廃業後の生活:ネガティブな結果となったケース

生活資金に困窮する可能性

では、「廃業」がネガティブな結果となるのは、どのようなケースなのだろうか。

ひとつは、黒字経営だった企業を失った結果、その後の生活資金に窮することになってしまった場合だ。日本政策金融公庫総合研究所が2019年10月、廃業した企業の元経営者に対して実施した調査によると、「廃業時に問題になったこと」で最多(「特に問題になったことはなかった」を除く)の18.8%を占めたのが「生活するための収入がなくなった」だった。

直近1年間の収入が「300万円未満」の元経営者は、66.7%もいる。貯蓄高が「100万円未満」の割合は30.7%で、生活に「余裕がない」とした元経営者は40.2%に上った。公的年金や勤務収入などを十分に得られなければ、たちまち生活苦に陥ってしまいかねないのは明らかだ。

生きがいが失われる

もうひとつのケースは、経営という「やりがい」を失ってしまうことにある。先の調査の回答を見ても、事業を経営していたときの生きがいが低下した割合は39.6%だったのに対し、向上したのは16.4%に過ぎなかった。

これは、経営の苦しさという肩の荷が下りた解放感より、裁量があって充実感を得られる仕事がなくなった喪失感の方が大きいことを表している。

雇用がなくなれば地域経済全体にも悪影響

また、「廃業」によって元従業員の生活が立ちゆかなくなる事態に直面するケースもあるだろう。「2025年問題」では、650万人もの雇用が失われる可能性が指摘されている。総務省によると、2022年11月の完全失業者数は165万人で、実に4倍近くもの失業者があふれ出てしまうことに等しい。

事業を停止した企業の雇用が引き継がれなければ、地域経済全体にも甚大な悪影響を及ぼしてしまうだろう。

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廃業後の生活:ポジティブな結果となったケース

後継者を探して自らは相談役などに

「廃業」は取引先の企業にもダメージを与えかねず、地域に1軒しかない食料品店のような企業が消えてしまえば、集落全体のコミュニティーを維持することさえも困難になる。これらも含めたネガティブな事態を避けるためには、無形の人材や技術を含む貴重な経営資源を次世代の経営者に託すのが一番だ。

苦労はするもののしっかりと後継者を見つけることができ、自分は相談役などとしてその創業企業への貢献を続けることができれば、地域にとっても本人にとっても良い結果になったと言えるだろう。

定期収入が続く形となり、いきがいも失いにくい

相談役などとして経営に関わり続けることができれば、老後の生活資金にもなる定期収入を得られる。将来の生活の心配がなくなれば、心身の両方に良い影響をもたらすに違いない。自らが人生をかけてきた仕事という生きがいも失わずに済む。

経営者の引退は企業につきものだが、あらゆるステークホルダーにとってポジティブな未来を目指すなら、「廃業」はできるだけ回避したいものだ。

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