この記事は2023年5月12日にSBI証券で公開された「今後市場の主役となるであろう大幅増益銘柄は?」を一部編集し、転載したものです。
今後市場の主役となるであろう大幅増益銘柄は?
東京株式市場では、日経平均株価が年初来高値を更新(5/9)するなど、堅調な動きとなっています。米国株式市場では地銀等の経営不安がくすぶり続けていますが、国内では割安株を見直す動きや、インバウンド需要の回復を評価する動きが相場をけん引しています。
そうした中、国内上場企業の決算発表社数も、1,100社超が発表実施予定であった5/12(金)をもってピークアウトし、600社超が発表予定となっている5/15(月)をもってほぼ一巡します。今回の「日本株投資戦略」では、4/27(木)~5/10(水)に決算発表を実施した主力銘柄の中から、好業績銘柄を抽出すべく、スクリーニングを行なってみました。
図1の銘柄は、以下の条件を満たしています。
(1)東証プライム市場に上場
(2)時価総額1,000億円超(5/10時点)
(3)3月決算、または12月決算企業
(4)銀行、保険、証券商品先物業を除く
(5)4/27(木)~5/10(水)に決算発表を終了
(6)23.1-3期の営業利益が黒字転換、または前年同期比30%超の増益
(7)今期会社予想営損益が前期比20%超の増益予想
掲載の順番は、(6)の営業増益順(ただし黒字転換が最上位)となっています。
掲載銘柄を解説
鉄道株~業績回復の織り込みが進捗。西日本旅客鉄道に割安感?
23.1-3期の営業増益率上位には鉄道株が軒並みランクインしました。図表2に示した東日本旅客鉄道(9020)の例からも明らかなように、鉄道株は2020年2月以降、Covid19が本格的に流行拡大し、人流が急速に減少する中、業績面で大きな打撃を受けてきました。22.1-3期に至っても、まん延防止等重点措置による打撃を受けていましたが、23.1-3期は水際対策が緩和する方向となり、事業環境は大幅に改善しました。
鉄道会社は鉄道・バス等の運輸事業だけを営んでいる訳ではありません。沿線を中心に百貨店・スーパーといった流通事業や、不動産、ホテル、観光等の事業にも展開しています。一般的にJR各社は運輸事業の構成比が高めですが、私鉄は観光等の比率が高い場合も多く、富士急ハイランド等を展開する富士急行(9010)は「レジャー・サービス」だけで売上高の47%、不動産まで含めると70%に達しています。
鉄道株を含め、Covid19により打撃を受けた「インバウンド」関連の投資ポイントとしては、
(1)株価が2019年末の何%まで回復しているのか・・・図表4の(A)
(2)業績(利益)が2019年の何%まで回復しているのか・・・図表4の(B)
(3)株価は業績回復を十分織り込んでいるのか否か・・・・(A)/(B)の数字が大きいほど織り込みが進捗
(4)PER等でみて評価不足か否か・・・ここでは、時価総額/予想営業利益(単位:倍)で比較
等が考えられます。上記の富士急は、観光部門の比率が高い分、インバウンド需要の回復から業績回復も急で投資家の人気も高まりましたが、その分、株価の割高感は強まっている感じです。総合的に、鉄道株の中では西日本旅客鉄道(9021)の出遅れ感が強いかもしれません。なお、同社についてはSBI証券企業調査部が5/8付で調査レポート「近距離収入が回復、大阪駅開発やインバウンド取込に注力」(投資判断「中立」、目標株価5,430円→6,020円)を作成しています。
図表2 インバウンド関連銘柄の業績推移の例(JR東日本の四半期業績)
図表 3 図表1&4で掲載した鉄道株のセグメント別売上構成比(23.3期)
各社決算短信をもとにSBI証券が作成。図表4で用いているセグメント名と各社が用いている名称は異なる場合がある。
図表4 図表1の銘柄のうち「Covid19」の影響が大きかったとみられる銘柄の参考指標
ラウンドワン(4680)~前年度の営業赤字から一気に最高益を達成
内外に152店舗(国内99、米国49、中国4)の複合遊戯施設を展開しています。23.3期は売上高1,420億円(前期比47%)、営業利益が169億円(黒字転換)と急回復し、純利益が最高を達成。Covid19からいち早く回復した米国が貢献しました。24.3期は米国を中心に5店舗の純増を目指し、営業利益は205億円(前期比21%増)を目指します。この予想営業利益は、19.3期の2.8倍弱ですが、株価も19年末比2.8倍とほぼ同様の回復です。予想PERは15倍弱で割高感は小さいようです。4月の既存店売上高は前年同期比19%増と好調なスタートです。
ポーラ・オルビスホールディングス(4927)~1Qは営業利益137%増、通期予想増額修正に期待
訪問&通信販売を中心とした化粧品大手です。23.12期1Qは売上高421億円(前期比11%増)、営業利益45億円(同137%増)の大幅な増収・増益。インバウンド需要を除く国内需要は、まん延防止等重点措置の反動、外出機会の増加等による個人消費の回復がみられました。通期予想営業利益151億円(前期比20%増)に対し、1Q時点の進捗率も30%で、中間期以降の増額修正に期待がかかります。
ホシザキ(6465)~業務用厨房機器でグローバル展開。Q単位では2019年水準を回復
業務用厨房機器の大手です。売上構成比(22.12期)は製氷機18.6%、冷蔵庫28.7%、食器洗浄機6.5%、ディスペンサ7.4%、保守・修理17.6%他、他社製品の仕入販売も行っています。国内シェアは製氷機59%(2020年)、冷蔵庫43%(同)、ビールディスペンサ73%(同)、食器洗浄機49%(2019年)と高い割合を誇ります。海外売上高比率が4割超のグローバル企業です。
23.12期1Qは売上高905億円(前年同期比24%増)、営業利益118億円(同73%増)と大幅増収増益でした。国内はすでに19.12期1Qの売上高・営業利益を上回りました。通期予想営業利益340億円(前期比21%増)に対し、進捗率は34%と好発進です。飲食店の業績回復が追い風として期待されます。
三菱電機(6503)~24.3期は自動車機器等をリード役に最高益更新へ。自社株買いも
総合電機の一角。売上構成比(23.3期)はライフ(ビルシステム、空調・家電)が33%、インダストリー・モビリティ(FAシステム、自動車機器)が28%、インフラ(社会システム、電力システム、防衛・宇宙システム)が17%、ビジネスプラットフォーム(情報システム・サービス、電子デバイス)が7%です。23.3期は売上高5兆36億円(前期比11%増)、営業利益2,623億円(同4%増)でした。ライフ事業を中心に全セグメントで売上高が増え、円安や価格転嫁の効果もあって営業増益を確保しました。
24.3期は売上高5兆2,000億円(前期比3%増)、営業利益3,300億円(同25%)が会社予想です。純利益ベースで最高益を更新する見込み。自動車メーカーの挽回生産が本格化し、自動車機器が回復する他、ライフ事業も拡大しそうです。決算発表(4/28)とともに同社は、取得株数4,000万株(発行済株数の1.89%)、取得価額500億円を上限とする自社株買い枠の設定も発表しています。品質不正問題も株価に織り込まれつつあり、当面は2021年6月高値1,817円を超し、値固めができるか否かがポイントになりそうです。
日本瓦斯(8174)~24.3期も過去最高益更新予定。電気とのセット販売に注力
ガス事業を主軸とする企業です。他には、東京電力グループと提携し電気の販売や太陽光発電の設置販売を行う電気事業を展開。全売上高に対しての割合は21.3期:13%?22.3期17%と増加中です。23.3期の売上高は2,078億円(前期比27%増)、営業利益152億円(同19%増)と過去最高益を達成。原料価格の上昇分を販売価格に転嫁した上、ガスと電気のセット販売に重点を置く営業戦略の徹底で販管費の抑制が、奏功した格好です。会社側は業績動向の大きな鍵である原料価格について、今期(24.3期)は23.3期並みと予想しています。今期業績予想は、売上高2,300億円(前期比10%増)、営業利益187億円(同22%増)と最高益の更新を見込んでおり、顧客増で粗利拡大を目指す計画です。
JMDC(4483)~ヘルスビッグデータ事業が好調
主力事業は「ヘルスビッグデータ」(前期売上構成比69%)。健保組合のデータを分析したり、PHR(個人が自身の健康・医療データを手元で管理する仕組み)サービスの提供、医療機関に対する医療データ分析サービス等を行っています。また、「遠隔医療」(同18%)も稼ぎ頭のひとつで、医療機関と放射線読影医や放射線診断専門医を結びつけています。その他、調剤薬局支援(同14%)の事業展開もしています。ノーリツ鋼機(7744)の子会社でしたが、22年2月に、オムロン(6645)が同社の持分の一部を買い取り、資本業務提携契約を締結しました。22.9現在の保有比率は、オムロンが32.6%、ノーリツ鋼機が14.1%です。
24.3期は売上高350億円(前期比25%増)、営業利益76億円(前期比28%増)と大幅増収・増益の予想(会社予想)です。連結ベースでは19.3期以来5期連続で2桁超の増収増益が続いていますが、今期もその勢いが続く見込みです。
山崎製パン(2212)~低価格帯の商品拡充が奏功。今期は値上げ実施予定を発表
日本最大の製パン会社です。パン以外にも菓子製造やデイリーヤマザキという自社独自のコンビニエンスストアも展開しています。23.12期1Q(1-3期)決算では、売上高2,768億円(前年同期比6%増)、営業利益93億円(同34%増)と7期ぶりの最高益を達成し、好調でした。売上高の9割弱を占める食品事業では、食パン、菓子パン、和菓子、洋菓子、調理・米飯類、製菓・米菓・その他商品類、全6部門で前年同期比増収です。低価格帯の商品の拡充などが奏功した模様です。低迷が続いているコンビニエンスストア事業でも、商品開発や既存店舗の改修を行い、営業損失が縮小しました。同時に、卵や小麦粉の値上げを受け、今年7月出荷から平均7%値上げを実施すると発表。同決算発表後、大手証券のレーティングや目標株価の引き上げが相次ぎ、株価も大幅高となっています。
▽当ページの内容につきましては、SBI証券 投資情報部長 鈴木による動画での詳しい解説も行っております。東証プライム市場を中心に好業績が期待される銘柄・株主優待特集など、気になる話題についてわかりやすくお伝えします。