売上の向上ではなく「コストを減らす」という視点

利益を増やす方法は、何も売上を増やすばかりではない。売上高が変わらなくても、それにかかるコストが減れば、利益を増やすことができる。

売上とコストの関係を改めて考える

上記の「関連多角化」の分野では、既存の経営資源を効率良く活用できる事業展開を進めることで「1+1=3」を目指した。一方、これをコスト面に着目して適用すると、従来は「1+1」の結果として「2」のリターンを生んでいたところ、例えば「1+0.5」の結果として「2」のリターンをつくり出すことも期待できる。

これはA事業に加えてB事業を始めても、管理コストが2倍になるわけではないことに起因する。また、事業を拡大することで単位当たりのコストが下がる「規模の経済」も作用する。例えば、現有の生産設備の稼働率が上がったり、仕入れ量が増えることで取引先に対する交渉力が高まったりするため、コストが下がるのだ。

コスト削減計画の作り方は?

独立行政法人中小企業基盤整備機構が運営するウェブサイトによると、中小企業は大企業に比べ、材料費や人件費の高騰分をそのまま価格に転嫁することは難しい。細分化、単位化によってムダ・ムラ・ムリをあぶり出し、コストを削減して財務体質を改善しておくことが必要だ。

まずは、ABC(活動基準原価計算)でコストを把握する。これは、製品やサービスごとの間接コストを正確に計算するための方法だ。間接コストを活動単位に細分化し、どれだけのリソース(資源)を消費するかを明らかにする。

注意すべき点は、いきなり全ての企業活動に適用すると、処理に手間がかかって計画倒れになりやすいので、重要な分野から順に取り組むことだ。

次に、「ムダ(時間や労力、経費などを本来必要のないものに利用している状態)」「ムラ(ムダとムリがばらつきながら発生している状態)」「ムリ(目標達成に必要な時間や労力、経費などが不足している状態)」を洗い出し、完全に止めてしまうか、よりコストの小さな方法に乗り換えることを検討する。

もっとも、「コスト削減」は、経営者にとっては利益アップのための金科玉条であっても、従業員からすると、これまで当然だったものがなくなるのをストレスに思うことがある。数字面の効果を追うのは大切だが、それにより従業員間に不満がたまらないか注意しなければならない。

コンサルを使うべきか否か、も検討を

この点、地方の特に中小企業では外部人材に頼って上記の施策を進めることも考えられる。

確かに、自社内に人材が乏しい場合、外部コンサルタントの手を借りるのも有効に見えるが、コンサルティング業界は都市部を中心に発展しており、最先端の事例について、地方では事例が少ないことがある。

その意味で、安易に外部人材を活用しても、効果が薄い場合もある。自社が検討している分野に本当に詳しい専門家がいるのか、入念に調べたいところだ。