本記事は、川﨑康彦氏の著書『ハーバードの研究員が教える脳が冴える33の習慣』(アスコム)の中から一部を抜粋・編集しています。

「人との交流」「会話」の中に、新たな発見を求める

発見,ひらめき
(画像=vegefox.com/stock.adobe.com)

考え方の癖を変えるおしゃべり

ハーバードの各研究所には、毎日のように訪問客が来ていました。

最先端の研究を行う施設といえば、機密事項が多いことから外部の人を厳重に遮断しているように思われがちですが、実態はその逆。さまざまな訪問者を受け入れるオープンな環境だったのです。

本来、研究者は実験の最中に他人に見られるのを嫌がる人が大半だと思います。

私も当初は、実験の標本を作製するためにラットの手術をしているときに、「今触っている神経は何というの?」「そこの血管は何ですか?」などと外部のゲストから話しかけられることに戸惑いました。緊張したり、話しかけられて気が散ったりするからです。顕微鏡けんびきょうのぞきながらの操作なので、最初は集中力を保つのにひと苦労していました。

しかし、ハーバードでは頻繁にゲストや実験の見学に来る学生がいるのが普通ですから、いつの間にか慣れてきます。

それに、ゲストからの疑問に答えることで、自分が取り組んでいる実験を多角的に見つめ直すことができます。その結果、失敗を発見したり、それを避けたりできることに気がつきました。

そして、教授など影響力の高い人ほど、質問をよくされ、多くの事に気づきをもたらしてくれました。コミュニケーションの上で、質問力はとても重要であると、研究室で学びました。

また、ハーバードでは、研究室外とのコラボレーションも活発に行われていました。

ハーバードの関連病院が街の一角にドーンとまとまってあり、さまざまな研究者と知り合える機会があったからです。また、いろいろな病院のカフェテリアにも自由に入れたので、例えば、私の専門ではない小児病院のカフェテリアで、そこにいる人と交流もできました。

抵抗感があるからこそ固定観念を打破できる

実験中、私たち研究者は休憩スペースでひと息つきます。そこでもゲストの出入りが自由にできましたから、実験についてさらに詳しく話をすることもありました。

中には、私よりも明らかに年上で経験豊富な研究者の方から質問を受けることもあります。しかし、お互い同じ研究に興味を持つ者同士なので、そこでは年齢や上下関係などありません。ワクワクする事柄について意見を交わすことで、いつしか夢中になって話し込むこともしばしば。そこから、研究の次のヒントをもらえることもありました。

ゲストが帰った後、ボスから「彼は、この後講演される◎◎◎さんだよ」と聞いて、あまりにも有名な研究者だったことに後になって驚いたり、冷や汗をかいたりすることもありましたが……。

しかし、ワクワクをテーマにすると、互いの立場の垣根を越えて交流できます。

知らない人と話すのは億劫おっくうだから、想定外の訪問客は歓迎できない ―― そう考えているときは、頭が固定観念にとらわれています。抵抗感があるからこそ心を開いて、人との交流を楽しんでみると、脳はいつもの考え方をやめて新たな発見につながることがあります。当たり前のことや、常識が発明の壁となることもあります。私はハーバードで身をもって体験しました。

年を取るにつれ、人との交流が減りがちな人も多いと思います。誰とも話さなくなると脳の機能は低下し、外出しなくなると運動機能は落ちます。将来の認知症や寝たきりを防ぐためにも、人と交流し会話をすることが大事です。

以前のような大家族で過ごすことがなくなった今、より重要なのはワクワクし、行動を共にできる「心地よくいられるコミュニティ」を持つことです。

ワクワクは、脳を育てるエンジンのようなものです。ワワクして行動を共に続けると、結果がどうであれ、自分の脳細胞にも相手の脳細胞にも変化が起こり、コミュニケーションが広がっていきます。

私は、IBTA(incredible brain team association)というコミュニティを、主にオンラインサロンで仲間と運営しているのですが、ここでは、ヨガや音楽などの部活動や、イベント、交流会などを開催して、興味あることを自分で楽しむだけでなくそれを共有し共感し、共鳴して仲間で更に大きいステージでチャレンジする機会を提供しています。

こうしたコミュニティを持ち、メンバーと一緒に挑戦し、共に喜び、祝福しあえたら、脳はさらに進化を続けるでしょう。そして、その先には何が待っているのでしょうか? それは本当の自分らしさに気づき、自分を愛すること、家族を愛すること、出会ったすべての人を愛すること、動物や植物、自然を愛することだと思います。自分が新しいことに挑戦するとき、それを応援してくれるようなコミュニティを、できれば3つ以上持つのがお勧めです。

脳が冴える 33の習慣
川﨑康彦
医学博士。脳科学者。元ハーバード大学医学大学院研究員(2003~2008年)。
専門は神経生理学。佐賀大学医学部大学院神経生理学博士課程卒業。中国医科大学(旧満州医科大学)医学部卒業。中国では、東洋医学と西洋医学の両方を学ぶ。
その後、これまでの研究成果を買われ、ハーバード大学医学部ブリガム・アンド・ウィメンズ病院麻酔科の研究員として招かれる。在籍中に、論文がネイチャー関連誌にも掲載される。
日本に帰国後は、医学博士、理学療法士、カウンセラーとして運動、睡眠、痛みなどに対し、多方面からの知識でアプローチしている。
現在は、チャレンジ、感動、旅を通して「多様な脳の共存、共感、共鳴を通して個々の意識と集合意識の成長」をテーマに研究活動を展開し、それらを通して社会に貢献していくコミュニティIBTA(Impact your Brain and Tuning them All)実現のための活動のほか、脳の研究とハーバードでの経験から得た、固定概念を覆して生き方を変えるためのメソッドをオンラインサロンで伝えている。

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