用できるクラウドサービスも登場している。

有料サービスでは月々のコストがかかるものの、自前でサーバーを買うよりは負担が少ない。社内でのデータ共有も容易になるため、参照する機会が多い資料や使用頻度が少ない書類については、クラウド上への保存を検討しよう。

企業文化を変えるための社内教育

今すぐにデジタル技術の必要性がなくても、将来的にはあらゆる業種でIT化が進んでいくと考えられる。その波が全国的に広がれば、IT化に取り組んでいない企業はたちまち競争力を失ってしまう。

このような状況にならないために、IT化に向けては長い目で社内教育をすることが重要だ。簡単な内容であっても、従業員がデジタル技術のメリットや有用性に気づけば、自発的に知識をとり入れるかもしれない。

また、経営陣の知識が浅いと、優秀な人材を見極められない恐れがある。したがって、IT化は現場の従業員に任せるだけではなく、企業上層部が正しい知識をつけることも必要だろう。

アウトソーシングによるIT人材の確保

IT人材の教育には限界がある。教育をする側にも高いリテラシーが求められるため、人材が限られた地方企業にとって内制化は現実的ではない。

そのため、どうしてもデジタル技術が必要になった分野については、アウトソーシングによる人材確保も検討したい。必要な業務のみを外部委託したり、社内教育だけを外注したりなど、アウトソーシングにはさまざまな活用方法がある。

コールセンターなどの簡単な業務をアウトソーシングする場合、費用の目安は初期費用で5万円程度、月額費用が5万円程度と言われる(※規模や業務内容による)。マニュアルを自社で作成する必要はあるが、委託する範囲によってはコスト削減にもつながるため、内制化とアウトソーシングの両方を視野に入れよう。

オープンイノベーションを活用する

オープンイノベーションとは、高いデジタル技術をもつ企業から技術提供などを受け、ともにイノベーションの創出を目指す方法である。ITリテラシーや人材の不足に対応できるため、パートナーさえ見つかれば現実的な手段となるだろう。

主流な方法ではないが、最近では国内でもオープンイノベーションを活用する例が増えてきた。地域によってはオープンイノベーションを促進するために、独自の支援策を実施する自治体も見受けられる。