バーナンキ前FRB議長は、「金融政策の98%が『トーク』だ」と10月8日に発言しているが、中銀の発言の影響力が近年、過大になりすぎているとして、懸念を示す論客もいる。
ハーバード大学経済学部のケネス・ロゴフ教授は11月3日付の著名論客が投稿する論評サイト『プロジェクト・シンディケート』で、「中銀の当局者は、金利をいつも自由に上げ下げできるわけでもないし、経済をより正確に分析できる堅固な経済学のモデルを打ち立てたわけでもない。一方、彼らの経済成長やインフレ率の予想は、大きく外れてばかりだ」として、中銀当局者の信頼性に疑問を投げかけた。
そしてロゴフ教授は「多くの人は、中銀の全能性を演出したアラン・グリーンスパン元FRB議長が、中銀の過大な影響力の元凶だという。だが、グリーンスパンが辞めてからも、その傾向は大きくなるばかりだ」と指摘した。
同教授は、「中銀当局者の発言の過大評価は、彼らの言ったことに市場がストレートに反応できるところに由来する」と看破。「FRBの高官がタカ派の発言をすれば、少なくとも短期的に、たいていの場合ドル高になり、株価は下げ、長期金利は上がる。この予見可能性こそ、市場に確実に儲けが転がり込む格好のターゲットなのだ」と述べた。
つまり、中銀当局者は投資家の市場操作に、図らずも協力しているのである。
翻って、黒田日銀の追加量的・質的緩和に関連して、シーブリーズ・キャピタルのダグ・カス氏は、「何だかんだ言っても、要するに量的緩和の世界なのだ」と感想を述べた。日銀がトークだけでなく、アクションを放ったからだ。また、CNBCの解説者、ボブ・ピサニ氏が一言でまとめたように、「日銀の決定は、株の強気論者にとって、とても嬉しい贈り物」なのである。
だが、FRBにせよ、日銀にせよ、欧州中央銀行(ECB)にせよ、すぐにトークの世界に戻らざるを得ない。英語には“Talk is cheap.”という言い回しがある。「言うだけなら金はかからない」という意味である。市場は、中銀当局者の発言をいつまで、どこまで信用できるだろうか。
(在米ジャーナリスト 岩田太郎)
(ZUU online)
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