黒字でも廃業せざるを得ない経営者がいる。創業企業を廃業することは、経営者にとって重い決断だ。廃業せざるを得ないという状況はなぜ起きているのか、その理由について解説する。また、廃業にかかる多額のコストの問題や、廃業を回避するための選択肢もあわせて紹介する。
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黒字かつ資産超過でも廃業を選ぶ経営者たち
赤字で事業が立ち行かなくなり、廃業を選択するのは自然なことだ。しかし、帝国データバンクの「全国企業休廃業・解散動向調査(2022年)」によると、2022年に休廃業・解散を選択した企業のうち54.3%が黒字だと分かった。また、資産が負債を上回る資産超過の企業は全体の63.4%だった。
休廃業や解散を選択した企業の代表者の平均年齢は71.0歳で、ピーク年齢は75.0歳だ。年代別の構成比を見ると、60代が21.7%、70代が41.1%で、70代での休廃業・解散が最も多い。2016年は60代の構成比が70代を上回っていたが、2017年に逆転し、構成比の差は毎年のように開いている。
休廃業・解散を選択する経営者の高齢化が進む背景には、後継者不足の問題がある。最近は、親の事業を引き継ぐのではなく、自分で職業を選びたいという子ども世代が増え、親族内で後継者を見つけるのが難しくなってきている。
政府は事業承継支援に積極的だが、情報不足などから支援にアクセスできず、廃業せざるを得ない経営者もいるのが実態だ。
経営者が「廃業せざるを得ない」と考える代表的な3つの理由
経営者が「廃業せざるを得ない」という判断にいたる理由は、どこにあるのか。続いては、後継者不足をはじめ、承継期の経営者が直面する課題について解説していく。
1.後継者がいない、後継者に事業承継の意志がない
後継者として十分な能力を持つ親族がいなかったり、能力はあっても事業承継の意志がなかったりすると、親族内承継をあきらめざるを得ない。この時点で「後継者がいない」と考え、廃業するしか道がないと考える経営者は多い。
2.後継者となる従業員を育成するノウハウや時間がない
親族内に後継者がいない場合、従業員に事業を引き継ぐという選択肢もある。長年勤めており事業への理解が深い従業員なら、事業承継もスムーズに進みやすい。
しかし、従業員として働くのと、経営者として全体を束ねるのではわけが違う。事業を承継するには、後継者候補に経営のノウハウを教え、後継者として育成しなければならない。
事業承継の時期を踏まえると、後継者を育成する十分な時間がないというケースも多い。また、後継者を教育するためのノウハウがなかったり、後継者候補に途中で心変わりされてしまったりして、さまざまな問題が出てくることもある。
3.第三者承継(M&A)を選択肢に入れていない
親族にも従業員にも後継者がいなかったとしても、第三者承継(M&A)という選択肢がある。M&Aなら、仲介会社を通じて、幅広い選択肢の中から自社に合う後継者を探すことができる。
しかし「M&Aはよく分からない」「抵抗感がある」「良い買い手が見つからないだろう」といった理由で、最初からM&Aを選択肢に入れていない経営者もいる。そうなると、廃業せざるを得ないという結論にたどり着く。