ID為替レポート
(画像=外為どっとコム マネ育チャンネル)

総括

FX「クレディスイス問題を国際協調で凌げるか」

ドル円=129-134、ユーロ円=139-144、ユーロドル=1.04-1.09

通貨ごとの注目ポイント

*円「通貨7位(9位)、株価8位(5位)、クレディスイス問題を国際協調で凌げるか」
(3月はここまで円最強。週足カブセ。貿易赤字縮小、リパトリ、SVB・CS破たんでリスク回避の円買いが続いていた)

今週のアジア市場オープン前に、UBSのクレディスイス買収で、一連の信用不安解決のメドが立ち、リスク回避の流れが反転するでしょう。簡単には以下の通りです

「クレディ・スイスをUBSが買収で合意 スイス政府などの支援で」

スイスのベルセ大統領やスイス中銀などは「UBS」が「クレディ・スイス」を買収することで合意したことを明らかにした。
「UBS」が株式交換の形で買収し、総額は30億スイスフランになる見通し。この提案は「クレディ・スイス」の企業の価値を示す時価総額・およそ1兆円を大きく下回るもの。
交渉はスイス政府や中銀の支援があったことでまとまった。アジア金融市場が開く前に強力に交渉を仲介。
またスイス中銀は最大で1000億スイスフラン超える資金供給支援を行う。
国際協調でドル資金供給も行う。

 円は徐々に上昇。テクニカルでいえば2月27日週のカブセ線から3週連続陰線。12通貨の順位を週ごとに11位から9位、7位と上げてきた。先週と3月ここまでは最強通貨。SVBとCSでの信用不安で、避難通貨としての円が買われている。避難ではなく、リスク回避で円キャリーの戻しがある。日本企業の年度末決算を控えてのリパトリも慌てて出ているのだろう。

 一番重要なことは貿易需給に変化が出ていること。2022年は史上最大の貿易赤字となり、輸入は前年比で40%超え、50%超えもある月が続いた。ただ2023年に入っては1月が17.5%増、2月は8.3%増と伸び幅を縮小してきた。まだ貿易赤字であるが、基調は赤字縮小となってきた。SVBやCS信用不安は、いずれ解決していくが、そうなっても日本の貿易赤字が縮小している以上、急激な円安とはならない。黒字になれば一気に円高となる。原油、天然ガス価格が急落しているのが赤字縮小の大きな要因だ。それは世界的な金融引き締めというより、政治での需給緩和政策が功を奏した。米国のインフレも目標の2%には遠いが確実に低下し金利も低下している。もう一度ロシアが無謀な行為をして原油価格が暴騰する可能性は救いだろう。円高傾向が暫く続くのではないだろうか。

*米ドル「通貨4位(3位)、株価(NYダウ)17位(19位)、FOMCは0.25%利上げ予想。信用不安問題あるが、物価低下は続くのでドルの頭は重い」
 CSとSVBの同時信用不安では関連当局は即座に流動性を供給し、世界中の当局は、自国に信用不安の悪影響はないと表明した。バイデン大統領や格付け会社も金融システムの健全性を強調した。しかし世界の株価の下落は、関連銀行の損失をはるかに上回る約60兆円とも言われ市場の混乱が続いている。週末もクレディスイス救済の取り組みが続いている。

 今週はFOMCが開催される。信用不安の件もあるが、2月消費者物価・生産者物価も低下、インフレ期待も低下しているので0.25%の利下げが予想されている。米国の経済指標はマチマチだ。雇用は依然、逼迫、鉱工業生産、小売売上、住宅は改善しているが、ミシガン大消費態度指数、フィラデルフィア連銀製造業、消費者信頼感指数は悪化している。
OECDは米国の成長率予想は今年が1.5%、来年は0.9%。金利上昇が需要を冷やし成長が減速するとみる。労働市場が予想以上に堅調なことから、今年の予想は昨年11月の0.5%から引き上げたが、来年の予想は1.0%からわずかながら下方修正した。

 今週は中国の習国家主席がロシアを訪問する。ウクライナ戦争が長引くかどうかも米国の景気にも影響するだろう。

*ユーロ「通貨6位(6位)、株価6位(2位)DAX、インフレ重視での0.5%利上げは株下げに、リスク回避に影響」
 ECBは0.5%の利上げを行った。インフレを重視したということと、今回のSVBやCSの信用不安は、ユーロ圏の銀行への影響は少ないということのようだ。ビルロワドガロー仏中銀総裁は、「強力な二つの自信を示したと思う。われわれのインフレ抑制戦略に対する自信と欧州・フランスの銀行の堅実性に対する自信だ」と述べた。総裁は、ECBには「銀行の流動性を確実にする手段」があるが、「欧州の銀行の状況は米国の銀行と同じではない」ため、そうした手段の活用が必要になる可能性は低いと述べた。

 世界の当局は同じような考えであり、厳しい見方をする格付け会社も各国の銀行の健全性を強調した。ただ世界の株価は銀行株を中心に大幅に下落した。ゴールドマンサックスの試算では約60兆円が失われたようだ。これが消費に影響すれば金融当局も金融緩和などの手を打つ必要が出てくるか。あるいは金融システムが健全なのに株価の問題まで配慮できないと主張すれば、売り玉が枯渇する迄、リスク回避の動きが続くだろう。今週は消費者信頼感や製造業&サービス業PMIで欧州の景気をチェックしたい。景気回復が見られればユーロは強含む。

*ポンド「通貨2位(5位)、株価14位(10位)、年初来2位へ浮上。インフレ低下、成長率改善見通し。政策金利は0.25%利上げか」
 良き材料はないものの、SVB、CS事件では米国、スイス、ユーロ圏より距離があることと、リスク回避で下落する新興国通貨を横目に見ながら年間順位を先週は5位から2位に上げた。絶対的な良き材料はないが相対的に上げたということだろう。

 ハント英財務相は、英経済は2023年にマイナス成長に陥るものの、リセッション入りは回避できるとの見通しを示した。23年の経済成長率見通しをマイナス0.2%とする新たな予測を発表。予算責任局が昨年11月に示した予測はマイナス1.4%だったが、昨年11月以降、ロシアのウクライナ侵攻開始を受け高騰したエネルギーコストは低下。「国際要因に加え、政府の対策により、英国が23年にテクニカルなリセッションに陥ることはないと予測した」と述べた。英経済成長率は24年に1.8%、25年に2.5%になると予測。従来予測は24年が1.3%、25年が2.6%だった。インフレ率は22年4Qの10.7%から、23年末までに2.9%に低下すると予測。

 今週の政策金利では金利先物市場は、利上げを停止する確率を約40%と予想。先週は10%前後だった。0.25%利上げの確率は約60%。その他、消費者物価、経常収支、消費者信頼感 小売売上 製造業&サービス業PMIと重要指標の発表が多い。

*豪ドル「通貨11位(11位)、株価11位(13位)、利上げ打ち止め論と資源価格低下で弱い」
 先週は、米国のSVB事件、スイスのCS信用不安でリスク回避の動きとなったが、豪はやや地理的も離れていることもあり、下落幅が小さかった。ただ年初来では11位と弱い。

 RBA総裁は利上げサイクルの停止に近づいていると述べたが、次回4月の政策金利見通しは分かれている。豪国内4大銀行のうち、コモンウェルス銀行、NAB、ANZは、4月の理事会で11回目となる利上げを継続すると引き続き予想。政策金利を0.25%引き上げ3.85%にするとの見方を示した。うち2行は政策金利が5月に4.1%でピークに達すると予想した。ウェストパック銀行のエコノミストは、4月で10カ月に及ぶ引き締めサイクルを一時停止するとの見通しを示した、最近の世界の銀行システムの混乱を受けて、豪中銀が4月の会合で現在3.6%の政策金利を引き上げるとはもはや想定していないと述べた。金利のピークに関する予想も0.25%引き下げ3.85%とした。

 経済指標では雇用はまだひっ迫感はあるが、企業景況感指数、消費者信頼感指数は強くはない。資源価格の下落が続いてることも豪ドルの弱材料だ。

*NZドル「通貨9位(9位)、株価9位(11位)、リセッション懸念、弱かった4Q・GDP」
週は対円では下落も、SV事件もCS事件も影響は少ないと下げ幅は小さく週間2位、ただ年初来では9位と弱い。2022年4Qは前期比0.6%減と、予想の0.2%減よりも大きな落ち込みを記録した。中銀の積極的な利上げが、設備投資や消費支出を抑制した。3Qの1.7%増(改定値)からマイナス成長に転じた。
前年比の成長率は2.2%に鈍化。1次産業と製造業の低迷を映した。設備投資の減少が運搬機器、その他機器や機械の生産減を招き、食品・飲料・タバコの生産減を反映して乳製品や食肉の輸出が減ったと説明した。
 
 中銀は4Qが0.7%のプラス成長になると予想しており、想定外の結果となった。マイナス成長を受けて、追加利上げのペースを鈍らせる可能性があろう。オア中銀総裁はインフレを抑制するために浅いリセッションを引き起こす必要性を認めている。4Q経常収支は赤字、今週の2月貿易収支も赤字の継続となりそうで、需給面での支えもない。盛り返すとすれば観光業のさらなる回復だが、NZ議会は議会ネットワークに接続できる端末で中国系動画投稿アプリ「TikTok」を利用することを禁止した。最大貿易相手国の中国との関係悪化は観光収入の減少にも繋がるだろう。