総括
FX「バンピーロード。パウエル議長議会証言も揺れ動いた。先ずはCPIとSVB破たん処理に注目」
ドル円=132-137、ユーロ円=141-146、ユーロドル=1.04-1.09
通貨ごとの注目ポイント
*円「通貨9位(11位)、株価5位(11位)、週足カブセでドル円下落。貿易赤字縮小か、SVB破たんでリスク回避の円買いあり」
2週連続週足陰線となった。1月の3.5兆円の大貿易赤字の影響も剥げ落ちか。米シリコンバレー銀行破たん(週末は救済策拡がる)で米主導で世界の金利が低下し、リスク回避でスイス程ではないが円が買われた。
2月27日週の週足カブセも効いたか、先週もドル円は陰線となった。日足はボリバン中位を割り込む。月足も陰転。
2月上中旬の貿易統計は前年比で輸出7%増、輸入11.9%増で7306億円の赤字となったが、一時は輸入の伸びが40%超となっていたことと比べると、輸入急増による円安は落ち着いてきている。今週は2月全体の貿易統計の発表があり、輸出が7.1%、輸入が12.2%の伸びで約1兆円の赤字となる見込み、まだ赤字なので円安要因だが、資源価格が大幅下落していることもあり昨年ほどの急速な円安はないだろう。
2月東京消費者物価は3.4%と1月の4.4%から急低下、コアコアは1.8%であった。電気・ガス代の補助金が影響した。こうなると日銀の金融緩和は維持せざるを得ない。3月24日に日本全体の消費者物価が発表される。
*米ドル「通貨3位(2位)、株価(NYダウ)19位(16位)、バンピーロード。パウエル議長議会証言も揺れ動いた。先ずはCPIとSVB破たん処理に注目」
先週のドルはやや下落、年間2位をスイスに譲って3位へ後退。大きな下げではない。一方株価は大きく下落、ダウ、ナスダックともに4%超下落。ダウは年初来では3.73%安となった。SVBの破たんがドル安、株安、金利低下を生んだ。パウエル議長の議会証言では上院ではタカ派色が強く5週間足らず前に減速したばかりの利上げペースについて、根強いインフレを抑制するために再び加速させる必要性があるかもしれないと警告した。ところが翌日の下院での証言では3月FOMC会合前に重要なデータの発表がありまだ何も決定していないとトーンを変えた。SVB破たんや雇用統計の賃金の伸び悩みについて配慮したのであろう。
SVB破たんについては関係当局が週末も動いて打開策を講じている。中期的には何度もあった金融ショックであり対応できるが短期的は連鎖的に窮地に追い込まれる銀行が出てくるかどうかで混乱が引き伸ばされる可能性もある。2月消費者物価が予想通り6%前後に収まれば、次回利上げ幅も0.25%になるのではないか。SVBについては13日は米財務省は日本時間正午にカリフォルニア州議員に説明し、またイエレン財務長官とFDICの議論もあるようだ。
1月雇用統計、やPECデフレーターの上昇で0.5%利上げ確率が高まったが、ボスティック・アトランタ連銀総裁のハト派発言、賃金の伸び悩む、SVB破たん今度は0.25%利上げ確率が勝っている。
*ユーロ「通貨6位(7位)、株価2位(2位)DAX)、金融引き締め継続も成長見通しは上方修正、株価もユーロも落ち着く」
依然、強くもなく弱くもない。利上げ継続論はあれど株価は強い。長期金利はSVB問題もあり急低下している。今週のECB理事会では政策金利が0.5%引き上げられて3.5%となる予想が多い。高止まりするインフレへの対応を強化し、あと4回の利上げで政策金利を3.75%まで引き上げるとともに、5兆ユーロの保有債券の圧縮を加速させるとの見方だ。インフレは8.5%と昨年のピークの10.6%から低下しているがコアインフレ率は過去最高を更新し5.6%となっている。
ECB理事会では最新の経済予測も明らかになる。総合インフレ率の予想は後退する一方、コアインフレ率見通しは引き上げられる見込みで、どちらを重視すべきかの問題となる。今年の成長見通しは上方修正される見込みでリッション懸念は後退する。
*ポンド「通貨5位(5位)、株価10位(10位)、GDP改善もSVBは英国の問題でもある懸念あり」
ユーロよりポンドはやや強いが、株価はやや弱い。米国SVBが破たんした。英国にもシリコンバレー銀行フィナンシャル グループの英国子会社 (SVB UK) がある。これは英中銀の規制機関であるプルデンシャル規制当局 (PRA) の監督下にある。英国の金融機関と企業が、SVB破たんの悪影響抑制への介入を政府・英中銀に要請している。
さて国内の経済指標では1月国内総生産(GDP)は前月比0.3%増と、予想の0.1%増を上回った。昨年12月の大幅な減少から一部回復した。ハント財務相はGDPについて「厳しい国際的課題に直面する中で英経済が大方の予想よりも底堅いことが証明された」と指摘した。今週公表する春季予算案で「インフレ率を半分にし、債務を減らし、経済を成長させる」政府計画の次の段階を明らかにすると表明した。
さて3月23日金融政策決定はFOMCの翌日行われる。FOMCのSVB問題についての配慮も共有されるだろう。
既にベイリー英中銀総裁は、利上げ局面が終わりに来ている可能性を排除しない一方、今後の政策について確たる見通しを示すのは時期尚早との見解を示している。今の所0.25%の利上げを決定するとの見方が強い。ただディングラ英中銀政策委員は、これまでの利上げの効果がまだ経済に浸透していないとして、金利を据え置くことが賢明との見解を示した。
*豪ドル「通貨11位(8位)、株価13位(14位)、RBA総裁の利上げ打ち止め論で下落」
豪ドルは年間11位、今月は最弱通貨と弱い。豪ドルは中国のゼロコロナ政策解除で中国との人・モノ交流拡大観測で上昇していたが2月から失速した。4Qの賃金価格指数の伸び鈍化、1月の消費者物価の伸び鈍化、22年4QのGDPが、1年ぶりの低い伸びとなったことによるものだ。
ロウRBA総裁は、利上げサイクルの停止に近づいていると述べた。現在の金融政策が制約的な領域にあり、経済もそれに反応している兆候があると指摘し、早ければ4月にも利上げを停止する可能性を示唆した。中銀は、政策金利を先週0.25%引き上げ、11年ぶりの高水準となる3.6%とした。ただロウ総裁は最近の指標やインフレに関する講演で、金融政策の効果がかなり遅れて表れることや、利上げが昨年5月以降すでに10回に及んでいること、借り入れコスト上昇による家計への影響などについても理事会で議論したと明らかにした。
「金融政策が制約的な領域にある現在、経済状況を評価するために利上げを停止することが適切となる時点に近づいている。利上げ停止の適切なタイミングはデータと見通しに対するわれわれの評価次第だ」とした。タカ派の米金融政策との相違について問われたロウ総裁は、豪国内のインフレと賃金の見通しは米国ほど厄介ではないとし、市場はそれを理解すべきだと述べた。
さて豪中貿易関係の改善は望ましいが、一方で豪は米英豪3カ国の安全保障枠組み「AUKUS」を通じた原子力潜水艦導入計画の具体化などについて協議するなど中国を苛立てせる行動もとっていることは気をつけたい。
*NZドル「通貨10位(10位)、株価11位(11位)、良い材料乏しい、今週は経常収支とGDP」
NZドルは豪ドルとともに弱い。若干豪ドルよりは強いといったところだ。円に抜かれた。中銀は今年2Qに景気後退入りし、年内は後退期が続くと予想しているという基調はある。
2月の消費者信頼感指数は79.8と、前月から3ポイント低下した。強いインフレ圧力の中、生活費と金利の上昇が家計を圧迫している。今後は家計の支出が高騰する家賃に回され、小売りや接客部門が課題に直面することになる。調査では、小売の主要指標である高額家庭用品の購入に今が適した時期と考えている回答者の割合が7ポイント低下し、新型コロナウイルス感染拡大抑制のためロックダウンが行われた2020年以来、最低の水準となった。
オア中銀総裁は、インフレ率が予想外に現在の水準から急激に上昇した場合にのみ、0.75%の利上げが検討の対象に戻るだろうと述べた。物価圧力が緩和し始めているという初期の兆候が見られ、今後15か月以内にインフレ率が3%未満に戻ると確信しているとした。
今週は4Q・GDPの発表がある。前年比で3.3%増の予想で前期の6.4%増からは縮小する。4Q経常収支は82.5億NZドル赤字の予想だ。貿易収支と共に需給面での赤字は続く。
テクニカル分析
*ドル円「週足カブセ効いて連続陰線」
日足、3月7日-8日の上昇ラインを下抜き、2日連続陰線。ボリバン中位を割り込む。3月9日-10日の下降ラインが上値抵抗。2月10日-3月10日の上昇ラインがサポート。5日線下向き2日目、20日線上向き。
週足、2月27週は雲の上に出るも週足カブセで2週連続陰線となる。雲中に入るか。20週線に抑えられ中位を上抜けず。5週線上向き。20週線下向き。2月13日週-3月6日週の上昇ラインがサポート。22年10月17日週-3月6日週の下降ラインが上値抵抗。
月足、3か月連続陰線も2月は陽転。5か月移動平均線は下向いたまま。22年8月-11月の上昇ラインを下抜く。22年12月-23年1月の下降ラインを上抜く。1月-2月の上昇ラインがサポート。22年10月-11月の下降ラインが上値抵抗。
年足、23年は陰線スタートだったが、2月3日の米雇用統計で陽転。ただ2022年は大陽線に終わるも、長い上ヒゲを残し売り圧力を残した。21年-22年、12年-21年の上昇ラインがサポート。
*ユーロドル「ボリバン2σ下限から反発」
日足、ボリバン2σ下限から反発。一時雲中に入るも先週末は雲下。3月9日-10日の上昇ラインがサポート。2月2日-3月10日の下降ラインが上値抵抗。5日線上向く、20日線下向き。
週足、ボリバン2σ上限近くから反落も中位で反発。雲中。11月7日週-3月6日週の上昇ラインがサポート。1月30日週-3月6日週の下降ラインが上値抵抗。5週線下向き、20週線上向き。
月足、1月まで4か月連続陽線も2月は陰線。ボリバン中位上抜けきれず。21年6月-23年2月の下降ラインが上値抵抗。1月-2月の上昇ラインがサポート。
年足、20年‐21年の上昇ラインを下抜く。2022年は2年連続陰線もボリバン2σ下限到達し反発。下ヒゲが長く反発力あり。02年-22年の上昇ラインがサポート。21年‐22年の下降ラインが上値抵抗。
*ユーロ円「2σ上限から反落、中位を割り込む。」
日足、雲の上、2σ上限から反落。中位を割り込む。2月24日-3月10日の上昇ラインがサポート。3月7日-10日の下降ラインが上値抵抗。5日線下向き、20日線上向き。
週足、ボリバン2σ下限から反発、中位を上抜く。2月20日週-3月6日週の上昇ラインがサポート。2月27日週-3月6日週の下降ラインが上値抵抗。5週線上向き、20週線下向き。
月足、2月は2か月連続陽線。3月も陰転。22年11月-12月の下降ラインが上値抵抗。1月-2月の上昇ラインがサポート。
年足、3年連続陽線。今年も陽線。20年-22年の上昇ラインがサポート。08年-22年の下降ラインが上値抵抗。