仮想通貨(暗号資産)やNFT(非代替性トークン)などの業界で近年問題視されているのが、ラグプル(RugPull)です。特に、NFTについては注目度の高さゆえに投資対象として位置付けている人が多く、そこに多額の投資をしたもののNFTゲームやプロジェクトが丸ごとなくなってしまい、大損をしてしまったという被害事例が後を絶ちません。

大手取引所だったFTXの破綻やビットコインの暴落など仮想通貨をめぐるネガティブな話題が多い昨今、仮想通貨の技術を応用したNFTに活路を見出す投資家も少なくありません。それゆえにラグプルの被害が拡大する懸念があるため、本記事ではラグプルの手口や特徴、被害に遭わないために必要な知識などについて解説します。

ラグプル(RugPull)とは?

NFTプロジェクトへの参加、投資を検討している方はラグプル(RugPull)にご用心
(画像=niphon/stock.adobe.com)

ラグプル(RugPull)とは、仮想通貨やNFTプロジェクトなどで実際に発生している、運営側によるお金の持ち逃げ詐欺のことです。敷物(ラグ)に載っているものを丸ごと引く(プル)ように持ち去ってしまうことから、ラグプルと呼ばれています。ラグプル以外には、出口詐欺と呼ばれることもあります。 ラグプルが発生している主な「舞台」は、3つあります。

仮想通貨

新しく仮想通貨を開発し、運営側がその優位性や話題性、将来性を大々的に煽って価格を釣り上げた上で売り逃げをする手口です。最初からラグプルの意図があったかどうかの判断が難しく、仮想通貨ブームの副産物といえる部分もあります。

DeFi

DeFiとは中央集権的な管理者のいない分散型金融システムのことで、仮想通貨の交換取引や貸し付けなど、従来は銀行が担ってきた金融サービスを受けることができます。このDeFiを運営するには仮想通貨の流動性を確保するために一定量の仮想通貨をプールしておく必要があり、そこに自分の仮想通貨を預けておくと報酬が得られる仕組みがあります。

こうしたDeFiのサービスを装って投資家から仮想通貨を集め、それを丸ごと持ち逃げするのがDeFi系のラグプルです。

デロイトトーマツコンサルティング合同会社が2022年12月に発表したレポート「日本におけるデジタル資産・分散台帳技術の活用、事業環境整備に係る調査研究」によると、2021年に発生したラグプル事案15件のうち14件はDeFi系であるとされており、多くの被害が集中しています。

NFTプロジェクト

NFTゲームやNFTプロジェクトを立ち上げ、そこに集まった資金を持ち逃げする手口です。運営側は最初からラグプルを画策した上でゲームやプロジェクトを立ち上げ、十分資金が集まったところで突然運営を放棄して雲隠れします。

ラグプルの被害に遭うとどうなる?

ラグプルの被害に遭うと、預け入れていた資金がなくなってしまうか、無価値になるなどの形で損害を被ります。投じている資金の額が大きくなると大損になってしまい、すでに金額の大きな被害事例もあります。

そもそも仮想通貨には国境の概念がなく、ラグプルも国際的な犯罪です。世界中の国々で法整備が追い付いていないこともあり、ほとんど立件されていないのが現状です。つまり、被害に遭ってしまうと泣き寝入りの可能性が高いということです。

主なラグプル事件

実際にあったラグプル事件を2つ紹介します。

ドラマ「イカゲーム」関連のSquid Gameトークン大暴落

韓国のテレビドラマ「イカゲーム」に関連があるかのように開発され、売り出されたSquid Gameトークンがありました。Squid Game(=イカゲーム)という名称から有名なドラマ作品に関連したものと見なされ、ミームコイン(ジョークのように扱われる仮想通貨)にありがちな暴騰をしました。

運営側は「暴落を避けるため」としてSquid Gameトークンを売れないようにしていたため価値は維持されましたが、高値のうちに運営側はこのトークンを売り抜け、一瞬にして大暴落、ほぼ無価値になってしまいました。

Web3ゲーム「Dragoma」のDMAトークン大暴落

「Dragoma」というWeb3ゲームが開発され、ゲーム上の基軸通貨としてリリースされたのがDMAトークンです。こちらも上記の事例と同様にゲームの優位性を大いに煽ってDMAトークンの価格を釣り上げ、そこで運営側がDMAトークンを大量売却して売却益を持ち逃げしました。

ラグプル被害を防ぐための5か条

ひとたび被害に遭ってしまうと泣き寝入りになってしまう可能性の高いラグプル。それだけに事前に回避することが極めて重要です。ここではラグプル被害を防ぐのに有効な5か条を解説します。新しい仮想通貨やNFTなどにお金を出す場合は、この5か条を確認した上でも遅くないのでチェックリストのようにお使いください。

1.仮想通貨名、プロジェクト名で検索してみる

資金を投じる前に、対象となる仮想通貨の名前やプロジェクトの名前でネット検索をしてみましょう。詐欺目的ではなかったとしても評判などを知ることができるでしょうし、場合によってはラグプルの疑いがあるといった旨の情報に触れるかもしれません。

2.「RugDoc」で調べてみる

ラグプル情報が共有されている「RugDoc」というサイトがあります。このサイトで対象となる仮想通貨やプロジェクトの名称を検索してみましょう。ここで「ハイリスク」に分類されている案件には参加するべきではありません。

RugDoc

3.運営者の信用度を調べてみる

お金を投じようとしているプロジェクトについて、運営者や開発者についての情報を調べてみるのもひとつの方法です。プロフィール情報があまりにも少ないのは十分怪しいですし、その運営者や開発者の名前で検索をして過去に「前科」がないかも調べてみる価値があります。

4.不自然に優位性を煽っている場合は要注意

ここまでの解説ではプロジェクトの優位性や独自性、将来性などを煽って仮想通貨の価格を釣り上げる手口を紹介しています。この特性はひとつの共通点でもあるので、SNSなどで過度に持ち上げられている、不自然なまでに魅力が拡散されているような投稿が見られる場合は、疑ってかかるべきでしょう。

単一のアカウントだけでなく複数のアカウントを使い分けてあたかも情報が拡散しているように見せかけている場合もあるので、複数のアカウントで高い評価の投稿があるからといって、鵜呑みにしてはいけません。

5.運営側のトークン保有率が高い

健全なプロジェクトであっても、運営側は一定量の仮想通貨を保有します。そのこと自体に問題はないのですが、注意したいのは運営側の持ち分が半分を超えているなど過度に多い場合です。

運営側の保有率が高いということは売り抜けをしやすいですし、市場流通量が少ないので価格を釣り上げやすいといったように、犯罪者にとって有利な環境だからです。

仮想通貨、NFT全体が怪しいわけではない

この記事ではラグプルの被害に遭わないための情報をお届けしていますが、こうした情報に接すると仮想通貨やNFT全体に対して懐疑的なイメージを持ってしまうかもしれません。しかし仮想通貨やNFTには多くのメリットがあり、そのメリットがうまく機能しているプロジェクトは多数あります。

重要なのは、「何だか凄そう」という感覚に近いような判断で仮想通貨やNFTに投資をしてしまわないことです。犯罪者が狙っているのは、こうした世界にあまり詳しい知識がなく、「乗り遅れてはいけない」と思っているような人たちです。

ここまで解説してきた情報を念頭に正しい目をもって判断をすれば、ラグプルの被害に遭うリスクを大幅に軽減することができます。仮想通貨やNFTには有望なプロジェクトやサービスが多数あるので、不審なものを見極める正しい判断力をもって、投資や金融サービスなどに活用してください。

(提供:Incomepress



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