中小企業が人材確保につながるアイデア
中小企業は会社自体の知名度や人事担当者の人数面などで大企業に比べて劣るため、人材確保が難しいという課題がある。ここでは、採用面や定着面などに着目して、人材を確保するためのアイデアを紹介する。
【大前提】自社に必要な人材を明確化する
人材確保の大前提として、自社に必要な人材を明確にすることが大切だ。
人手不足とはいっても、社会人としての基礎力が低く自社の社風とのマッチ度が低い人材を採用すれば、育成に時間がかかったり、既存社員のモチベーションを下げて離職率が上がったりする恐れがある。
短期だけでなく中長期的な経営目標を立案した上で、必要な人材のスキルや人柄などといった人物像、理想とする組織構造などをはっきりさせよう。
その上で、経営者として自社の将来的な目標と人材マネジメント方針を内外にアピールすることで、人材採用や定着率向上のための活動の効果が高まるだろう。
【採用】求人募集の方法を最適化する
採用活動においては、求人募集の方法を最適化することが大切だ。
中小企業が利用する求人広告としては、ハローワークや求人サイト、フリーペーパーなどが一般的だ。しかし、どれだけサービスを利用しても応募数が想定を下回れば人材確保はできない。
過去の求人募集の実績から効果の高い方法を利用しつつ、リファラル採用のような社員からの紹介、人材紹介サービスが所有する候補者に直接アプローチするダイレクトリクルーティングといった募集方法も検討しよう。
【採用】自社で働くメリットやデメリットを伝える
自社とマッチ度の高い人材からの応募を増やすためには、自社で働くことによるメリットやデメリットなどの情報発信も大切だ。
就職活動で中小企業への入社を希望している学生へのアンケートによると、職場の雰囲気や人間関係の良さ、自分の強み・能力が発揮できるといった回答が上位を占めている。
求職者が求めていることを想定した上で、自社の職場の雰囲気、既存社員が感じているやりがい、自社の有給休暇や育休制度の利用状況など、メリットを積極的に伝えることが大切だ。
デメリットについては、「人数が少ない」ならば「アイデアが形になりやすい」「相互サポートがしやすい」などのように、メリットと関連づけて伝えることが大切だ。
【採用】選考試験の内容を見直す
自社が必要とする人物像と近い人材を採用するためには、選考試験を見直すことも欠かせない。
中小企業の選考試験は、採用担当者の人を見抜く力だけに頼りがちだ。客観的な視点を入れるためにも、面接には配属予定先の管理職や現場社員の同席も検討しよう。
また、SPIや玉手箱、TG-WEBといった筆記試験を行い、基礎的な学力や性格適性を確認しておくと、主観的な視点による偏った人材採用になりにくいだろう。
【定着】職場の環境整備を進める
職場の環境整備は、社員の定着率アップのために最初に取り組むべきことだ。
中小企業社員の離職理由の上位には「人間関係への不満」が上位にあり、配置転換を行うことでコントロールする必要もある。中小企業では配置転換が難しい規模の事業所が少なくないため、問題の根本原因をはっきりさせて適宜指導を行うことが大切だ。
また、職場で社員が快適に働けるように、居住性の改善はもちろん使用するパソコンなどの設備・機器の定期的な見直しなども考慮しよう。
【定着】人材育成の制度を整備する
社員の定着率向上には、人材育成制度を整えることも大切だ。
中小企業の社員育成は現場でのOJTが大半を占め、社員のキャリアに応じた人材育成が行われているとは言い難く、個人の意識や努力に委ねられるため、不満を感じてしまうことが少なくない。
自社ですでに活躍している人材をロールモデルとして人材育成制度を整備し、継続的に社員育成に取り組む姿勢を示すことが大切だ。
【定着】人事評価制度の透明性を高める
賃上げなどの待遇改善が難しい中小企業では、人事評価制度の透明性を高めることが大切だ。
そもそも社員一律で待遇を改善しても、自社にとってキーマンとなる優秀な人材は待遇に満足できずに離職してしまう恐れがある。そのため、成果を上げることで相応の待遇が得られることを示しておく必要がある。
そのためには、人事評価制度の評価項目や基準を定めた上で公開し、場合によっては上級ポストを新しく構築することも大切だ。
【その他】外部人材を活用する
新規事業を行う場合や社員の離職などによって一時的に人手不足な状態ならば、スキルや知見を持った外部人材に業務委託することも考慮しよう。
人材採用や社内人材の育成には時間がかかることが多く、人材確保の遅れによって事業チャンスを逃してしまう恐れがある。
クラウドソーシングサービスなどの普及もあり、人事やマーケティング、デザイン、事務、営業など幅広い業務の外注化が容易になっているため、社内での人材確保にこだわり過ぎないことも大切だ。
【その他】多様な働き方に対応する
働き方改革の施行やコロナ禍などの経験を通して働き方の多様化が進む中、中小企業でも人材確保のために社員のワークライフバランスを意識した取り組みが求められている。
一部業務に対するテレワークの適用、フレックスタイム制の導入、副業兼業の許可など、社員が多様な働き方ができるような制度設計を行うことで、従業員満足度を高めることが、定着率の向上にもつながるだろう。