本記事は、堀田秀吾氏の著書『24 TWENTY FOUR 今日1日に集中する力』(アスコム)の中から一部を抜粋・編集しています。

「運がいい」と思い込むだけでも生活は変化する

「運がいい」と思い込むだけでも生活は変化する
(画像=VICHIZH/stock.adobe.com)

目の前のことに集中する、ごく簡単な手順

不安はチャンスに変えることもできますが、不安が大きすぎたり多すぎたりすると、判断ミスや集中力、パフォーマンスの低下を招きます。

では、どうすれば余計な不安を遠ざけることができるのか。

答えは簡単です。

とにかく、今日、やるべきシングルタスクを決め、その作業を始めればよいのです。

脳の仕組みから考えると、目の前のことに集中するためのやる気は、気合を入れたり考え方を変えたりするだけでは、なかなか生まれません。

やる気は、実際に作業を始めたときに初めて生まれ、作業をしている間に深い集中状態に入っていくのです。

気の進まない仕事、手のかかる作業など、「嫌だなあ」「面倒くさいなあ」と思ってなかなか手をつけられなかったのに、いざ始めてみると意外にハマってしまい、集中できた、という経験は、おそらく誰にでもあると思います。

人間のやる気を司っているのは、脳の中の淡蒼球たんそうきゅうという部位であり、やる気を出すためには淡蒼球を機能させる必要があります。

そして、淡蒼球を機能させるには、体を動かすこと、まず具体的な行動を始めてみることが一番です。

脳研究で知られる、東京大学の池谷裕二教授と上大岡トメさんとの共著『のうだま やる気の秘密』(幻冬舎)にも、やる気が出ないときは「頭で考えるよりもカラダを動かす」「やる気が出たからこぶしを上げるのではなく、こぶしを上げたからなんだかやる気が出る」と書かれています。

不安を感じながら、目の前のことに集中せずにいると、いつまでも不安が払しょくされず、しかもやるべきことをやっていないという焦りも生まれ、不安がどんどん増していくという悪循環に陥ります。

しかし、一度不安を脇に置いて、今やるべきことを始めてしまえば、やる気が起き、集中力が増し、余計なこと、ネガティブなことを考えることがなくなり、不安にとらわれる時間が減って、さらに集中力が増して仕事などがはかどるという好循環が生まれ、幸福感も得られます。

「不安を減らし、最適化した状態で人生を過ごしたい」という考えは、現代の日本にはびこる罠だといえます。 

明日自分の命がどうなるかわからない、明日社会がどうなるかわからないという状態では、将来のために今を犠牲にするなどという考えには至らないでしょう。

しかし、今の平和な状態が長く続くはずだというのも、幻想です。

どんな時代、どんな社会であれ、人の一生は今の積み重ねでしかないのです。

ですから、何らかの不安を抱え、今やるべきことへのモチベーションや集中力が落ち、パフォーマンスが上がらない、成果が出ないという人は、とにかくやるべきことに手をつけ、「集中できた」「パフォーマンスが上がった」という成功体験を積み重ねていってください。

それこそが、不安を遠ざけ、パフォーマンスを高め、あなたの人生を満足度の高い、幸福なものにしてくれるのです。

思い込みの力で、余計な不安を遠ざける—ハートフォードシャー大学のワイズマンの調査

不安を遠ざけるためには、「自分は運がいい」と思い込むことも有効です。思い込みの力がいかに大切であるかは、ケルン大学のダミッシュらの研究によっても明らかにされています。

彼らは、被験者たちにパターゴルフをしてもらい、そのうちの半数だけに「あなたの打つボールはラッキーボールです」と伝えました。

すると、ラッキーボールだと伝えられた人たちのカップイン率は10球中平均6.75回、伝えられなかった人たちのカップイン率は10球中平均4.75回となり、結果に大きな差が出たのです。

また、ハートフォードシャー大学のワイズマンの調査によると、「自分が幸運だ」と信じている人は、新聞にさりげなく仕込まれた賞金がもらえる情報を見つけ、賞金を持ち帰る確率が高かったそうです。

こうした調査などの結果を踏まえ、ワイズマンは「運がいいと思い込むだけで、周囲の視線も好意的なものに変化し、生活に変化が表れる」と言っています。

本来は薬としての効果を持たない偽薬(プラセボ)でも、患者が医師から「この薬は病気に効く」と言われ、服用すると、思い込みの力によって症状が改善することがあります。

同様に、たとえ仕事で困難な状況に直面しても、「自分は運がいい」「自分にはクリアできる」と思い込むことで、不安を遠ざけ、高いパフォーマンスを発揮し、乗り越える力が生まれるのです。

24 TWENTY FOUR 今日1日に集中する力
堀田秀吾(ほった・しゅうご)
明治大学法学部教授。言語学博士。熊本県生まれ。シカゴ大学博士課程修了。ヨーク大学修士課程修了・博士課程単位取得退学。専門は社会言語学、理論言語学、心理言語学、神経言語学、法言語学、コミュニケーション論。研究においては、特に法というコンテキストにおけるコミュニケーションに関して、言語学、心理学、法学、脳科学など様々な学術分野の知見を融合したアプローチで分析を展開している。執筆活動においては、専門書に加えて、研究活動において得られた知見を活かして、一般書・ビジネス書・語学書を多数刊行している。「明治一受けたい授業」にも選出されるなど学生からの人気も高い。『最先端研究で導きだされた「考えすぎない」人の考え方』 (サンクチュアリ出版)、『図解ストレス解消大全 科学的に不安・イライラを消すテクニック100個集めました』(SBクリエイティブ)など著書多数。

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