この記事は2023年4月21日にSBI証券で公開された「実績重視!近く「自社株買い」を発表しそうな企業を探る」を一部編集し、転載したものです。

実績重視!近く「自社株買い」を発表しそうな企業を探る
(画像=SBI証券)

目次

  1. 実績重視!近く「自社株買い」を発表しそうな企業を探る
  2. 自社株買いはさらに増加?

実績重視!近く「自社株買い」を発表しそうな企業を探る

東京株式市場が堅調な値動きとなっております。日経平均株価は4/18(火)の終値が28,658円83銭となり、年初来高値(終値ベース)を更新し、昨年8月以来の高値水準を回復しました。欧米の金融不安が後退したこと、一時に比べ米国のインフレ圧力が緩和してきたこと等を背景に、グローバルな株式市場が上昇基調となり、日本株も恩恵を受けているとみられます。

ただ、日本株は欧米株にツレ高しているだけではなさそうです。インバウンド需要の急速な回復に加え、米著名投資家ウォーレン・バフェット氏による商社株買い増しや、他の日本株に対する買い意向の表明等があり、投資マインドが明るくなりつつあります。対外・対内証券投資(財務省)によると、4月第1週(4/2~4/8)には海外投資家の日本株等の買い越しが、2.36兆円と過去最高額(2005年以降)に達し、第2週(4/9~4/15)も1.87兆円と大きな買い越しが続きました。

日本株に対する強気な見方が増えている背景には、さらに、NISA(少額投資非課税制度)の拡充により、個人マネーが株式市場に流れてくるとの期待がありそうです。さらに、東証がPBR(株価純資産倍率)1倍割れ企業に、改善を促す等の動きもあり、上場企業の対応が増えそうなことも、株式市場のプラス材料とみられます。

ちなみに、PBR1倍割れを克服するためには、ROE(株主資本利益率)の改善が有効で、そのためには自社株買いが近道であると考えられます。そこで、今回の「日本株投資戦略」は、決算発表シーズン(4/20~5/20頃)に「自社株買い」を発表しても不思議ではない銘柄を10銘柄抽出すべく、スクリーニングを行ってみました。

まず、以下のスクリーニングにより7銘柄抽出しました。

(1)東証上場銘柄
(2)時価総額が1,000億円以上1兆円未満
(3)昨年4/20~5/20に自社株買い決議の発表を行った経緯のある企業
(4)会社予想PER(株価収益率)が14倍(日経平均並み)未満・・・東証プライム市場の予想PER(4/20)は14.5倍
(5)PBR(株価純資産倍率)が1倍(解散価値)未満
(6)ROEが8.3%未満・・・東証プライム市場の平均ROE(4/20)は8.3%
(7)決算月が3月または12月

図表1の銘柄のうち、★印のない7銘柄は(1)~(7)をすべて満たしています。

残り3銘柄は時価総額上位銘柄から選びました。時価総額上位銘柄は総じて、自社株買いに積極的な傾向があります。東証の時価総額上位20銘柄のうち、13銘柄が2022年以降に自社株買い決議を行っています。また9銘柄が2022年の決算発表時期(4/20~5/20)に自社株買い決議を行っています。そこで、上記とは別に以下スクリーニングを実施しました。

(A)上の(1)(3)(7)の条件を満たしていること
(B)時価総額が1兆円超
(C)次のいずれかの状態にあり、自社株買い実施の強い動機があるとみられること
 ・PBR1倍未満
 ・ROE8.3%未満
 ・前回の自社株買いによる買付平均単価に対し、直近株価が下回っていること

上記の(A)~(C)の条件をすべて満たす銘柄を時価総額の大きな順に3銘柄選び、★印を付けました。そして、スクリーニング条件(1)~(7)をすべて満たした銘柄と合わせた10銘柄すべてを、決算発表予定日が早い順に並べたものが図表1です。

実績重視!近く「自社株買い」を発表しそうな企業を探る 実績重視!近く「自社株買い」を発表しそうな企業を探る
(画像=SBI証券)

自社株買いはさらに増加?

自社株買いは当面、増加すると予想されます。

2001年の商法改正により、金庫株(自社株保有)が解禁され、取得可能株数に対する規制も撤廃されました。これを受けて、2002年に自社株買いが急増し、その後も取得枠としては年間8兆円程度が上限で推移してきました。しかし2022年には、1,067社の企業が9.4兆円(取得枠ベース)の自社株買い決議を実施し、2000年以降で最高を記録しました。(図表2)

2023年の自社株買いはどうなるでしょうか。1~3月の自社株買い決議は取得枠ベースで1.45兆円となり、前年同期の1.49兆円をわずかに下回っています。しかし、自社株買いが増えやすい月としては、5月が「断トツ」(図表3)です。3月決算の企業の決算発表はおおむね、4/20~5/20頃に行われますが、その時期を中心に自社株買いが増えやすいことがわかります。2023年も5月の自社株買いが増えれば、年間でも「最高」を更新する可能性はありそうです。

現在、東証はPBR1倍(解散価値)割れの上場企業等に、株価が割安に放置されていることに対する対策を練るよう要請しています。PBRを高めるには、業績向上を図ったり、財務戦略を見直したり、IR活動を強化することも重要ですが、自社株買いの実施は、ひとつの有効な戦略であるとみられます。2023年の自社株買いが年間で「最高」を更新する可能性は大きそうで、自社株買いを実施しそうな企業に、今後市場の関心が高まるのではないでしょうか。

図表2 国内上場企業の自社株買い金額(左軸・兆円)・件数(右軸・件)の推移

国内上場企業の自社株買い金額(左軸・兆円)・件数(右軸・件)の推移
(画像=SBI証券)

図表3 国内上場企業の自社株買い金額(月毎・2000~2022年の合計)

国内上場企業の自社株買い金額(月毎・2000~2022年の合計)
(画像=SBI証券)

※Quick Workstation Astra Manager よりSBI証券が作成。自社株買いの取得枠(取締役会で決議された取得枠)を月毎に合計したものです。

▽当ページの内容につきましては、SBI証券 投資情報部長 鈴木による動画での詳しい解説も行っております。東証プライム市場を中心に好業績が期待される銘柄・株主優待特集など、気になる話題についてわかりやすくお伝えします。

鈴木 英之
鈴木 英之
SBI証券 投資情報部長
・出身:東京(下町)生まれ埼玉育ち
・趣味:ハロプロの応援と旅行(乗り鉄)
・特技:どこでもいつでも寝れます
・好きな食べ物:サイゼリヤのごはん
・好きな場所:秋葉原(末広町)
ラジオNIKKEI(月曜日)、中部経済新聞(水曜日)、ストックボイス(木曜日)、ダイヤモンドZAIなど、定期的な寄稿も多数