高齢化社会の進展でバリアフリーの需要が高まっています。バリアフリーマンションも普及が進んでいますが、既存のマンションをバリアフリー化するには一定のリフォーム費用や手間がかかります。

そこで高齢者や障がいを持った入居者に安全に住んでもらえるように、工事なしでバリアフリー化できる段差解消スロープの活用方法を紹介します。

超高齢化社会にバリアフリーは不可欠

既存のマンションをリフォームせずにバリアフリー化できるスロープ活用法
(画像=naka/stock.adobe.com)

日本は既に超高齢化社会に突入しています。高齢者になると、ちょっとした段差につまずいて怪我をすることはよくあります。総務省が行った「平成30年住宅・土地統計調査」によると、高齢者が住む住宅の一定のバリアフリー化率は42.4%となっています。

新築住宅であればバリアフリーの設計にする施主がこれからの時代は増えるものと思われます。しかし、既存の住宅をバリアフリー化するのは予算の関係もあり難しい家庭も多いでしょう。高齢者が同居している住宅でも、バリアフリー化率が半分以下にとどまっているのが現状です。

既存のマンションをバリアフリー化できる段差解消スロープ

少子高齢化が進むと、マンションの居住者年齢も次第に高くなっていくことが予想されます。これからの賃貸経営は、高齢者を抜きに考えることはできません。後期高齢者になると車椅子で生活する比率も高くなります。高齢者がいる家族が賃貸マンションを探す場合は、バリアフリーであることが大きな選択理由になるでしょう。

とはいえ既に建っているマンションをバリアフリー化するには、リフォーム費用もかなりかかり、賃貸オーナーとしては大きな設備投資になります。車椅子でも移動しやすいように段差解消だけでなく、畳をカーペット敷きにし、ドアを押し戸から引き戸に変えるなど、本格的なバリアフリー化を実施したマンションの工事事例では700万円以上のリフォーム費用がかかっています。

そこまで本格的ではなく段差解消だけにした場合でも、数百万円単位になる可能性が高いでしょう。国の「住宅確保要配慮者専用賃貸住宅改修事業」で補助金が交付されるとはいえ、国費限度額が1戸50万円ではオーナーの負担が大きいことに変わりはありません。

自分が住むための住宅ならともかく、賃貸マンションで本格的なバリアフリー化を行うのはリスクが大きいといえるでしょう。そこで利用したいのが、工事なしでバリアフリー化できる「段差解消スロープ」です。

段差解消スロープの種類

段差解消スロープには「据え置き型」と「可搬型」の2種類があります。それぞれに適した使用箇所があるので、目的に合ったタイプを設置するとよいでしょう。

据え置き型

国土交通省
出典:国土交通省

据え置き型は、写真のように段差にブロックを敷いて固定的なスロープを作る方式です。堅牢なスロープになるのがメリットで、短時間で設置でき、撤去も容易なことから、車椅子や荷物搬入の台車などが通る建物の入口に設置するのに向いています。

可搬型

国土交通省
出典:国土交通省

可搬型は、使用したいときだけ設置することができる簡易なスロープです。車椅子を利用している家族がいる場合は、玄関にスロープを置くことによって、部屋から車椅子のまま外出できるので便利です。折り畳み式になっているものもあるので、外出しないときは部屋に保管しておくことができます。

スロープは長いほど設置したときの勾配が緩やかになるため、玄関のスペースによって適したサイズを選ぶ必要があります。

写真のお店のように、入り口の構造上スロープの工事が難しい場合は、可搬型スロープなら置くだけで設置できます。閉店時に取り外して保管すれば盗難に遭う心配もありません。

据え置き型と可搬型の併用

国土交通省

上:据え置き型(トイレ・浴室)
下:可搬型(玄関)

国土交通省
各出典:国土交通省

使用頻度に応じて、据え置き型と可搬型を併用する方法もあります。頻繁に使用するトイレの段差に対しては据え置き型で固定し、外出時のみ使用する玄関は可搬型で必要なときに設置するという方法です。玄関は来客もあることから、据え置き型よりも可搬型のほうが適しています。

半面、車椅子で一人暮らしをしている人は可搬型を使うのは困難なので、家族構成によって使い分けることも必要です。2人以上の世帯であれば、併用することで生活の利便性が高まります。

スロープの角度は決まっているのか?

スロープの勾配角度については、バリアフリー法のなかの建築物移動等円滑化基準で1/12以下と定められています。1/12の場合で10㎝上がるのに120㎝の距離を必要とする計算です。したがって、玄関等の段差を測り、1/12以下の比率になるスロープを選ぶ必要があります。

これは自走式の車椅子が移動可能な距離といわれているので、家族が介助できる場合は1/8の距離(10㎝上がるのに80㎝の距離)を確保できれば移動が可能です。

ただし、マンションの入口など屋外は1/15以下の距離が必要です。マンションに導入したいオーナーは把握しておく必要があります。

段差解消スロープはいくらで買える?

段差解消スロープを購入するにはどれくらいのコストがかかるのでしょうか。価格については、材質や大きさによって価格差が大きいので、用途に合わせて通販サイトでじっくり比較検討する必要があります。以下は大手通販サイトで販売されている価格をまとめたおよその相場です。

・特殊プラスチック製
屋外で駐車スペースと道路の段差解消でよく見かけるプラスチック製の簡易的なタイプのものなら、送料込み2,000円前後で購入することができます。複数のスロープをつなげて使用することもできます。

・ゴム製
ワンランク上のゴム製になると送料込み3,000~4,000円台の価格帯になります。スリップ防止のみぞが付いているので雨でも滑りにくいのがメリットです。

・アルミ製
アルミ製の堅牢なタイプの商品は送料込み1万円を超えます。真ん中に継ぎ目があって、折りたためるものもあるので、保管しやすいというメリットがあります。堅牢なので、重い荷物を積んだ台車やバイクの通過にも耐えられます。

また、通信販売で購入する場合に注意すべきことは、設置したい段差部分の高さを測り、接する部分がぴたり同じ高さになる商品を購入することです。接する部分に段差が生じたのではバリアフリーにならないので、十分に注意する必要があります。

段差解消スロープ導入で住みやすさをアピールできる

マンションに段差解消スロープを導入することで、入居者募集でも住みやすさをアピールすることができます。「段差解消スロープ貸出無料」などと表記すれば、希望者にとっては高齢者に優しい物件という印象を持たれるかもしれません。

一方で、若年層の入居者にとっては、あまりスロープが目立つと内覧で煩わしく感じる可能性もあるので、通常の入居者には普通に内覧してもらい、高齢者がいる家族が内覧に来た場合はオプションとしてスロープを設置した場合の生活スタイルを提案するのも有効かもしれません。

また、これから土地活用でマンションの建築を考えているオーナーであれば、はじめからバリアフリーマンションにすることにより、追加工事よりは低いコストでバリアフリーにできる可能性があります。まずは開発も行っている不動産会社を訪ねて、気軽に相談してみるとよいでしょう。

※本記事は段差解消スロープの活用方法について紹介することを目的にしています。文中で紹介した活用方法とスロープの価格は一例ですので、参考までにお考えください。

(提供:Incomepress



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