ローランド・ベルガー小野塚氏が提唱「サプライチェーンからサプライウェブへ」日本のモノづくりはこんなに変わる

サステナビリティなどの取り組みが世界的に広がる中、日本の製造業も新たなグローバル競争に直面しつつある。そういった中、従来のサプライチェーンが変化し、新たな価値観を満たす「サプライウェブ」という考え方に注目が集まりつつある。海外メーカーの動向にも詳しい東芝 デジタルイノベーションテクノロジーセンター、チーフエバンジェリストの福本勲氏の対談企画「DXエバンジェリストが斬り込む!」の二回目となる今回はサプライウェブに関する著書もあり、その道のオピニオンリーダーであるローランド・ベルガー パートナーの小野塚氏を迎え、日本のモノづくりの未来について、熱い議論が交わされた。

鼎談レポートシリーズ
左より小野塚 征志氏(株式会社ローランド・ベルガー)、福本 勲氏(株式会社東芝)

<対談者紹介>

小野塚 征志氏
慶應義塾大学大学院政策・メディア研究科修了後、富士総合研究所、みずほ情報総研を経て現職。
サプライチェーン/ロジスティクス分野を中心に、長期ビジョン、経営計画、新規事業開発、M&A戦略、事業再構築、構造改革、リスクマネジメントをはじめとする多様なコンサルティングサービスを展開。
経済産業省「持続可能な物流の実現に向けた検討会」委員、内閣府「SIP スマート物流サービス 評価委員会」委員長などを歴任。
近著に、『DXビジネスモデル -80事例に学ぶ利益を生み出す攻めの戦略』(インプレス)、『サプライウェブ -次世代の商流・物流プラットフォーム』(日経BP)、『ロジスティクス4.0 -物流の創造的革新』(日本経済新聞出版社)など。
福本 勲氏
株式会社東芝 デジタルイノベーションテクノロジーセンター チーフエバンジェリスト
アルファコンパス代表
1990年3月、早稲田大学大学院修士課程(機械工学)修了。1990年に東芝に入社後、製造業向けSCM、ERP、CRMなどのソリューション事業立ち上げやマーケティングに携わり、現在はインダストリアルIoT、デジタル事業の企画・マーケティング・エバンジェリスト活動などを担うとともに、オウンドメディア「DiGiTAL CONVENTiON」の編集長を務める。また、企業のデジタル化(DX)の支援と推進を行う株式会社コアコンセプト・テクノロジーのアドバイザーも務めている。主な著書に「デジタル・プラットフォーム解体新書」、「デジタルファースト・ソサエティ」(いずれも共著)がある。主なWebコラム連載に、ビジネス+ITの「第4次産業革命のビジネス実務論」がある。その他Webコラムなどの執筆や講演など多数。(所属及びプロフィールは2023年4月現在のものです)

目次

  1. サプライチェーンからサプライウェブへ、その違いとは
  2. 「コトづくり」論の真相、「買わなかった理由」が分かることの意義とは
  3. サプライウェブを実現するための人材、プロジェクトチームの姿
  4. 日本企業にとってのDX、決して不可能ではない
  5. カーボンニュートラルは日本企業が避けられない新たなテーマ

サプライチェーンからサプライウェブへ、その違いとは

――取引先が固定化する従来のサプライチェーンから、より柔軟に企業間が連携する「サプライウェブ」へと移り変わるというのが今回のテーマですが、まずその概要についてお聞かせください。まず、既存のサプライチェーンと、サプライウェブの違いについてどのように考えればいいでしょうか。

福本 自動車業界で言えば、従来はピラミッド構造の頂点にOEMメーカーがあり、Tier1、2などの企業がその配下にあって、電装品や部品をどの企業が作るかも固定化されていたと思います。自動車というモノを作るだけであれば、このままでもよいのですが、今後、さまざまな社会課題への対応を考えると新たな企業とのマッチングが必要になると考えます。これがサプライウェブの考え方の根幹にあるのではないでしょうか。サステナブルな取り組みを進めていくためには、信号などの社会インフラや他の自動車メーカーさんが製造された自動車とも連携する必要が出て来ると思います。また、EV化においては、車台が変わってインターフェースが標準化されていけば、現在のパソコンのようにさまざまなサプライヤーが、参加するようになっていくのではないでしょうか。ビジネスモデル自体が大きく変化していくと私は考えています。

小野塚 おっしゃる通りです。新しい取引先や販売先、調達先が生まれる時に、従来のように自動車メーカーがすべてをカバーしようとすると、莫大な投資がかかるでしょう。しかし、自動車メーカーがすべてそれをカバーするという時代ではなくなってきています。自動車とは関係ない取引先も増えるために、第三者がそれを仕組みとして提供する必要が出てきます。自動車メーカーなど元々サプライチェーンのハブとして自らシステムの開発と運用に投資をしていたような企業から見れば、外部のシステムを利用できるため、ある意味でビジネスの運用が楽になる可能性もあるでしょう。

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「自動車業界においても新たな企業とのマッチングが必要になっていきます。EV化においては、車台が変わってインターフェースが標準化されていけば、現在のパソコンのようにさまざまなサプライヤーが、参加するようになっていくのではないでしょうか。ビジネスモデル自体が大きく変わっていくのだと考えています。」(東芝 福本氏)

「コトづくり」論の真相、「買わなかった理由」が分かることの意義とは

――そうした変化の背景に、ビジネスの考えが、モノづくりから「コトづくり」へと移っている流れがあると言われています。そのあたりについて、どのようにお考えでしょうか。

福本 従来の製造業のビジネスモデルはモノをつくってそれを提供して対価を得るというものでした。その時に重視されるのはモノの機能価値です。ただ、それだけですとお客様が作る側が想定していなかったような使い方をした時に対応できません。
今後は、お客様の経験価値を高めるために、モノにサービス的な要素を付加して、お客様、パートナー、場合によっては既存の競合企業とも連携して、価値を作るという考え方に変わっていくでしょう。そのためには、モノが将来的にどう使われる可能性があるのかを考える、システムシンキングやデザインシンキングなどを採り入れることが大事になっていきます。従来の競合や、従来考えていなかったような企業との異業種間競争も前提に考えるべきです。すると、競合企業は従来の競合メーカーに限らなくなり、業種を横断した競争が発生することになるでしょう。
また、顧客の使い方や環境に応じてモノが進化をしていくような取り組みも必要となります。「ソフトウェア・デファインド」のような手法はその1つだと考えています。

小野塚 はい同じ認識です。具体例を紹介しましょう。顧客などの情報収集について、これまでは自動車メーカーが自社で苦労しながらアンケート調査を実施してきました。現在は、違う形でさまざまな情報が取れるようになっています。情報を収集するプラットフォームができています。例えば機械の領域ではレンティオという企業があります。家電を買う前にレンタルで使えるサービスを提供しています。もしロボット掃除機などを自宅に購入したらしっかりと掃除をしてくれるのか。また油を使わずにから揚げを作る調理器具ならその機能が本当にすばらしいのかなどを、レンタルして一定期間に使用して確かめてから、満足すれば購入できるというサービスです。実際に、購入せずに期限が来た際に返す人も多いようで、ユーザーにとってはありがたいサービスと言えます。

面白いのは、企業が欲しい情報は、購入して満足してくれている人のものだけではないことです。なぜ買わなかったのかを知りたいわけです。レンティオが提供する仕組みでは、返す人に対して「なぜ買わなかったのか」の回答を求めています。メーカー側からすると、体験してもらわないと良さがわからないといった家電製品が売りやすくなる利点があります。また、買わなかった理由がフィードバックとして分かるということも重要です。未来の世界では情報が取りやすくなるのですが、それを得るために新たに投資しなくてはならないのであれば大変です。でも、実際にはこのレンティオのような第三者がどんどん増えていくということがこれからのポイントになっていきます。なので、サプライウェブの一例としてのレンティオのような形態のサービスを、いち早く利用した方がむしろローコストな事業運営が可能になると私は考えています。

福本 買わない理由がわかることは、大きいですね。マーケティングの観点でもとても大事な話だと思います。

小野塚 そうなんです。3ヵ月使って買わなかったということは、致命的な理由が存在している可能性があります。

福本 確かに、ECサイトであれば、カートに入れて放置しているなどといった情報が取りやすいですが、リアル店舗だと難しいですからね。手に取った商品を棚に戻したりした人やその商品を捉えることは、なかなかできなかったのではないでしょうか。

小野塚 インターネットの世界の話もしましょう。レシピ投稿サイトのクックパッドでは、投稿を解析するツールが生成した情報を企業などに提供するサービスがあります。もちろん、個人情報などは外してあります。それを見ると、カレーのレトルトパックをパスタにかけて食べているユーザーが見つかったりします。カレーのレトルトをハンバーグに混ぜて使ったり、それを餃子の中に入れていたりといった具合です。その情報の閲覧者が多ければ、クックパッドの情報サービスを利用する食品メーカーとしては「餃子向けのカレールーを作った方がいいかもしれない」となるわけです。

クックパッドとしては、投稿されたレシピの閲覧によって得られる広告収入が事業の柱ですが、付随して得られる情報でも企業から収入が得られるという一石二鳥のビジネスモデルを可能にするプラットフォームになっています。

福本 これも新しいプラットフォームですね。消費者向けにビジネスを展開する企業であれば、採用力の強化にもつながりそうです。

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「買わなかった理由が企業にフィードバックされることは重要です。未来の世界では情報が取りやすくなるのですが、それを得るためには情報提供してくれる第三者がどんどん増えていくということが大事になってきます。」(ローランド・ベルガー 小野塚氏)

サプライウェブを実現するための人材、プロジェクトチームの姿

――こうした取り組みを実施する上で、企業はどんな人を集め、どんなプロジェクトチームを作るといいのでしょうか?

福本 既存の企業が既存のビジネスの中で実施するのはとても難しいと感じます。こういった中、企業の外に特別な組織である「出島」をつくっているような事例が多くあります。ただし、この手法の場合、特定の領域で成功を収めることはあっても、企業の本流の事業とはあまり関連しないケースも目立ちます。それは人の問題もあるのですが、最も重要なのは経営者の考え方ではないかと思います。ゼロベースで物事を考えられるか、新しい取り組みが失敗に終わることを許容できるかといったことが重要なのではないでしょうか。目先の投資対効果を見て、例えば3年間でROIがプラスになることが確約できないと投資が実行されないのであれば新しいビジネスへの取り組みは難しいと思います。風土が変わらなければ、外から人を連れてきても、その人が期待通りに活躍できずに終わるだけになってしまうでしょう。

小野塚 おっしゃる通りです。経営者の考えが重要というのは、むしろ大前提と考えていいでしょう。1つ課題があるとすると、経営者に腹積もりがあったとしても、特に長い歴史を持つ企業では、なかなか前に進まないことが多いのが実態です。そうすると、1つのやり方としては、社外の専門家を利用するということです。戦略系コンサルティングファームは1つですが、ベンチャーとタイアップする、コーポレートベンチャーキャピタルを組織して外の血を入れるといったことも有効です。過去から踏襲している仕事を安定的に回せれば評価されるといったことに慣れている人が多い場合には、福本さんのような突然変異した人が現れない限り難しいわけですよ(笑)。それであれば「コト」に慣れている外の人をうまく使えるかが、鍵を握ることになります。

福本 東芝でも「Toshiba OPEN INNOVATION PROGRAM」という東芝グループが持つビジネスアセット・先端技術を活用し、新たなイノベーションを起こす熱意を持つ企業を募集し、当社グループとの協業を通じて応募企業の事業化の加速を支援するプログラムを実施しています。

日本企業にとってのDX、決して不可能ではない

――経済産業省が2018年に『DXレポート』を発行して話題になりました。その後、『DXレポート2』を含めた数回の更新版が発行されています。しかし、日本企業の多くがまだデジタルトランスフォーメーション(DX)をうまく進められていないと指摘されています。そのあたりの実感や考えている課題があれば教えてください。

福本 2018年に出された最初のDXレポートの内容は、本来の主旨と異なる受け止められ方をし、一部において「DXとはレガシーシステムの刷新である」といった誤解を生んでしまったと言われています。しかし、これはタイミングの問題もあったと思います。ERPパッケージ大手SAPのソフトウェアR3の保守期限が2025年で切れることと、DXレポートが指摘した「2025年の崖」(日本企業がDXを推進しなければ、2025年以降の5年間で、最大で年間12兆円の経済損失が生じるという警告)が偶然一致してしまったのです。後に、経済産業省自身が誤解を与えたことを認めている通り、1つの原因と言えます。

もう1つの理由は、守りのDXという言葉が生まれたことにあると思います。守りのDXはもともとのDXの定義からは外れているのですが、既存のビジネスモデルにデジタルテクノロジーを適用することも含めてDXだという誤った認識を広めてしまいました。これはデジタル化をキーワードに、ツールを販売したいというベンダー側の思惑があったように思います。ただなぜそうなったかと言えば、企業の経営層が、自社の存在意義が未来視点でどうあるべきかという観点で物事を考えてこなかったからということに他ならないと思います。大企業、中小企業を問わず、時々「ビジネスモデルを変えなくてはいけませんか?」と聞かれます。しかし、もし自社の未来の存在価値をゼロベースで考えた結果、それが現在の延長線上にあるのであれば、ビジネスモデルを変える必要はないと思います。

小野塚 1つの例としてカーシェアの話がわかりやすいですね。トヨタ自動車や日産自動車がどう頑張っても、今後増えていくのは目に見えています。まして、自動運転が普及すれば、カーシェアが主流になると考えられます。もちろんクルマ自体が好きなので自家用車を買うという人はいますが、従来のようにかっこいい、燃費が良い、乗り心地が良いといったことの優先順位は下がります。そうした未来を想像した時に、「いいクルマを作る」という観点で本当に20年後大丈夫なのか、ということを考えなくてはいけません。福本さんの指摘通り、ビジネスモデルを変えなくても勝ち残れるならいいですが、逆に、カーシェアの時代が来ることが前提になった時に、どう勝っていきますか?と聞きたくなりますね。

福本 モビリティはもともと、自動車というハードウェアを指す言葉ではありません。今後は本来の意図通りに、モビリティは社会の一部になっていくはずです。ハードウェアであるクルマ単体だけが変わることには、重要な意味がなくなっていくと考えます。

小野塚 確かに、日本企業の多くが苦手とする考え方ですね。日本企業の多くは現場力を強みとして、決まった未来に突き進むことを得意としています。カーボンニュートルなどは最も分かりやすい例ですが、それをゲームチェンジするといった時に、欧州の企業の方が上手に見えますね。

ただし、本当に日本企業が苦手なのかと考えると、そうではないと思っています。よく例に挙げるのが、富士フイルムとコダックの競争です。フイルム型カメラに固執したコダックが負け、変化し続けた富士フイルムは勝ちましたね。富士フイルムはもはや、世界に冠たる化学メーカーになりました。国内でも、国鉄民営化後に始まった自由競争において、観光業へのシフトなど新たな取り組みが勝敗を分けた例があります。確かに、日本企業の苦手分野というのはありますが、決して変われないということはありません。

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「モビリティはもともと、自動車というハードウェアを指す言葉ではありません。今後は本来の意図通りに、モビリティは社会の一部になっていくはずです。ハードウェアであるクルマ単体だけが変わることには、重要な意味がなくなっていくと考えます。」(東芝 福本氏)

カーボンニュートラルは日本企業が避けられない新たなテーマ

――日本企業が今後直面するビジネス環境において、大きく影響を及ぼしそうなテーマとして注目しているものはありますか?

福本 カーボンニュートラルやサーキュラーエコノミー、ESGなどが挙げられます。これは、選ぶというよりは、やらざるを得ないことだと考えます。日本では労働人口はもちろん、市場も縮小していきます。日本市場だけではこれだけ多くの製造業が生き残っていくのは難しくなると思われます。そうすると環境問題などのグローバルスタンダードに準拠して世界で戦う必要が出てきます。

小野塚 その意味では、カーボンニュートラルやサーキュラーエコノミーは分かりやすい外圧ですし、それらは典型的な意味でデジタルが必要な世界ですよね。例えば、カーボンニュートラルを実施するためにScope3――事業活動におけるサプライヤーの温室効果ガスの排出量――を見える化しなくてはいけません。物流において、トラックの積載率など物流を可視化すると、不合理な部分も見えてきます。

そうなると、DXを実施しなくてはいけないというメカニズムも働きます。きっかけとしてのカーボンニュートルは十分あり得ると考えます。ただ、悩ましいのは、ここ30年の日本は、外圧を懸命に受け入れて、受け入れたころには新しい世界がやってくる、といったことの繰り返しでした。このDXの取り組みも、ビジネスにおける遅延を回避するという意味であり、負けないための最低限の武器が揃うということに過ぎないと言えます。

福本 もともと欧州の方が、国々が地続きでつながっているという地理的な条件もあるため、デジュール標準化を得意としていると思います。

小野塚 確かに標準化は欧州が強いですね。ベンチャーの勢いが必要な時は米国が強いです。では日本って何が強いのかというと、対応力、現場力だと思いますが、イノベーティブな感じはしないのが現実ですね。

福本 日本は、従来から、モノづくりの現場が強みを発揮してきました。設計に若干問題があったとしても、モノづくりの現場側で改善するといった流れが起きていたと思います。ただし、今後はハードウェアで制御していたモノをソフトウェアで制御したりするような変化が起きる中で、製造現場の力だけでは製品の品質や価値を作り込むことが難しくなってきています。さらに、製品が複雑化し、メカ設計だけではなく、エレキ(エレクトロニクス)、ソフトウエアの組み合わせ、さらには顧客の利用シーンの想定までをも含めたモノづくりが必要になる中、これらを個々の部門で作りこんでからすり合わせるのではなく、それぞれが連携する形で開発を行うことが求められていきます。その意味ではモノづくり情報の一貫したデジタル基盤は必須になると感じていますが、日本の製造業では部門を超えた連携に消極的なところが多いと感じています。しかし、そのあたりの外部環境は、変化への引き金になってくるかもしれません。

小野塚 その話で言うと、確かに日本企業の中には、中国企業などとの競争の中で、勝ち負けが逆転してしまったような例も見られます。一方で、半導体製造装置のように、モノづくりのためのものを作る装置を作るのは今も得意ですね。ものを作ること自体はどんどんデジタル化し、匠の技が不要になってくるかもしれませんが、それを支えるデジタル基盤にはやはり匠の技が必要です。なので目に見えにくくなるかもしれませんが、実は様々なものを実際に造っているのは日本企業であるといった側面が強くなってくるかもしれません。

福本 確かに、ロボットメーカー市場では、世界4強のうち2つは相変わらず日本メーカーですからね。それは誇るべきことだと思います。もちろん、自動車もトヨタ自動車がいまだに強いですね。

小野塚 はい、今後例えばMaaS(Mobility as a Service)を意識する場合に、既存の自動車メーカーはいかに自動車を作らない会社に進化するかというところがポイントになってきます。自動車を作っていないんだけど、自動車の製造ラインは全部トヨタ製ですといった方向性か、もしくは自動車の使い方はすべて押さえていますといったこともあり得ます。そして福本さんのおっしゃる通り、モビリティは自動車だけではありません。駅に着いたら電動キックボードが待っているとか、雨が降っている日にはバスが手配されているといったイメージの移動プラットフォームを、誰が作るのですかという観点があります。それをトヨタ自動車のような企業が作るというのは、1つの形としてありますね。逆に言えば、そこまでのジャンプアップをトヨタ自動車のような企業は求められているということです。

ソニーがクルマ(電気自動車のVISION-Sを開発中)を作る時代ですからね。現場力だけでなく、日本企業の変化に期待していいと思います。

――日本のモノづくりに夢を持てるような、すばらしいお話でした。福本さん、小野塚さんありがとうございました。

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【関連リンク】
株式会社ローランド・ベルガー https://rolandberger.tokyo/
株式会社東芝 https://www.global.toshiba/jp/top.html

(提供:Koto Online