本記事は、はっしゃん氏の著書『「会社四季報」速読1時間で10倍株を見つける方法』(翔泳社)の中から一部を抜粋・編集しています。
「ローソク足」ってどうみればいいの?
四季報の株価チャートは、「ローソク足」と呼ばれる白黒線で表示されています。
ここでは、チャート選びの説明をする前にローソク足の見方を確認しておきます。
ローソク足は、月初の「始値」から月末の「終値」までの期間が値上がりだったか、値下がりだったかで色分けされています。
- 値上がり 白いローソク足(陽線)
- 値下がり 黒いローソク足(陰線)
ローソク足は、長ければ長いほど、値上がりや値下がりの幅が大きいことを意味します。長いローソク足は、「大陽線」「大陰線」とも呼ばれます。
- 大幅な値上がり 白い長いローソク足(大陽線)
- 大幅な値下がり 黒い長いローソク足(大陰線)
また、ローソク足の上下の細い線は、「髭」と呼ばれるもので、期間の「高値」や「安値」までの長さを表します。
特にローソク足の上側の「上髭線」が長い場合は、株価がいったん大きく上昇したものの、売り圧力が強く下げたことを表し、逆にローソク足の下側の「下髭線」が長い場合は、株価が大きく下げた後に、買いが旺盛になって株価が戻ったことを意味します。
- 上髭線 高値後の下落幅
(長い上髭線は高値圏で売り転換になりやすい) - 下髭線 安値後の上昇幅
(長い下髭線は底値圏で買い転換になりやすい)
「長い髭」が高値圏や底値圏で出現した場合は、転換サインになりやすいので覚えておくとよいでしょう。
速読法ステップ1の「右肩上がりチャート」に付箋をする
ローソク足の見方を理解したところで、それではいよいよチャート選びに入っていきましょう。
株価チャートの選び方が付箋チェックの肝になりますが、その目安もシンプルです。
- 「形」 右肩上がりのチャート
- 「色」 白い( 陽線が多い) チャート
- 「最高値」 数字が右にある半年以内に最高値を付けているチャート
これら3つの条件を全て満たすものに付箋を貼っていきます。では、この3条件について解説していきます。
(1)「形」右肩上がりのチャート
チャートには、右肩上がり、右肩下がり、横ばいなどいろいろなパターンがありますが、付箋を貼っていくのは「右肩上がりに上昇している」チャートです。
ここでは、電機大手4社の株価チャートで確認してみましょう。
- ソニー 右肩上がりが3年続いた後、息切れしてきたようなチャート
- 富士通 右肩上がりが3年続いた後、息切れしてきたようなチャート
- キヤノン 2年ほど下げた後、右肩上がりに転じたチャート
- 東芝 コロナショックの1年間を除くと右肩上がり傾向のチャート
ソニー〈6758〉と富士通〈6702〉の2社は、1年前まで右肩上がりでしたが、息切れしてきたようなチャートになっているので、付箋を貼るのを控えた方がよい形になっています(逆に1年前であれば、付箋を貼るべきチャートです)。
キヤノン〈7751〉は右肩上がりになってきましたが、下げた後に戻ってきたV字型なので判断が分かれるチャートです。もう少し待つのも選択肢ですが、下落トレンドから上昇トレンドに転換しているように見えるので、この時点で付箋を貼るのもアリでしょう。
東芝〈6502〉は、コロナショックだった2020年の1年間を除けば、右肩上がりになっていて、これも付箋を貼ってもいいチャートの形です。
(2)「色」白い(陽線が多い)チャート
付箋を貼る際は、ローソク足の陽線が多い白いチャートを選びましょう。
以下のサンプルチャートを見ると、右肩上がりのNTT〈9432〉には白(陽線)が多く、株価が右肩下がりの中国電力〈9504〉には黒(陰線)が多くなっているのが分かります。このように、色だけで株価の傾向は、ある程度判断できます。
(3)「数字の位置」半年以内に最高値を付けているチャート
四季報のチャートでは、ローソク足の上側に最高値、ローソク足の下側に最安値の数字が記載されています。この数字から最高値をいつ付けたかが分かるようになっています。ここでは、半年以内に最高値を更新している旬な銘柄を選びましょう。
下記にある4つのチャートは、いずれも最高値を示す数字が右上の半年以内になっているので、「最高値」の条件を満たした株価チャートになります。
このようなプロセスで右肩上がりチャートを選ぶ理由は、市場から評価されている旬な銘柄を探すためです。
逆にチャートが右肩上がりでない場合には、
- 業績が低迷している
- 割高過ぎた株価を調整している
- 景気循環サイクルがピークを過ぎている
- 成長性に乏しく市場期待が低い
など、様々な要因が考えられます。そして、右肩上がりではないトレンドが反転して右肩上がりに転じるには、長い調整期間や大きなインパクトが必要になります。
だからこそ、今、市場から評価されている株価が右肩上がり銘柄の中から選んでいくことが重要になるのです。
速読時の注意事項(1) 会社名は気にしない
四季報の株価チャート上部には会社名が記載されています。はっしゃんは、会社名はあえて読まないようにしています。
それは、
- 会社名を読むことが時間のロスになる
- 会社名で先入観を持って付箋を貼るのを避ける
などの理由からです。
速読で付箋を貼っていくのは「知らなかった企業」や「新しい投資先候補」を見つけることにありますので、会社名(=会社の知名度)は重要ではないということです。
読まないつもりでも、どうしても目に入ってしまうこともありますが、チャートの「形」「色」「最高値」に集中しながら、どんどんページをめくっていくとそのうち気にならなくなります。
以上で、「はっしゃん式 四季報速読法」ステップ1の付箋を貼る作業は終了です。
付箋貼りは慣れてくると1ページ1秒程度でチャート4枚分を判断できるようになってきます。最初は少し時間がかかるかもしれませんが、この要領で四季報の最終ページまで読み進めていきましょう。
株価チャートから選ぶ理由
ここで、四季報を株価チャートから読む理由について説明しておきます。すでに速読の目的でも説明したように、未来の10倍株として投資対象とするのは株価が業績と連動して右肩上がりの成長株です。
2つの条件を満たす銘柄を「株価チャート」とこのあと説明する「業績」から選ぶことになりますが、各企業の業績を読むにはそれなりに時間がかかります。
そこで、「はっしゃん式四季報速読法」では、まず株価チャートが右肩上がりの銘柄を探して選抜することを「ステップ1」とし、あとから業績をチェックすることを「ステップ2」とすることにしました。
ステップ1とステップ2に工程をわけるという割り切りで、株価チャートが右肩上がりではない銘柄を読み飛ばすことができるので、短時間で全銘柄を速読できるようになっているわけです。
ここで「株価チャート」と「業績」の関係について簡単に解説しておきます。
- 株価と業績がともに右肩上がり
最終的な投資候補にもなりうる成長株候補 - 株価が右肩上がり・業績が横ばいや低迷
業績の向上を伴っておらず、株価だけが上昇しているケース。上昇が比較的短期の「期待上げ」で終わってしまう可能性が懸念される銘柄 - 業績が右肩上がり・株価が横ばいや低迷
業績が好調であっても株価が低迷している場合は、市場からの期待値が低いことを意味する。株価が上昇に転じるまでは投資候補ではない - 株価と業績がともに右肩下がり
言うまでもなく投資対象外
ここではもう少し株価チャートや付箋テクニックについて補足しておきます。
「月足チャート」だからこそ分かること
四季報の株価チャートは月足チャートになっています。月足チャートでは、ローソク足の1本が1ヶ月間の株価の値動きを表します。
日足チャート:ローソク足の1本で1日分
週足チャート:ローソク足の1本で1週間分
月足チャート:ローソク足の1本で1ヶ月分
個人投資家の皆さんは日足チャートを利用している方が多めのようで、以前、はっしゃんがTwitterでアンケートを採った時も日足メインという人が60%を超えていました。
ちなみに、はっしゃんがいつも見ているのは、四季報と同じ月足チャートです。その理由は、長期投資を中心としているためですが、月足チャートの見方に慣れていない方が多いと思いますので、少し説明しておきましょう。
月足チャートの特徴は、
- 株価の表示期間が長い(四季報の場合は約3年半)
- 過去の業績と比較しやすい
- 年単位の長期トレンドが分かる
という点にあります。
四季報には、過去数年分の業績推移も掲載されています。つまり、過去の「業績」と「株価」を比較して投資判断できるように配慮されているということです。
日足チャートでは値動きが大きく、強く見えるチャートでも、月足チャートの長いスパンで見ると小さな動きに見えることはよくあります。
同様に、日足チャートでは株価が大きく吹き上がることがありますが、月足チャートで見ると、ローソク足の上髭線で終わっているケースもよく見られます。短期の吹き上げ程度では、月足チャートのトレンドは変えられないということです。
ITエンジニア兼業投資家として割安成長株に長期投資するスタイルで1億円を達成。現在は独立・起業して「初心者にも持続可能な株式市場の実現」という理念のもと、専門的な金融知識なしで利用できる株式入門サイト「株Biz」を監修・開発。
理論株価や月次情報など独自の投資コンテンツを配信する。投資家VTuberとしてマネー誌、投資メディア、SNSでも活動し、 ビジネス著書累計8万部、Twitterフォロワー数7万人、YouTubeチャンネル登録数1.7万人。 ※画像をクリックするとAmazonに飛びます