中小企業が事業拡大を進めるカギとなる新規開拓。必要とは思っていてもどこから着手してよいのか分からない経営者も多いだろう。経営体力や経済的な環境もあって、限られた資力で広告・宣伝を打つには限界があるため、大企業のようにはいかない。ただ、中小企業でも新規開拓に力を入れて成功している企業もある。
本稿では、中小企業が新規開拓を行うためになにから始めるべきかを解説しながら、新規開拓に成功している企業を紹介していく。
目次
新規開拓を行う際には事業スキームの策定が必要である
新規開拓は、やみくもに行ってうまくいくものではない。特に新しい商品やサービスを売り出す際には、経営ビジョンや経営理念、営業戦略までを含む事業の全体像をまとめた仕組みや流れを説明する事業計画書の作成が必要だ。新規開拓の際、事業スキームを作成すれば計画的に事業を進められるだろう。
事業スキームとは
事業スキームとは、当該企業が事業拡大や資金調達を行ううえで必要となる事業の全体像、いわば経営戦略をまとめたもの。具体的には経営ビジョンや経営理念も含め、商品開発やマーケティングから営業方法、販売戦略に至るまでを計画に落とし込む。ビジネスの世界における事業スキームとは「事業計画」といった意味で使われることが多い。
事業スキームは、投資家に事業内容を説明したり中小企業が銀行で融資を受けたりするときに作ることが多い。しかし営業戦略として社内に周知するときや新商品の販売、新規事業への参入時にも必要となる。特に新しい商品やサービスを販売したり新しい分野に進出したりする際には、ターゲットや販売方法を明確にするためにも事業計画に沿って営業活動を行うことが重要だ。
マーケットの動向や顧客のニーズを分析して、裏付けのある市場調査に基づき営業戦略を立てなければ、事業の成功は難しい。事業で成功を勝ち取るためには、事業の全体像とその事業の仕組みや流れ、営業戦略を計画に落とし込んだ事業スキームの策定が必要となる。
事業スキームは新規開拓の際にも必要となる
新規開拓を行う際は、電話営業や訪問営業、DMなどでやみくもに営業をかけるのではなく営業戦略を考えなければならない。また営業をするにしてもそのツールは必要となるだろう。事業スキームは、投資家など対外的に説明することが目的であれば、見て分かりやすいように簡潔にまとめることが必要だ。
また金融機関から融資を受けるなど資金調達が目的ならば事業内容やビジネスモデル、財務計画などの作成が求められる。そのため想定している目的に応じて使い分けるのがよいだろう。一般的に事業スキームは、以下の5つの事項を含めて作成することが多い。
- 事業のコンセプトやビジョン、経営理念
企業の目的や経営理念、存在価値などとともに、商品やサービスを「だれに」「なにを」「どのようにして」販売・提供するのかを分かりやすく説明する。売上や利益の目標などを含めることもある。 - 事業領域・事業内容
業界情報の収集、市場規模、顧客動向などのマーケットに関する情報の収集、競業他社の情報収集や比較、自社商品、サービスの優位性、リスク対策など、さまざまな情報を分析する。 - 収益化の方法
販売計画、仕入計画、販売促進・集客・広告宣伝の方法、人員配置、人件費の計画など、ビジネスモデルとして収益化の方法を説明する。 - 自社の強み
人材育成、技術力、ブランド力、企業の持つノウハウや販路など、自社の強みを分析しアピールする。 - 財務計画
貸借対照表や損益計算書への影響を予想し、財務情報を中心とした実行計画や収支計画などから将来性を説明する。
5つのなかでも「2.事業領域・事業内容」と「3.収益化の方法」は押さえておきたい。なぜなら新規開拓のためのマーケティングに基づく調査・分析、ターゲットとなる顧客層の選定、商品の宣伝方法などの新規開拓ツールが含まれるからだ。あらかじめ作成した事業スキームに沿った営業方法や販売戦略があれば、ターゲットや販売方法が明確となり、新規開拓がしやすくなるだろう。