本記事は、川﨑康彦氏の著書『ハーバードの研究員が教える脳が冴える33の習慣』(アスコム)の中から一部を抜粋・編集しています。

「考えるより、すぐ実行」がハーバードの秘訣

ステップ,行動
(画像=TKM/stock.adobe.com)

経験からのインプットは思い込みの可能性が高い

ハーバードの研究者たちの輝かしい実績は、知識を大量にインプットして、それをアウトプットすることから生まれていると思われるでしょう。つまり、まずインプットをして、それが研究に値するかどうか検証してから、アウトプットに移すと。ところが実際は、インプットは、アウトプットほど重要視していないのです。

その理由の1つは、自分の経験から得た知識は、思い込みである可能性が高いと知っているからだと思います。ある程度インプット量が蓄積してからでは、もう遅いのです。旬はすぎてしまっているも同然です。その知識を持っているがゆえに、できないと判断し、未来の可能性を狭めていることもあります。

今、私たちが持っているものを、知識という思い込みにとらわれずに、いかにアウトプットしていくかということが重要です。

アウトプットまでがやたら早い

ハーバードにいた頃、コーディネイト力の優れたボスたちと接していると、彼らが共通して持っている大きな特徴があることに気がつきました。

それは、インプットしたものをアウトプットに移す時間がやたら短いこと。つまり、行動に移すまでが、とても迅速だったのです。

私たちは普段、何か情報やヒントを得て仮説を立てたとしても、実行に移すのには時間がかかります。そこには、「本当にこの仮説は正しいのか?」「実行に移すだけの価値のあるものか?」「今ある常識に抗ってもいいものだろうか?」といった疑いが働くからです。いわば、脳が行動にブレーキをかけている状態です。

しかしハーバードでは、アイデアに沿った参考文献や、他の例などの情報が手に入れば、すぐにチャレンジしてみようという考え方が徹底されていました。自分のワクワクのために、インプットしたものから何が発見できるのか、もしかしたら大いなる発見につながるのではないか、という思いを早く実験で確かめたいという気持ちに満ちていました。

時には、プロジェクトのリーダーであるボスから、テレビを観ていて「こんな実験を思いついたんだが、やってみてはどうだろう」というメールが送られてくることもありました。内容は、かなり子どもじみたものも多かったような……。1%の可能性もムダにしないという姿勢です。アイデアの膨らませ方が大事なのです。

そんな調子なので、私からも何かひらめきやアイデアを思いつくと、ボスなど目上の人にも気軽に発言ができました。いつもアンテナを張ることにもつながったので、ボスはとてもよい環境を作ってくれていたと記憶しています。

グループミーティングで、次のような実験の例が紹介されたこともあります。

ある日、ボスが家族と観ていた人気情報番組の唐辛子特集で、唐辛子の辛み成分であるカプサイシンの鎮痛ちんつう作用が紹介されていました。タイでは古くから痛みを抑える民間療法として、唐辛子が使われていたのだそうです。

それまでの私たちの概念では、カプサイシンは刺激を与える作用が一般的でしたが、逆の抑制作用があることに驚き、興味をそそられたボスはさっそく私の同僚の研究者に「神経細胞にカプサイシンを流すとどういった反応が見られるか調べてみては?」とメールをしたのだそうです。連絡を受けた同僚が実験してみたところ、カプサイシンには刺激だけでなく、鎮痛効果もあるという実験データが得られました。

恐らくボスは、テレビを観ながら家族で団らんしているときにも、常に実験のことにアンテナを張り巡らせていたのだと思います。それによって研究現場ではない場所でのインプットが可能になり、さらにアウトプットを提案された同僚も素早くそれに反応したことで、大きな成果が得られたというわけです。

先送りにしてしまう人は成長を止めてしまう

もちろん、その提案通りに実験をしたとしても、結果が得られずに終わることもあります。しかし、この例のように、インプットからの素早いアウトプットが、思いもよらないような大きな発見の起爆剤になることがあったのは事実です。

また、インプットからアウトプットまでの時間を短くすることは、自分にとって欲しい成果が早く表れるというメリットがあります。

私にもメンターがいますが、彼らの共通の言葉に「何かを知ったときに、すぐに実行する人は伸びるが、逆に先送りにしてしまう人は伸びない」というものがあります。

こうした言葉からも分かるように、何か情報やヒントを得たら素早くアウトプットをすることは、研究者に限らず、どの分野の人でも成長の糧になるのではないでしょうか。

このことをハーバードのボスの行動から学んだことで、私もインプットによって何かアイデアがひらめくと、先のことを考えるよりもまず、アウトプットの方法を考えるようになりました。

脳が冴える 33の習慣
川﨑康彦
医学博士。脳科学者。元ハーバード大学医学大学院研究員(2003~2008年)。
専門は神経生理学。佐賀大学医学部大学院神経生理学博士課程卒業。中国医科大学(旧満州医科大学)医学部卒業。中国では、東洋医学と西洋医学の両方を学ぶ。
その後、これまでの研究成果を買われ、ハーバード大学医学部ブリガム・アンド・ウィメンズ病院麻酔科の研究員として招かれる。在籍中に、論文がネイチャー関連誌にも掲載される。
日本に帰国後は、医学博士、理学療法士、カウンセラーとして運動、睡眠、痛みなどに対し、多方面からの知識でアプローチしている。
現在は、チャレンジ、感動、旅を通して「多様な脳の共存、共感、共鳴を通して個々の意識と集合意識の成長」をテーマに研究活動を展開し、それらを通して社会に貢献していくコミュニティIBTA(Impact your Brain and Tuning them All)実現のための活動のほか、脳の研究とハーバードでの経験から得た、固定概念を覆して生き方を変えるためのメソッドをオンラインサロンで伝えている。

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