本記事は、堀田秀吾氏の著書『24 TWENTY FOUR 今日1日に集中する力』(アスコム)の中から一部を抜粋・編集しています。

やみくもに「モチベーション」を高めようとしない

やみくもに「モチベーション」を 高めようとしない
(画像=jirsak/stock.adobe.com)

立派な動機より自分勝手な動機を持つ ―― イェール大学レゼスニエウスキーらの研究

ビジネス書などには、よく「仕事へのモチベーションを高めよう」と書かれており、モチベーションを高める方法などが記されていますが、やみくもにモチベーションだけを高めようとする行為は、残念ながら、ムダでしかありません。

イェール大学のレゼスニエウスキーらによる研究チームが、アメリカの陸軍士官学校の生徒1万人以上を10年にわたって調査し、志望動機とその後のキャリアを記録したところ、自分のやりたいことに対し、「教養のため」「人類のため」「出世のため」などといった理由づけをする人ほど、長期的なキャリアの結果が悪くなる傾向があったそうです。

実は、モチベーションには、行動に対し「人類のためにやる」「国のためにやる」などの理由づけを行う「外発的なモチベーション」や、「好きだから、やる」といった「内発的なモチベーション」など、いくつかの種類があります。

そして、やるべきことへの集中力を圧倒的に高めてくれるのは、内発的なモチベーションであり、やみくもに理由づけをしたり、大きな目標を掲げたりして外発的なモチベーションを高めても、意味がないどころか、かえって逆効果になってしまうことがあるのです。

ですから、単に「仕事で成果を上げ、充実した人生を歩むために、24時間を有意義に過ごそう」などと考えても、なかなかやるべきことへの集中力は高まりません。

まずは、自分が好きなこと、やりたいと思うことにリソースを割きましょう。

「好き」でやったことに意味づけをすることが、人生を肯定する唯一の方法

もしかしたらみなさんの中には、「好きでやりたいことはあるけど、そこにリソースを割いたところで、成功に結びつくかどうかわからない」「だから、それほど好きではないけれど、与えられた仕事に時間を割いている」という人もいるかもしれません。

たしかに、好きでリソースを割いたことがすべて天職だといえるところまでレベルアップするか、収入に結びつくかはわかりません。

でも、「成功するかどうかわからないから、リソースを割かないし頑張らない」というのは、私は非常にもったいないと思います。

私たちには、「過去の時間の価値」を結果によって判断したがる傾向があります。

自分の望む結果が得られたかどうかによって、簡単に過去の自分、過去の時間の評価を変えてしまうのです。

それは非常に短絡的なことだと私は思います。

もちろん、充実した24時間を積み重ねた結果、望む会社に転職できたり、収入が上がったり、人生の充実度が増したりしたのであれば、それは素晴らしいことです。

「自分の過ごしてきた時間は間違いではなかった」と考えるのは当然のことでしょう。

しかし、好きなこと、やりたいことにリソースを割き、24時間を過ごしてきた結果、仮に自分が望む未来にたどり着かなかったとしても、決して「ムダな時間を過ごした」「努力しても意味がなかった」「人生の選択を間違えた」などと思わないでください。

好きなことをやることで、身についた知識や経験はきっとあるでしょうし、何より、好きなことに集中し、一生懸命に取り組んでいたとき、あなたは充実し幸福を感じていたはずです。

結果がどうであろうと、やるべきことに集中した24時間の価値は変わりませんし、そうした時間を積み重ねてきたあなたは十分に幸せなのです。

そのうえで、集中して取り組んだことに対し、後づけの理論でかまいませんから、たとえば、「○○をしたのは、××のためだったのだ」といった具合に、ぜひ意味づけをしてください。

「自分がしてきたこと、自分がこれからすることには、このような意味と価値がある」と考えられるようになればモチベーションが上がり、結果に左右されず、過ごしてきた時間の価値を高めることができますし、本当の意味で自分の人生を肯定できるようになります。

あなたの人生の価値を決めるのは結果ではなく意味づけであり、意味づけを行うことこそが、自分の人生を肯定する唯一の方法です。

同じ事実でも、解釈は無限なのです。

今日の時点で、未来の結果を気にして行動しないのは、「知りえぬ未来と戦い続け、人生を無為に捨てる一番の愚か者」であり、せっかく好きなこと、やるべきことに集中し24時間を過ごしたのに、自分の望むものが手に入らなかったからといって、「自分は間違っていた」などと思うのは、「過去と戦う二番目の愚か者」なのです。

24 TWENTY FOUR 今日1日に集中する力
堀田秀吾(ほった・しゅうご)
明治大学法学部教授。言語学博士。熊本県生まれ。シカゴ大学博士課程修了。ヨーク大学修士課程修了・博士課程単位取得退学。専門は社会言語学、理論言語学、心理言語学、神経言語学、法言語学、コミュニケーション論。研究においては、特に法というコンテキストにおけるコミュニケーションに関して、言語学、心理学、法学、脳科学など様々な学術分野の知見を融合したアプローチで分析を展開している。執筆活動においては、専門書に加えて、研究活動において得られた知見を活かして、一般書・ビジネス書・語学書を多数刊行している。「明治一受けたい授業」にも選出されるなど学生からの人気も高い。『最先端研究で導きだされた「考えすぎない」人の考え方』 (サンクチュアリ出版)、『図解ストレス解消大全 科学的に不安・イライラを消すテクニック100個集めました』(SBクリエイティブ)など著書多数。

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