本記事は、川﨑康彦氏の著書『ハーバードの研究員が教える脳が冴える33の習慣』(アスコム)の中から一部を抜粋・編集しています。

脳を目覚めさせるキーワードは「ありがとう」

Thank you
(画像=Tierney/stock.adobe.com)

最後にものを言うのは自由な発想力

脳が冴えるというと、皆さんはどんなイメージを持つでしょうか。

あらゆることをすぐに記憶できることでしょうか。斬新で画期的なアイデアが、次々と浮かぶことでしょうか。

そうしたことも大切ですが、ハーバードの研究所では、これまでの経験や思い込みにとらわれない、自由で柔軟な発想ができることを最も重要視します。どんなビジネスも研究も、最後は人から生まれた発想がカギだからです。

常識や知識にとらわれない、私たち一人ひとりの、自由で、闊達で、なんの固定観念にも縛られない発想。たとえ、それが当たり前で一般常識だと思われることに対しても。それこそがハーバードの研究員の特徴であり、価値なのです。

脳に自由な発想をさせるには、それをさまたげる脳のブロックを外します。その最初の取っ掛かりとして提案したいのが、「心がオープン」でいることです。

それには、「ありがとう」と感謝の言葉を口に出すことが、実は、最も簡単で効果的です。

そんなことが? と思われたかもしれません。

でも、ありがとう、という言葉は、これから起こることがよい方向になるよう脳のレベルで左右するのです。

ハーバードの研究所にいた頃、愛情や感謝の言葉を照れることなく伝える人が多くいました。愛情表現が苦手でシャイな日本人が多い日本とは、国柄の違いもあるかもしれません。

しかし、いずれにしても、彼らはこの行動を通して、脳を自由な発想ができる状態に維持していたのです。

なぜ、他人に愛情や感謝を伝えると、自由な発想ができるのでしょうか。その秘密は、心がオープンである状態、つまり「オープンハート」という言葉が握っています。

その仕組みはこうです。

人の脳は、ネガティブな感情にいったん縛られてしまうと、思考にブロックがかかり、固定化されてしまいます。脳には、心が大きく動いたときのことを忘れないようにする働きがあるからです。オープンハートとは逆の状態、心を閉ざした状態になっているといえるでしょう。

このように、過去のネガティブな感情から思考が固定化すると、脳へ情報を伝達するシナプスの働きがパターン化してしまいます。その結果、これまでの経験や知識にとらわれ、新しい発想が生まれにくくなってしまうのです。

脳のブロックを解放する最良の方法が、感謝の気持ちを持ち、「ありがとう」と口にすることです。簡単そうですが、思考が固まっているとなかなかできません。

だからこそ思考を固まらせている過去の感情を、新しく感謝の感情に変えることで、相手に向かって心が開いた状態、いわばオープンハートの状態を作ります。

「ありがとう」の言葉によって心がオープンになると、ワンパターンだったシナプスの働きが変わります。ありがとうという感謝の言葉が、脳細胞と脳細胞、さらには新しく作られた脳細胞のシナプスをつなぐのです。つながりがどんどん広がることで、独自のアイデアが生まれ、固定化した観念や信念から解放され、自分の素直な心に従って行動ができるようになります。

「ありがとう」と言うこととハーバードの研究は似ている

ありがとうは、物事の結果に対しての締めの言葉に思われがちですが、脳の働きから考えると、得られる結果よりもその過程や質を左右する言葉です。オープンハートにより、考え方が変われば、選ぶ行動も変わってきます。すると、おのずと結果も変わるからです。句読点で例えるなら、感謝は「、」で続き、文句や不平不満は「。」でコミュニケーションが途絶えてしまいます。「ありがとう」には、句読点のように、コミュニケーションをつなぐ作用があるわけです。

実は、研究にも同じことが言えます。

結果だけが注目されがちですが、実際にはどんな手順を選ぶのか、それらをどう結びつけて1つのストーリーにするかが重要で、その質により結果は大きく異なります。だからこそ、いつも心をオープンにして、あらゆる考え方ができるようにしておくことが重要視されるのです。その結果、論文が採用される確率も高くなります。

家族への感謝を表す場として、ハーバードでは毎年、クリスマスシーズンになると、家族同伴でパーティーが開催されていました。

主にボスである教授が主催するこのパーティーでは、研究仲間の家族をもてなすために、料理や催しなどが用意されます。参加者は皆、1年間支えてくれた家族に心から楽しんでもらえるように、全力で趣向をこらします。そこでは、一切の見栄や恥のかけらもないほど、皆が子ども心に戻ってエンターテイナーになって、周りに楽しみを与えることだけを考えて行動します。

身近な人に感謝の気持ちを示すことができた彼らだからこそ、常にオープンハートが保たれ、研究に打ち込める自由な発想を維持できたのではないでしょうか。

脳が冴える 33の習慣
川﨑康彦
医学博士。脳科学者。元ハーバード大学医学大学院研究員(2003~2008年)。
専門は神経生理学。佐賀大学医学部大学院神経生理学博士課程卒業。中国医科大学(旧満州医科大学)医学部卒業。中国では、東洋医学と西洋医学の両方を学ぶ。
その後、これまでの研究成果を買われ、ハーバード大学医学部ブリガム・アンド・ウィメンズ病院麻酔科の研究員として招かれる。在籍中に、論文がネイチャー関連誌にも掲載される。
日本に帰国後は、医学博士、理学療法士、カウンセラーとして運動、睡眠、痛みなどに対し、多方面からの知識でアプローチしている。
現在は、チャレンジ、感動、旅を通して「多様な脳の共存、共感、共鳴を通して個々の意識と集合意識の成長」をテーマに研究活動を展開し、それらを通して社会に貢献していくコミュニティIBTA(Impact your Brain and Tuning them All)実現のための活動のほか、脳の研究とハーバードでの経験から得た、固定概念を覆して生き方を変えるためのメソッドをオンラインサロンで伝えている。

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