大企業、中小企業にかかわらず企業経営を維持していくためには、新規開拓は必須である。なぜなら長い間事業活動を行っていれば取引先にもさまざまな事情が生じて、疎遠になったり取引が解消されたりすることもあるからだ。長く取引をしてきた企業との関係を維持することはもちろん大切だが、取引先にも新陳代謝が起こる。

経営者がなにもせずに「現状維持で問題ない」と考えていては、事業を拡大するどころか、維持することも困難になってしまいかねない。本稿では、企業が新規開拓を必要とする理由や営業戦略の重要性について解説する。

目次

  1. なぜ新規開拓をする必要があるのか
    1. 新規開拓を行わないリスク
    2. 売上を伸ばすには顧客数の増加を図る必要がある
  2. 中小企業における営業戦略の重要性
    1. 中小企業が営業戦略を考えるうえでの課題
    2. 中小企業の新規開拓における営業戦略
  3. 営業戦略を立てるためのポイント
  4. 常に新規開拓を行う
中小企業が存続するためには新規開拓が必要不可欠である理由
(画像=AndriiYalanskyi/stock.adobe.com)

なぜ新規開拓をする必要があるのか

中小企業が事業拡大を図るには、新規開拓が重要だ。特に創業期には、顧客数を伸ばしていくことが重要となり、固定客を増やすことで安定した基盤が構築できる。安定期に入っても営業利益や経常利益を常時確保するには、新規開拓を行い、顧客を入れ替えていかなければならない。

新規開拓を行わないリスク

中小企業の場合、いつも同じ取引先から仕事をもらっていて受注先や販売先が固定化されると売上や利益が取引先の都合で大きく左右されてしまう。下請けを中心に行っている企業の場合、主要取引先からの受注が大きく減少すれば廃業や倒産もあり得る。

もちろん既存顧客との関係を維持することは重要である。受注先や販売先の企業の経営が安定していれば下請企業の売上も安定するだろう。しかし受注先や販売先の企業の経営不振や倒産が連鎖して自社が廃業や倒産に追い込まれる例は少なくない。特に建設業や製造業などで下請け中心に行っている中小企業の場合は、主要取引先からの売上が自社の売上の大部分を占めることが多い。

下請企業は、仕事量や利益率を自社でコントロールするのが難しいため、元請企業の経営状態や経営方針によって大きな影響を受けてしまう。一社偏重の取引が危険な理由はここにある。中小企業が経営を安定させるためには、常に新規開拓を行い、取引先の分散を図ることが重要だ。長期間の事業のなかでは「取引先の廃業や倒産」「関係が疎遠になる」「取引が解消される」といったこともある。

常に新規開拓を行うことで売上の一社偏重を防ぎ、安定した売上の確保とリスク分散が可能となるのだ。取引先が大企業であれば、基本的には経営は安定しているといえるだろう。しかし中長期的なビジョンで営業戦略を考えた場合は、万が一に備えて新規開拓で顧客を増やし、一社偏重の取引は避け、リスクを分散させる目線も必要となるのだ。

売上を伸ばすには顧客数の増加を図る必要がある

営業利益や経常利益を安定させるためには、顧客数を増やして売上を増加させることが必須だ。既存顧客だけで売上を伸ばすには限界がある。新規開拓を常に行い、新たな顧客の獲得をしていかなければ先は見えないのだ。もし、新規開拓の活動を怠れば既存顧客の減少により将来尻すぼみになることは明白だろう。

また利益率の低い取引先とばかり商売をしていても意味がない。たとえ売上が増えても利益が確保できなければ事業を維持することができないのだ。特に製造業や卸売・小売業、サービス業の場合、顧客には新陳代謝が必要となる。既存顧客の見直しを常に行い、利益率の低い顧客を利益率の高い顧客に入れ替えていかなければならない。

営業利益や経常利益を安定して伸ばすためには、具体的にどのようなことが必要なのだろうか。例えば顧客数の増加で売上を伸ばすだけでなく既存の顧客の見直しを行い、常に入れ替わるものだという目線は重要だ。現状は経営状態が安定している場合でも「現状維持で問題ない」と経営者が考えていては、売上や利益を安定的に伸ばしていくことは難しいだろう。「現状」は流動的なものであることを常に意識したい。